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受験はもう時代遅れですか?堀江貴文×茂木健一郎が示す「学び」の再設計

AI時代に「暗記型の受験」はなぜ時代遅れになるのか

  • ✅ 暗記で差がつく受験は、クラウドやAIが前提の社会では価値が相対的に下がりやすい
  • ✅ 一発勝負の入試設計は、学びの多様化や能力の測り方の変化と噛み合いにくくなっている
  • ✅ 受験の役割を「選抜」から「学びの入口設計」へ移し替える議論が必要

番組では、堀江貴文氏、茂木健一郎氏、竹内薫氏、高橋弘樹氏が、日本の受験と教育がAI時代に合わなくなりつつある点を論点にしています。暗記を中心に据えた受験は、知識へ到達する手段が変わった社会では優位性を保ちにくいという見立てが提示され、入試の設計そのものが問い直されています。

私は、暗記が強い人が得をする仕組みは、これから先ほど効かなくなると思います。知識そのものは、クラウドに置けばいつでも引き出せますし、検索やAIを使えば「覚えているかどうか」より「使えるかどうか」が重要になります。だから、暗記の量で勝負する入口に時間を注ぐより、手元の道具を使って考えたり、形にしたりするほうが、現実の価値に近いと感じます。

― 堀江

暗記の価値が下がる構造

暗記型の受験が揺らぐ背景には、情報へのアクセスコストがほぼゼロになったことがあります。必要な知識を「頭の中に保管する」よりも、「必要な瞬間に取り出し、組み合わせて使う」ほうが成果につながりやすくなっています。さらにAIが普及すると、知識の再生だけでなく、要約や比較、下書き作成まで機械が補助します。すると評価すべき能力は、知識量よりも、目的設定や検証、表現といったプロセスに寄っていきます。

私は、AIが進んでいる国ほど、一発勝負の入試が中心ではない印象があります。知識を覚えたかどうかだけで測ると、社会で必要な力とずれてしまいやすいからです。だからこそ、暗記の強さを競うよりも、課題に向き合う姿勢や、考え方の筋道、言葉にして説明する力など、別の軸を増やすほうが自然だと思います。入口が変われば、学び方も変わります。

― 竹内

受験が担ってきた役割と限界

一方で、受験には「短時間で大量の受験者をさばく」「客観的な基準で選抜する」といった運用上の利点もあります。だからこそ、暗記偏重をただ否定するだけでは制度設計が前に進みにくくなります。番組の議論は、受験が果たしてきた機能を認めつつ、AI時代に合わせて測る対象と方法を組み替える必要がある、という方向へ広がっていきます。

私は、点数だけで人の可能性を測り切るのは難しいと思っています。知識は大切ですが、それ以上に、何に興味を持つか、どんな問いを立てるか、うまくいかないときにどう工夫するかが、その後の学びを左右します。だから、入口の評価が暗記に寄りすぎると、学ぶ面白さや探究の力が見えにくくなります。評価の軸を少し広げるだけでも、学びの景色は変わるはずです。

― 茂木

評価を「問いの立て方」に寄せる

暗記型受験が時代遅れになり得るという論点は、受験をなくすか残すかの二択ではなく、「入口で何を測り、何を伸ばすのか」という再設計の問題として整理できます。AIが普及するほど、知識の再生よりも、目的の設定、問いの質、検証の粘り強さが成果を左右します。次のテーマでは、この入口の議論がそのまま「大学は何を提供する場所なのか」という問いに接続していきます。



大学は不要になるのか──オンライン化と「キャンパスの意味」

  • ✅ 授業のオンライン化が進むほど、大学の価値は「講義」以外の機能に分解して考える必要がある
  • ✅ 物理キャンパスの必然性が下がる一方で、環境や制度が担ってきた役割は残り続ける
  • ✅ 「大学が何を提供する場所か」を言語化できないと、改革は空回りしやすくなる

番組では、大学が今後も今の形のまま必要なのかが議論されています。オンライン授業が一般化したことで、講義を受ける行為は場所に縛られにくくなりました。その変化を前提にすると、大学は「教える場所」だけではなく、環境や制度、コミュニティを含む複合的な装置として見直されます。

私は、大学の授業はかなりの部分がオンラインで成立すると思っています。実際に、環境が整えば家でも学べますし、移動や建物にかかるコストを前提にしなくてもよいはずです。だから、今までのように「キャンパスに集まって受ける」ことが必須だと言われると、そこには惰性も混ざっていると感じます。

― 堀江

「講義」はどこでも受けられる時代

オンライン化が進むほど、授業そのものは配信・アーカイブ・双方向ツールで代替しやすくなります。すると、大学に通う意味は「授業を受ける」一点から外側へ広がります。たとえば、学習のペース設計、評価の仕組み、履修の導線など、学びを継続させるための運用が重要になります。講義の形式が変わるだけでなく、学ぶ側の生活設計やコスト感覚も変わっていきます。

私は、定員で切る発想も見直せると思っています。オンラインで受けられるなら、入れる人数を増やすこともできますし、学びたい人が学べる入口を広げるほうが合理的です。むしろ難しいのは、授業の中身よりも、どう評価して、どう修了とみなすかだと思います。そこを整えないと、形だけオンラインにしても意味が薄くなります。

― 堀江

キャンパスが担ってきた「見えにくい機能」

一方で、物理キャンパスが不要になると断言しにくい理由もあります。大学は学習空間だけでなく、研究設備、図書館、専門コミュニティ、生活リズムの形成など、複数の機能を束ねてきました。オンラインで置き換えられる部分と、現場性が必要な部分が混在しているため、議論は「全部かゼロか」ではなく、機能ごとの再設計に向かいます。

私は、大学が全部いらないと言いたいわけではありません。実験や実習が必要な分野もありますし、環境があることで集中できる人もいます。ただ、建物や慣習が先に立ってしまうと、本来の目的がぼやけます。だから、何のために集まるのか、何を大学が引き受けるのかを、もう一度分解して考えたいです。

― 堀江

「大学を再定義する」ための論点整理

このテーマで浮かび上がるのは、大学の価値を講義だけで語る時代が終わりつつある、という点です。授業はオンラインに寄せられる一方で、制度・環境・研究・人の流れといった周辺機能が、大学の存在理由として残ります。次のテーマでは、こうした周辺機能の中でも特に「出会い」「人脈」「切磋琢磨」といったコミュニティ価値が、どのように評価されるのかが焦点になっていきます。



それでも大学に残る価値──人脈・出会い・学びの継続

  • ✅ 大学の価値は講義だけではなく、「人が集まる環境」そのものに移りつつある
  • ✅ 出会い・議論・偶然の刺激はオンラインで代替しにくく、学びの継続力にも影響する
  • ✅ 大学が残るなら、キャンパスは「授業の場」より「コミュニティの設計」が中心

前のテーマでオンライン化が大学の形を揺らす一方、番組では「それでも大学に残る価値」が掘り下げられています。講義が配信で届く時代になるほど、大学に人が集まる意味は、知識の受け取りよりも、出会いによる刺激や関係性の形成に移りやすくなります。学ぶ動機が揺れやすい時代だからこそ、環境が学びを支えるという見方も共有されています。

私は、学びは一人で完結しないと思っています。面白い人に出会うと、自分の問いが深くなりますし、言葉にする力も鍛えられます。知識を得るだけなら動画でも十分ですが、考え方がぶつかって揺さぶられる体験は、同じ空間にいるほうが起きやすいです。だから、大学の価値は「人の密度」に残ると思います。

― 茂木

出会いが「学びの速度」を変える

大学の強みとして語られるのは、同世代や異分野の人と日常的に交わる環境です。課題の取り組み方、興味の持ち方、意見の出し方に触れることで、自分の学び方が相対化されます。オンラインでも交流はできますが、偶然の会話や雑談からテーマが生まれる流れは再現しにくく、学びのきっかけの数が減りやすいという課題が残ります。

私は、大学の良さは「同じ時間を過ごすこと」だと感じます。授業の内容以上に、休み時間の会話や、ふとした疑問から調べ始める流れが大切です。誰かが何かに夢中になっている姿を見ると、自分も試してみたくなります。そういう連鎖が起きる場は、学びを続ける力にもつながると思います。

― 竹内

コミュニティをどう作るかが本題になる

ただし、出会いの価値を認めたとしても、それが「今の大学の形」である必要はない、という問いも並行して立ち上がります。学びの場が多様化するほど、大学だけがコミュニティを提供する時代ではなくなります。大学が強みを保つなら、単に授業を置くのではなく、人が集まりやすい仕組み、挑戦が可視化される仕掛け、議論が起きる設計が求められます。

私は、コミュニティ自体は大学ではなくても作れると思っています。オンラインでも集まれますし、プロジェクト型の場も増えています。ただ、大学が残るなら、そこは「授業を受ける場所」より「人が混ざる場所」に振り切ったほうが強いです。面白い人が集まり、何かが始まりやすい設計にしたほうが、価値は分かりやすくなると思います。

― 堀江

学びの継続を支える「制度」との接続

出会いの価値は、個人の努力だけで最大化しにくい点にも特徴があります。経済状況や居住地、家庭環境によって「人が集まる場」へのアクセスは変わります。大学がコミュニティとしての価値を掲げるほど、その入口にある格差や、学校以外の学びの選択肢が持つ不均衡も無視できなくなります。次のテーマでは、この流れを受けて、教育格差とオルタナティブスクールの論点へつなげていきます。



教育格差とオルタナティブスクール──「義務教育」の捉え直し

  • ✅ 学校に通わない学び方が広がるほど、「選べる家庭」と「選べない家庭」の差が出やすくなる
  • ✅ 義務教育は通学の強制ではなく、教育機会の保障として再設計する視点が重要
  • フリースクール支援や公的な枠組みを整えないと、多様化は格差の固定化につながりかねない

番組では、受験や大学の議論が進む中で、学びの選択肢が増えるほど教育格差が見えやすくなる点も論点になります。学校に行かない学び方は、個人に合う形を見つけられる可能性がある一方、費用・情報・地域差によって利用できる幅が変わります。義務教育を「同じ場所に集める制度」として維持するのか、「学ぶ権利を保障する制度」として組み替えるのかが、次の設計図に直結します。

私は、学校に行けない子どもがいること自体を、失敗として扱ってほしくないです。学び方には個性があって、合わない環境から離れる選択が必要な場合もあります。ただ、そのときに支えがないと、学びの機会が細ってしまいます。だから、通うかどうかより、学び続けられる状態を社会がどう作るかが大事だと思います。

― 茂木

「通学」より「機会の保障」に寄せる

義務教育を機会保障として捉えると、学校以外の学びの場を制度に接続する発想が必要になります。たとえば、フリースクールやオンライン学習、地域の学習拠点を「例外」ではなく選択肢として位置づければ、本人の状態に合わせた移行がしやすくなります。その際に重要なのは、出席扱いや評価の整合性だけでなく、相談窓口、学習支援、家庭への伴走といった周辺の設計です。

私は、学びの形が多様になること自体は自然だと思います。問題は、制度が追いつかずに、現場が手探りになってしまうことです。学校に通う子どもだけが支援の対象になると、別の形で学ぶ子どもがこぼれます。だから、どの選択をしても学びが途切れない仕組みにしたいです。

― 竹内

選択肢が増えるほど「差」も増える

一方で、多様化は放っておくと格差を拡大させます。学校外の学びは、月謝や交通費がかかる場合もあり、保護者が情報を集めて動けるかどうかで結果が変わります。学び直しやリスキリングと同じく、「やる気」だけで乗り越えられない壁が存在します。選択肢を増やす議論と同時に、利用可能性を底上げする議論が欠かせません。

私は、選べる道が増えるのは良いと思います。けれど、結局はお金や環境で差が出るなら、選択肢が増えた意味が薄くなります。だから、一定の支援や補助がないと、公平なスタートになりません。やりたい人がやれる、ではなく、やりたいと思った人が現実に選べる状態にしたいです。

― 堀江

制度の外側を整えるという発想

このテーマが示すのは、教育改革が入試や大学の設計だけでは完結しないという点です。入口を変え、学びの場を増やすほど、支援の設計が追いつかなければ、機会の不均衡が広がります。次のテーマでは、偏差値以外の物差しや国際的な評価軸がどう影響するのかを手がかりに、入試と大学運営がどこへ向かうのかを整理していきます。



偏差値の次の物差し──総合型選抜・世界大学ランキング・国際化

  • ✅ 偏差値中心の評価は限界があり、総合型選抜など「測り方の複線化」が進みやすい
  • ✅ 大学は国内序列だけでなく、世界大学ランキングや国際的な評価軸とも向き合う必要がある
  • ✅ 入試改革は大学運営や人材の流動性とつながっており、単独では成立しにくい

番組では、受験の是非だけでなく「何を物差しにするか」が繰り返し論点になります。偏差値は運用しやすい反面、測れる範囲が限定されます。社会が求める力が多様化し、国際的な競争や人材移動が前提になるほど、入試も大学運営も「単一の点数」だけでは説明しにくくなります。

私は、一発の学力試験だけで全員を並べる方法は、だんだん苦しくなると思います。知識そのものは道具で補える時代ですし、考え方や取り組みの姿勢は点数に出にくいです。だから、総合型のように、プロセスや関心も含めて見る入口を増やすほうが自然だと感じます。

― 竹内

総合型選抜が増える背景

総合型選抜が注目されるのは、学力を否定するためではなく、学力以外の要素も評価に組み込みたいという要請が強まるためです。探究活動、文章化、面接での説明力などを足すことで、学ぶ動機や伸びしろを拾いやすくなります。ただし運用には、評価の透明性や地域差への配慮が欠かせず、制度だけ導入しても納得感が生まれにくい点が課題になります。

私は、評価の軸が一つだけだと、学び方が固まってしまうと思います。興味を深める力や、自分の言葉で説明する力は、育て方も測り方も工夫が必要です。だから、入口の種類を増やしつつ、誰が見ても筋が通る評価のルールを丁寧に作ることが大切です。

― 茂木

世界大学ランキングが突きつける現実

国内の偏差値序列とは別に、研究力や国際性などを含む外部評価が大学の存在感を左右する場面も増えます。ランキングは万能ではありませんが、海外の学生や研究者が進路を考えるときの参照点になりやすく、結果として大学の戦略にも影響します。入試を変える議論は、教育の中身、研究環境、国際発信まで含めた運営の設計と結びついていきます。

私は、日本の中だけで回していると、外から人が来にくくなると思います。ランキングが正しいかどうかより、世界がどう見ているかが現実に影響します。だから、入口も運営も、国内向けの最適化だけで終わらせず、国際的に通じる形に寄せていく必要があると思います。

― 堀江

入試と大学運営をつなぐ視点

このテーマが示すのは、入試改革が単体のテクニックではなく、大学がどんな学びと人材循環を作るかという設計問題だという点です。偏差値の次の物差しを増やすなら、評価の公平性、支援の厚み、国際性の整備が同時に求められます。ここまでの議論を踏まえると、日本の教育は「暗記中心の選抜」から「学びの継続と接続」を軸に再編されていく流れが見えてきます。



出典

本記事は、YouTube番組「【堀江貴文vs茂木健一郎】受験は時代遅れ?日本の教育の今後はどうなる?【ReHacQ高橋弘樹vs竹内薫】」(ReHacQ−リハック−【公式】/2025年11月22日公開)および
YouTube番組「【堀江貴文vs日本の教育】ホリエモン日本の教育に吠える!なぜ日本人は学ばなくなる?【ReHacQ高橋弘樹vs茂木健一郎vs竹内薫】」(ReHacQ−リハック−【公式】/2025年公開)の内容をもとに要約しています。

読後のひと考察──事実と背景から見えてくるもの

AI時代に「暗記型の受験は時代遅れか」という論点は、感情的な賛否が分かれやすいテーマです。一方で、国際機関が描く教育の将来像や雇用の変化を見ると、知識をどれだけ覚えているかより、「知識をどう使い、どんなプロジェクトや問いにつなげるか」が重視されつつあることがうかがえます[1,2]。同時に、日本の教育計画や不登校対策、大学のランキングなどのデータを眺めると、「暗記を全面否定する」のでも「今の入試をそのまま守る」のでもなく、選抜と学びの設計を丁寧に組み替えていく必要性が浮かび上がります[3,4,9,10,15]。

以下では、(1) 暗記型受験の前提条件、(2) オンライン・AI・キャンパスのエビデンス、(3) 教育格差や不登校の現実、(4) 大学ランキングや国際指標との接続、という観点から、元の主張を補強したり、別の角度から問い直したりしていきます。

問題設定/問いの明確化

OECDの「Education 2030」プロジェクトは、これからの教育目標を「知識・スキル・態度と価値観」を統合したコンピテンシーとして捉え直しています。単なる知識量ではなく、学習者の主体性やウェルビーイング、協働して問題を解決する力などが強調されています[1]。暗記はこの枠組みの中では「知識を支える基盤」として位置づけられますが、それ自体がゴールではありません。

雇用の側面では、世界経済フォーラムの「Future of Jobs 2023」が、今後5年間で求められるスキルの上位に「分析的思考」「創造的思考」「レジリエンス」「テクノロジーリテラシー」などを挙げています[2]。多くの職種で仕事の内容が再構成され、AIや自動化によって定型的な情報処理は縮小し、判断や対人協働に関わる部分の比重が高まると見立てられています[2]。

一方、日本の若年層に目を向けると、25〜34歳の高等教育修了率は66%とOECD平均の48%を上回り、既に多くの人が大学や短大・専門学校を経由する社会になっています[3]。教育水準が全体として上がるほど、「点数だけで上位から一定数を切り取る」仕組みは、社会の実態や求められる能力とのズレが大きくなりやすいと考えられます。

また、日本の次期教育振興基本計画(中教審答申)は、「持続可能な社会の創り手の育成」と「ウェルビーイングの向上」を二つの柱に据えています[4]。これは、教育の目的が「選抜のための知識伝達」にとどまらず、「社会に参加し、人生を築くための力」を広く育てる方向へシフトしていることを意味します。そのとき、暗記に偏った受験や大学のあり方が、どの程度この目的に沿っているのかが、記事全体の問いと言えます。

定義と前提の整理

議論を整理するために、ここでは「暗記型の受験」を、「時間制限のある一発勝負の筆記試験で、事前に覚えた知識をどれだけ正確に再生できるかを主に問う入試」と広く定義します。もちろん、実際の試験には思考力を問う問題も含まれますが、受験産業や対策の実態をみると、短期間で大量の情報を覚え、パターン化された問題に当てはめる練習が中心になりがちです。

一方、「AI時代」という言葉も曖昧になりやすいですが、ここでは「大規模言語モデルやオンライン教材によって、(1) 情報検索・要約・翻訳が容易になり、(2) 個別最適化された学習支援が可能になり、(3) 多くの知的作業が部分的に自動化される環境」としておきます。この前提に立つと、「知識を頭にどこまで保持すべきか」「道具に任せてよい部分はどこまでか」という線引きが、従来より難しくなります。

また、日本の教育システムはすでに高等教育への進学率が高く、大学間の序列や入試形式が人生設計に与える影響も大きいとされています[3]。教育政策の側では、ウェルビーイングや多様な学び方を重視する方向性が示される一方で、学校現場では不登校やいじめなど、生徒指導上の課題も増加しているという二重の現実があります[4,9]。

エビデンスの検証

1. オンライン学習と「一発試験」の再考

「オンライン学習は対面授業より劣る」という直感に反して、米国教育省が行ったオンライン学習のメタ分析では、オンラインと対面を比較した多数の研究を統合した結果、両者の学習成果は概ね同等か、むしろオンラインもしくはオンラインと対面を組み合わせたブレンド型の方がわずかに優れるという傾向が示されています[5]。これは、教材アクセスのしやすさだけでなく、学習者が自分のペースで復習したり、複数の表現で説明を受けたりできる点が影響していると考えられます。

記憶研究の分野でも、「学習=読む・聞く時間」「テスト=学習成果の測定」という素朴なイメージは修正されています。RoedigerとButlerによるレビューは、単純な再読よりも「思い出そうとするテスト練習(想起練習)」を含む学習の方が、長期的な記憶保持に大きな効果をもたらすことを多くの実験から示しています[6]。つまり、暗記そのものを完全に放棄するのではなく、「どのように思い出す機会を設計するか」が重要だと考えられます。

さらに、認知負荷理論を発展させた協調的認知負荷理論では、複雑な問題解決場面で、複数人が知識を分担しながら作業することで、個人のワーキングメモリの限界を補い得ることが示されています[7]。これは、実社会でのチームワークやプロジェクト型学習の設計に直結する知見であり、「個人の頭の中だけで全てを暗記しておく」前提とは異なる学習像を提示しています。

こうした研究を踏まえると、「暗記型受験」が時代遅れになるというよりも、「覚える力」を評価するなら、その前提としてオンライン教材・協働学習・継続的なテスト練習などを組み合わせた、もう少し長期的な評価設計の方が理にかなっているという見方もできます。

2. 大学のオンライン化とキャンパスの役割

授業のオンライン化については、学習成果だけを見れば対面と同等以上になり得るというメタ分析の結果[5]に加えて、日本でも高等教育の修了率が上昇し続けている現状があります。OECDの統計によると、若年層の高等教育修了率はOECD平均を大きく上回り、大学は「少数のエリートの場」から「多くの人が通う場」へと役割を変えつつあります[3]。

このとき、大学キャンパスの価値は「講義を聞く場所」だけでは説明しづらくなります。ベネッセ教育総合研究所が全国の大学生を対象に行った調査では、友人の数が多い学生ほど「学びの充実」や「成長実感」が高い傾向があり、コロナ禍で対面機会が減った学生ほど、友人関係の希薄化と成長実感の低さが報告されています[8]。この結果は、キャンパスが単なる講義の場ではなく、「日常的な対話や偶然の出会いを支える場」として機能してきたことを示唆します。

OECDが実施する社会情動的スキル調査(SSES)でも、好奇心や粘り強さといったスキルを高く持つ生徒ほど、読解・数学・芸術での成績が高く、欠席も少なく、生活満足度も高い傾向が報告されています[13,14]。大学における人間関係やコミュニティの密度は、こうしたスキルの形成にも影響しうると考えられます。オンライン授業が広がるほど、「人が集まる環境」をどう設計するかが、大学の存在理由として前面に出てくると言えます。

3. 不登校・多様な学び方と機会保障

日本では、不登校の児童生徒数が過去最多となっていることも見逃せません。文部科学省の調査によると、令和5年度の小・中学校における不登校児童生徒は約34万6千人、高校では約6万9千人に達し、いじめや暴力行為、自殺とあわせて深刻な状況が続いています[9]。この数字は、学校という単一の枠組みだけでは全ての子どものニーズに応え切れていない現実を示しています。

こうした状況を受けて、文部科学省は2023年に「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」を策定しました。このプランは、不登校の子ども全員の学びの場を確保し、フリースクールや教育支援センター、オンライン学習など多様な学びの場をネットワークとして位置づけることを掲げています[10]。また、1人1台端末のデータ活用や相談窓口の充実を通じて、早期発見と切れ目のない支援を目指すとされています[10]。

世界経済フォーラムも、日本のこうした取り組みを「インクルーシブな学校システムの構築」として紹介し、学校・地域・家庭・フリースクールなどが連携して学びの機会を保障する試みとして注目しています[17]。ここでは、義務教育を「同じ学校に通わせる義務」ではなく、「子どもが学ぶ権利を社会全体で保障する責任」として捉え直す視点が重要になります。

4. 教育格差・偏差値・国際的な評価軸

「暗記型受験から総合型選抜へ」という議論は、公平性の観点からも慎重な検証が必要です。OECDの『Equity in Education』は、15歳時点で社会経済的に不利な生徒と有利な生徒の学力格差が、その後の高等教育進学や就業に大きな影響を与えることを示しつつ、いくつかの国では高い学力と高い公平性を両立していることも報告しています[11]。

PISA 2022の日本の結果では、数学的リテラシーの平均点はOECDの中で最上位水準を維持する一方、社会経済的に有利な生徒と不利な生徒の間には81点の差がありました[12]。これはOECD平均(93点)よりは小さいものの、背景による差が依然として存在することを示しています。また、不利な層に属しながら上位の成績を収める「レジリエントな生徒」も一定数いるものの、その割合は教育政策や学校の支援によって変化しうると分析されています[12]。

総合型選抜やポートフォリオ評価は、探究活動や表現力を評価しやすい一方で、情報や時間、お金に余裕のある家庭ほど有利になりやすいという指摘もあります。したがって、偏差値に代わる物差しを増やすなら、同時に奨学金・学習支援・相談体制を厚くしなければ、かえって格差を固定化するリスクもあると言えるでしょう[11,12]。

大学レベルでは、Times Higher Educationの世界大学ランキングが、教育・研究・被引用数・産業界からの収入・国際性など複数の指標を組み合わせて大学の総合力を評価しています[15,16]。2026年版ランキングでは、日本の大学も上位に位置づけられているものの、国内の偏差値序列とは必ずしも一致しません[15]。また、THEの日本大学ランキングでは、学生調査の結果や教育環境を重視した独自の指標を用いており、入試偏差値だけでは見えにくい大学の特徴を可視化しようとしています[16]。こうした外部評価は、入試改革と大学運営が表裏一体であることを示す材料になります。

反証・限界・異説

暗記型受験の価値をめぐる議論には、「知識を軽視しすぎではないか」という懸念もあります。実際、想起練習の研究は「知識が十分に頭にあるからこそ、思考や応用がスムーズになる」という点も強調しており、基礎的な事実や概念を覚えるプロセス自体が、長期的な理解を支えることを示しています[6]。AIが瞬時に情報を検索できるとしても、知識が全くない状態では、検索結果を評価したり、複数の情報源を統合したりすることが難しいという指摘も妥当です。

また、オンライン学習のメタ分析も、すべての学習者・すべての教科でオンラインが対面より優れていると言っているわけではなく、設計の良し悪しや学習者の自己管理能力によって成果が大きく変わることを認めています[5]。実験・実習・臨床など、現場性が不可欠な分野では、物理的なキャンパスや施設の役割は当面残り続けると考えられます。

総合型選抜やプロジェクト型評価についても、評価の基準が曖昧になれば、逆に「何を準備すればよいか分からない」という不安を増やす可能性があります。OECDの公平性レポートは、評価基準の透明性や早期からの情報提供が、進学行動や自己効力感に影響することを示しており[11]、多元的な評価軸を導入する際には、説明責任やガイドラインの整備が不可欠だと考えられます。

さらに、不登校対策や多様な学びの場の整備は、理念としては広く支持される一方で、学校現場や自治体にとっては人員や予算の制約が大きく、COCOLOプランも「今後の運用と検証が課題」とされています[9,10]。国際機関が高く評価する取り組みであっても、それが全国の子ども一人ひとりに届くかどうかは別問題であり、慎重なモニタリングが必要です[17]。

実務・政策・生活への含意

これらのエビデンスを踏まえると、今後の教育実務では、いくつかの方向性が考えられます。まず、入試については、「一発勝負の筆記試験」一本ではなく、高校での学びのプロセスや探究活動、協働的な課題への取り組みなどを一定程度評価に組み込むことが検討されます。その際、オンラインポートフォリオや共通の評価ルーブリックを活用することで、学校間・地域間の差を抑えつつ多様な学びを可視化することが重要になります[1,11,12]。

学校・大学現場では、暗記と応用を対立させるのではなく、「想起練習を取り入れた授業デザイン」や「協働学習の場面設計」のように、認知科学の知見を日常の授業に反映させる工夫が考えられます[6,7]。例えば、小テストや口頭での説明を通じて頻繁に思い出す機会を用意しつつ、その知識を用いたプロジェクトやディスカッションを組み合わせることで、暗記と創造性を両立させることが可能です。

大学については、講義コンテンツのオンライン化を前提に、「どのようなコミュニティと体験を提供するか」が差別化の鍵になります。ベネッセの調査が示すように、友人や教員とのつながりは、学びの充実感や成長実感に直結しやすい要素です[8]。キャンパス設計やカリキュラム上の工夫によって、異分野の学生が出会い、協働する機会を意図的に増やすことが、大学の価値向上やランキング指標にも間接的に影響し得ます[3,15,16]。

政策レベルでは、不登校オルタナティブな学びを「例外」として扱うのではなく、最初から制度設計の中に組み込む発想が求められます。COCOLOプランのように、フリースクールやオンライン学習、教育支援センターなどを含めたネットワークを前提にして出席認定や支援制度を整えることは、その一例です[10,17]。同時に、OECDが指摘するような社会経済的格差を縮小するには、学費支援や学習支援、情報提供の仕組みを、特に不利な家庭に厚く届ける必要があります[11,12]。

個人レベルでは、「暗記するか/AIに任せるか」の二者択一ではなく、「自分の専門や関心にとって、どの知識は即座に思い出せた方がよいか」「どの部分はツールに任せ、空いた認知資源をどんな思考にあてるか」を考える視点が役に立ちます。社会情動的スキルの研究が示すように、好奇心や粘り強さ、他者と協働する力は、どの進路を選ぶ場合にも長期的な成果に結びつきやすい要素です[13,14]。

まとめ:何が事実として残るか

AI時代に暗記型受験が「時代遅れ」になりつつあるという主張を、一次資料に基づいて検証すると、次のようなポイントが事実として残ります。第一に、国際機関や雇用調査は、知識の量よりも、それを使って課題を解決するコンピテンシーや社会情動的スキルの重要性を強調していること[1,2,13,14]。第二に、オンライン学習や想起練習に関する研究は、「学び方」と「テストの使い方」を工夫すれば、対面授業や一発試験以外の方法でも高い学習成果が得られることを示していること[5,6,7]。第三に、日本では不登校や教育格差が顕在化しており、多様な学びの場を制度に組み込む動きが始まっていること[9,10,11,12]。そして第四に、大学の価値は偏差値や講義だけでなく、コミュニティや国際的な評価軸によっても測られつつあることです[3,8,15,16]。

一方で、暗記や標準化テストの価値が完全に失われたわけではなく、基礎知識や公平性を確保する上で一定の役割を持ち続けるという見方も、研究と統計から裏づけられています[3,6,11,12]。残る課題は、「暗記型受験か、そうでないか」という二択ではなく、限られた時間や予算の中で、どの領域をどのような評価方法で支え、どのような支援で格差を埋めるのかという具体的な設計に落とし込んでいくことだと言えます。今後も、政策・現場・個人のレベルで、データと経験を行き来させながら検討を続けることが求められます。

本記事の事実主張は、本文の[番号]と文末の「出典一覧」を対応させて検証可能としています。

出典一覧

  1. OECD(2018)『The Future of Education and Skills: Education 2030』 OECD Publishing 公式ページ
  2. World Economic Forum(2023)『The Future of Jobs Report 2023』 World Economic Forum 公式ページ
  3. OECD(2025)『Education at a Glance 2025: OECD Indicators – Japan Country Note』 Education GPS / OECD Publishing 公式ページ
  4. 文部科学省(2023)『次期教育振興基本計画について(答申)』 第134回中央教育審議会総会 公式ページ
  5. Means, B. et al.(2010)『Evaluation of Evidence-Based Practices in Online Learning: A Meta-Analysis and Review of Online Learning Studies』 U.S. Department of Education, Office of Planning, Evaluation and Policy Development ERIC
  6. Roediger, H. L. & Butler, A. C.(2011)「The critical role of retrieval practice in long-term retention」Trends in Cognitive Sciences, 15(1), 20–27 論文ページ
  7. Kirschner, P. A. et al.(2018)「From Cognitive Load Theory to Collaborative Cognitive Load Theory」International Journal of Computer-Supported Collaborative Learning, 13(2), 213–233 論文ページ
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