目次
- 三宅香帆が語る本の選び方 興味の入口は「作者」と「相性」から探す
- 読書中の疑問はすぐ解決しなくていい 三宅香帆が語る「5年後にわかる」読書の面白さ
- 読書を続けるコツとは 三宅氏と竹下氏が語る本との付き合い方
三宅香帆が語る本の選び方 興味の入口は「作者」と「相性」から探す
- ✅ 読みたい分野に入りたいときは、テーマ名だけで探すよりも、まず関心に近い書き手や研究者を見つけるほうが進みやすいです。
- ✅ 海外文学や未知のジャンルは、翻訳者名だけでなく、冒頭を立ち読みして「自分が入っていけるか」を確かめるのが大事です。
- ✅ 好きな本のジャンルが違う相手とも、本の話はできます。おすすめを聞く、一行で紹介し合う、といった小さな入口が会話を開いてくれます。
公開収録では、読者から「興味のあることを本でどう調べればいいのか」「海外文学はどう選べばいいのか」「好きなジャンルが違う人と本の話をどう始めればいいのか」といった、読み始める前の悩みが多く寄せられていました。三宅香帆氏は、そうした迷いに対して、むずかしい理屈を並べるのではなく、まずは入口の見つけ方を変えることが大切だと示しています。テーマやジャンルを大きく構えて探すのではなく、自分の関心に近い「書き手」や「読みやすさ」から近づく。ここが、この場で何度も共有されていたポイントでした。
私は、興味のあることが出てきたとき、いきなり大きなテーマ名から入ろうとしなくてもいいと思っています。むしろ、自分の関心に近いことを書いている人を見つけるほうが、ずっと入りやすいです。タイトルだけを追っていくと、思っていた方向と少し違う場所に進んでしまうこともあります。でも、「この人の視点は自分の知りたいことに近い」と感じる書き手が見つかると、そこから関連する本やジャンルも自然に広がっていきます。
ノンフィクションなら、研究者や著者の名前を手がかりにするのが有効です。インタビューを読んだり、論文の一覧を見たりすると、その人が何を大事にしているのかが見えてきます。書店員に相談するのも、とても実践的です。本の棚は広いですが、人を入口にすると、急に道筋が見えてきます。だから、本選びは情報量の勝負というより、自分に合う案内役を見つける作業なのだと思います。
海外文学は「翻訳者」だけでなく、冒頭との相性で選ぶ
海外文学に挑戦したいときは、評判や有名さだけで決めなくてもいいと思っています。もちろん翻訳者は大切ですが、それだけで読みやすさが決まるわけではありません。文章の長さやテンポ、登場人物との距離感、舞台となる土地へのなじみやすさなど、読み始めたときの感覚もかなり大きいです。だから私は、できれば最初の数ページを見て、入っていけそうかを確かめるのがいいと感じます。
知らない国や地名が出てくる作品なら、地図を見たり、Googleマップで場所を調べたりするだけでも、物語への入りやすさは変わります。海外文学は知識で攻略するというより、景色をつかんで距離を縮める読み方が合うこともあります。少し立ち止まって背景を見てみると、急に文章が生き生きして見えることがあります。
ジャンルが違う相手とも、本の話は小さく始めていい
本の好みが違う相手と話すときは、最初から深い感想戦をしようとしなくていいと思っています。まずは、その人のおすすめを聞いてみる。どうしてその本が印象に残っているのかを聞いてみる。それだけでも会話は十分に始まります。本が好きな人は、自分の好きなものに関心を向けてもらえるとうれしいことが多いので、入口はとてもシンプルでいいのだと思います。
一行だけで紹介し合う、印象に残った場面だけ話す、といったやり方もよくできています。要約を完璧にしようとすると身構えてしまいますが、短く切り出すと会話のハードルは一気に下がります。だから、本の会話は知識量で競うものではなく、お互いの関心を少しずつ見せ合う時間として考えると続きやすいです。
このテーマ全体から見えてくるのは、本選びや本の会話には「正しい入口」が一つだけあるわけではない、ということです。三宅氏が示していたのは、ジャンル名や難しそうな分類に気後れする前に、自分の関心に近い著者、読みやすい冒頭、話しやすい切り口から入ればいいという考え方でした。読書は、最初から大きく構えなくていい。その感覚がつかめると、次のテーマで扱う「わからなさ」との付き合い方も、ぐっとやさしく見えてきます。
読書中の疑問はすぐ解決しなくていい 三宅香帆が語る「5年後にわかる」読書の面白さ
- ✅ 本を読んでいて生まれた疑問は、その場で答えが出なくても大丈夫です。忘れずに持っていること自体に意味があります。
- ✅ 読書の理解は一回で完了しません。別の本や別の経験を通して、数年後に急につながることがあります。
- ✅ 内容をすぐに完璧に消化しようとしなくても、読んだものは体に残っています。自分の感想を持つことが、読書を深める土台になります。
この公開収録で、とくに印象的だったのが「本を読みながら疑問が浮かんでも、すぐに解決しなくていい」という考え方でした。読者からは、読んでいる途中で気になったことがそのまま残ってしまうことや、同じ疑問を持つ人が見つからないこと、さらに読んだ内容をうまく咀嚼できているのか不安になることが語られていました。三宅香帆氏は、そうした不安を否定せず、むしろ読書にはすぐ答えが出ない時間が含まれていると受け止めています。ここが、この動画全体の大きな軸になっていました。
私は、本を読んでいて「これはどういうことだろう」と思ったとき、その場で全部わからなくてもいいと感じています。もちろん調べることはありますが、調べてもはっきりしないことはありますし、すぐに答えが見つからないことも珍しくありません。でも、その疑問を持ったこと自体が、読書の大事な痕跡なのだと思います。わからなかったことを、そのまま置いておくのは不完全さではなく、次につながる準備のようなものです。
だから私は、疑問が出たら日記のような場所に残しておくのがいいと思っています。メモでもいいですし、短く言葉にしておくだけでも十分です。そうしておくと、別の本を読んでいるときや、誰かと話しているときに、前に引っかかったことが急に解けることがあります。答えを急がないことは、読書を止めることではなく、読書を長く続けるための姿勢でもあるのだと思います。
「5年後にわかる」は遅いのではなく、読書の醍醐味です
この場では、読書中の疑問が5年後に解けることもある、という話が共有されていました。これは少し大げさな言い方に聞こえるかもしれませんが、実際にはかなりリアルな感覚です。ある本でわからなかったことが、別の分野の本を読んだときに急につながることがあります。あるいは、数年たって自分の生活や関心が変わったときに、前は見えなかった意味が見えてくることもあります。
かんたんに言うと、読書の理解は本一冊の中だけで閉じていません。いま読んでいる本と、これから読む本、そしてそのあいだの経験が、少しずつ線をつないでいきます。だから、すぐに答えが出ないことを失敗のように考えなくていいのだと思います。むしろ、あとから「あれはこういうことだったのか」と腑に落ちる瞬間こそ、読書の最大の喜びの一つです。
咀嚼は一回で終わらない 記憶よりも感想を大事にする
私は、本を読んだあとに内容をすべて覚えていないといけない、とは思っていません。読書の咀嚼という言葉がありますが、それは読了直後の数分で完結するものではないはずです。読んだときに心に残ったこと、違和感を持ったこと、少し引っかかったこと。そういうものが時間をかけて残り、必要なときにまた浮かんでくる。その積み重ねが、読書の蓄積なのだと思います。
だから、内容を完璧に整理できていないことを、あまり心配しなくていいのだと感じます。読んだものは、見えない形でも体に残っています。大事なのは、正確な要約を急ぐことより、自分がどこで立ち止まったか、どこを面白いと思ったかを持っておくことです。そこが残っていれば、あとから別の本や経験とつながり、自分なりの理解になっていきます。
このテーマで語られていたのは、読書を「すぐに結果が出る作業」としてではなく、長い時間の中で育っていく営みとして見る姿勢でした。三宅氏の言葉を通して見えてくるのは、わからなさを急いで埋めるより、疑問や感想を手放さずに持っておくことの大切さです。そう考えると、次のテーマで扱う読書の習慣化や本との付き合い方も、もっと現実的でやさしいものとして見えてきます。
読書を続けるコツとは 三宅氏と竹下氏が語る本との付き合い方
- ✅ 読書を続けるには、完璧に読むことよりも、自分が続けやすいやり方を持つことが大切です。
- ✅ 本は最初から最後まで律儀に読まなくてもかまいません。飛ばし読みや図書館の活用も、立派な読書の工夫です。
- ✅ 読書は生活や体調と強く結びついています。時間の作り方や体の整え方まで含めて考えると、無理なく続けやすくなります。
公開収録の後半では、本をどう選ぶか、どう理解するかだけでなく、そもそも読書をどう続けるかという現実的な悩みが次々に語られていました。面白くない本をどこでやめるか、図書館や古書店と書店をどう使い分けるか、昼休みに読書する勇気が持てないときはどうするか、体調が悪い日はどう読書と向き合うか。こうした悩みに対して、三宅氏と竹下氏は、読書を特別なものとして持ち上げるのではなく、生活の中に置き直しながら答えていました。ここが、この回の親しみやすさにつながっています。
私は、本を読むときに、必ずしも最初から最後まで順番通り、きっちり読まないといけないとは思っていません。読み始めて面白さがつかみにくい本でも、飛ばしてみたら急に面白くなることがありますし、章の順番を前後させたほうが入りやすい本もあります。とくにノンフィクションは、構成よりも今の自分に必要な部分から読むほうが、内容が入ってきやすいことがあります。
だから、途中で読み方を変えることを、手抜きのように考えなくていいと思います。全部を均等に読むことより、自分がその本とどう出会えるかのほうが大事です。読書はルールを守る競技ではなく、その本から何を受け取れるかを探す作業です。読み方に少し自由があるだけで、本との距離はかなり近くなります。
図書館も古書店も味方になる お金の不安を抱え込まない
私は、本は書店で買いたい気持ちを持ちながらも、図書館や古書店を使うことをまったく悪いことだとは思いません。読書を続けていくと、読みたい本はどうしても増えていきますし、全部を新品でそろえるのは現実的ではありません。だから、図書館で借りる、ブックオフで探す、誰かに借りる。そういうやり方も、読書を続ける知恵として自然なものだと思います。
そのうえで、書店で実際に出会って「この場で買いたい」と思った本は、その店で買うことを大事にする、という感覚も語られていました。これは本そのものだけでなく、本と出会わせてくれた場所を大事にする考え方です。かんたんに言うと、お金をかけるかどうかを白黒で考えるのではなく、どこで出会い、どう支えたいかで選んでいく姿勢が印象的でした。
読書の時間は気合いではなく、生活の配置でつくる
読書の時間がなかなか取れない、昼休みに本を読むのが気まずい、という悩みもとても現実的でした。こうした話に対して語られていたのは、堂々と長時間読むことより、読める環境を少しずつ整えることの大切さです。たとえば文庫本を持ち歩く、少し人目の少ない場所に移る、一人でランチを取る流れを作る。そうした小さな工夫で、本を開ける時間は意外と増えていきます。
読書をしている姿がどう見られるかを気にしすぎなくていい、という感覚も大きな支えになります。本を読む人として自然に振る舞うことで、周囲からの見え方も少しずつ変わっていきます。読書時間は特別に確保するものというより、生活の中の余白を読書向きに並べ替えることで生まれてくるのだと思います。
体調と感想を整えることが、読書を長く支える
読書は頭だけの行為に見えますが、実際にはかなり身体に左右されます。体がしんどいときは読めませんし、集中力が落ちると文字が入ってこないこともあります。この場では、水を飲むこと、温かい飲み物を取ること、スマホとの距離に気をつけること、朝に本が読めるかどうかを体調の目安にすることなど、意外なほど具体的な話が出ていました。読書を続けるには、気合いよりもまず体の状態が大事だという感覚が共有されていたのです。
さらに、自分の考えをどう育てるかという問いに対しては、誰かの考えに影響されること自体を恐れなくていい、という見方も示されていました。いろいろな本から受けた影響が重なった先に、自分の考えは少しずつ形になります。そのとき大事なのは、完璧な意見を急いで持つことではなく、自分がどう驚いたか、どこで引っかかったかを残しておくことです。読書会についても、同じスピードで読むことにこだわらず、無理のない頻度で続けるほうが長続きすると語られていました。
このテーマを通して見えてくるのは、読書を続ける人ほど、自分に合った「雑さ」を上手に持っているということです。飛ばし読みも、図書館の活用も、昼休みの工夫も、体調の管理も、すべては本を遠ざけないための実践でした。三宅氏と竹下氏が共有していたのは、立派な読書家になることより、生活の中で読み続けられる人であることの大切さです。こうして3つのテーマを通して見ると、この公開収録は読書術の解説というより、本と長く付き合うための考え方をやさしく手渡す時間だったと言えます。
出典
本記事は、YouTube番組「【三宅香帆vs読者67人】読書中の疑問は5年後に解決される/Googleマップを使って本を読む/半年に1回読書会術/三宅香帆&竹下隆一郎「みんなで本を読んでいこうな!」/公開収録イベント編」(TBS CROSS DIG with Bloomberg)の内容をもとに要約しています。
読後のひと考察──事実と背景から見えてくるもの
読書に関する助言は「気持ちを軽くする」効果が期待できます。ただ、現実の環境条件を抜きに語ると、過大評価にも過小評価にもつながりかねません。文化庁の世論調査では、1か月に本を1冊も読まない人が多数派であることが示されています[1]。
また、読書を続けられるかどうかは「意志」だけで決まるものではありません。総務省統計局の社会生活基本調査(2016年と2021年の比較)では、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌に充てる時間が減少したことが要約されています[2]。この変化が直ちに「読書時間の増加」を意味するわけではなく、生活の中で長文に集中する枠を確保しにくくなる可能性も含みます。
問題設定/問いの明確化
本稿の焦点は、(1)入口を「テーマ名」より「案内役(信頼できる書き手・編集・棚など)」に寄せる選書、(2)読書中の疑問を“すぐ解かない”態度、(3)飛ばし読みや途中離脱を許す読み方、(4)それでも理解の質や視野が保てるのか、の4点です。争点は「続けやすさ」と「理解の確かさ」をどう両立させるかであり、さらに「誰にとって両立しやすいか」という格差の論点も含みます[1,2]。
定義と前提の整理
読書を評価するとき、冊数や完読の有無だけに寄せると論点がずれやすくなります。OECDはPISAの読解を、文字を追う技能にとどめず、文章を理解し、目的に応じて使い、振り返る力として説明しています[4]。この定義に立つと、途中離脱や飛ばし読みは探索段階では合理的になり得ますが、学習や判断に使う段階では「理解の点検」が不可欠になります。
加えて、近年は読解を含む学力動向が社会課題として語られています。PISA 2022のOECD資料では、平均得点の低下が広い範囲で観測されたことが示されています[3]。読書の助言を生活の工夫として評価する一方で、社会全体の読解力の基盤が揺らぐ局面では、読み方の自由と理解の確かさのバランスがより重要になります[3,4]。
エビデンスの検証
入口を「案内役」に寄せる利点と、偏りのリスク
案内役を持つ選書は、探索コストを下げます。文化庁の調査でも、本の入手・接触経路として書店、図書館、インターネット情報など複数の導線が併存しており、読者が「アクセスしやすい入口」を使っている状況が読み取れます[1]。
一方で、案内役を固定しすぎると視野が狭まりやすい、という注意点も残ります。意思決定後の情報探索では、決定と整合する情報を初期段階でより選びやすい可能性が検討されており、探索の序盤ほど確証的になりやすいという見立てが提示されています[13]。読書に置き換えるなら、読みやすい案内役だけに依存すると心地よい範囲に留まりやすくなるため、意識的に異なる立場・異なる方法の資料を混ぜる工夫が必要になります。
「疑問の保留」は学習科学と整合するが、回収が前提
疑問をすぐ解決しない態度は、学習科学の一部と整合します。分散学習(間隔を空けて学ぶ)は、多数の実験を統合したレビューで効果が支持されています[5]。疑問をメモに残し、後日別の本や経験で再訪する行為は、分散学習に近い構造を持ちます。
ただし「保留」だけでは、理解が安定しにくいこともあります。学習内容を自分で思い出す練習(テスト効果)は、再読より長期保持を高めることが示されており、読書を学習に使う場合は「読みっぱなし」を避ける工夫が有効です[6]。疑問を寝かせるなら、数日後に要点を言い換えてみる、メモだけ見て説明してみる、といった“回収”の手続きが重要になります[5,6]。
媒体と環境が読み方を変える
紙とデジタルの差も、読み方の自由度と関係します。紙とデジタルを比較したメタ分析では、平均的に紙の方が理解に有利になる傾向が報告され、条件によって差が大きくなり得ることが示されています[7]。結論を単純化すれば「紙が常に正解」ではなく、「理解が必要な場面では補助が要る」という含意として受け取るのが現実的です。
デジタル環境では、スキャンや非線形の読みが増えやすいことも報告されています[8]。読書を習慣化したい場合、通知やタブ移動など注意が散りやすい条件を前提に、「深く読む時間帯」と「軽く読む時間帯」を分けるなど、環境面の設計が重要になります[2,8]。
飛ばし読みは探索に有効だが、理解の保証にはならない
飛ばし読みや速読は、探索段階(読む価値の見極め)では有用です。ただし、速さと理解にはトレードオフがあることが、読み研究の総説でも繰り返し指摘されています[9]。要点だけを拾う目的であれば一定の効率は得られますが、論点のつながりや根拠の妥当性を評価する段階では不利になり得ます。
また、同一テキストでも指示(丁寧に読む、飛ばす等)により眼球運動や再読が変化し、理解度にも差が出ることが示されています[10]。そのため「自由に飛ばしてよい」は入口として有効でも、学習や判断に使う局面では精読や自己テストに切り替える、という二段階設計が安全です[6,10]。
反証・限界・異説
「自由に読めば続く」という発想は、心理的負担を下げる一方で、社会的な格差の論点を残します。文化庁調査では本を読まない層が大きく、読書が“好きな人の工夫”に閉じると、基礎的な読解の底上げに届きにくい可能性があります[1]。OECDが読解を社会参加に関わる能力として扱う点を踏まえると[4]、自由の強調だけでなく「理解の確かめ方」を広く共有する必要性も見えてきます。
動機づけの面でも注意が必要です。外的報酬は条件によって内発的動機づけを下げ得る、というメタ分析が広く参照されています[11]。読書量の数値化や達成競争は短期の行動を押し上げても、長期的な楽しさや自律性を損なう可能性があるため、「選べる」「理解できる」「共有できる」という経験側の設計が重要になります[11]。
一方で、楽しみとしての読書が、その後の行動・心理面の指標と関連する可能性を示す縦断研究もあります[14]。ただし観察研究である以上、因果を断定しない留保が必要であり、「読書が良い結果を生む」と単線的に解釈するのではなく、読書が続く環境や家庭・学校条件も含めて検討する姿勢が求められます[14]。
実務・政策・生活への含意
実務的には、読書を「探索」と「定着」に分けると、自由と質を両立しやすくなります。探索では、冒頭の読みやすさや案内役を頼りにして途中離脱も許容する。定着では、分散学習としての再訪と、テスト効果を活かした想起(思い出す練習)を少量でも組み込む——この二段構えが、研究知見と整合しやすい設計です[5,6]。
政策・環境の観点では、図書館が読書文化とリテラシー支援の基盤になり得ることがUNESCOの文書でも述べられています[12]。個人の努力だけに依存せず、アクセス可能な読書環境を整える視点は、読書習慣の格差を緩和する上でも重要です[12]。
さらに、探索の偏りを避けるには「案内役を複線化する」ことが実務的です。たとえば、同じテーマでも異なる立場の資料を一冊だけ混ぜる、統計・総説・当事者記述を分けて読む、といった小さな設計で、確証的探索に寄りやすい初期段階の偏りを抑えやすくなります[13]。
まとめ:何が事実として残るか
政府統計からは、本を読まない層が大きいこと、生活時間の変化が読書行動の前提条件になり得ることが確認できます[1,2]。OECD資料からは、読解が「理解し、使い、振り返る」力として位置づけられ、近年の到達度低下が懸念として示されている点が読み取れます[3,4]。学習科学からは、疑問の保留は分散学習として合理性がある一方で、想起による回収が理解の安定に重要であり、媒体や飛ばし読みは目的に応じた切り替えが必要であることが示唆されます[5-10]。そして、継続を支えるには内発的動機づけを損なわない設計と[11]、図書館など環境側の支えが重要であるという論点が残ります[12]。読書の「自由」は入口として有益ですが、理解の確かめ方と視野の広げ方を同時に設計する課題が残ると言えます。
本記事の事実主張は、本文の[番号]と文末の「出典一覧」を対応させて検証可能としています。
出典一覧
- 文化庁(2024)『令和5年度「国語に関する世論調査」の結果の概要』文化庁(PDF) 公式ページ
- 総務省統計局(2022)『令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果 結果の概要』総務省統計局(PDF) 公式ページ
- OECD(2023)『PISA 2022: Insights and Interpretations』OECD(PDF) 公式ページ
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