目次
- プロンプトより「聞き方」へ:ナチュラルプロンプトでAIを使い続ける
- すごい聞き方①「各種専門家の案」:9windowsでブレスト相手を一気に増やす
- すごい聞き方②「ダメだし」:AIに先に批判させて企画を磨く
- Gemini/Claude/Copilot/GPTの“性格差”と、アイデアを流さないメモ習慣
プロンプトより「聞き方」へ:ナチュラルプロンプトでAIを使い続ける
- ✅ プロンプトを「精密に作り込む」ほど、発想用途では逆に回り道になりやすい。
- ✅ モデル更新で最適化プロンプトは陳腐化しやすい一方、日常言語の「聞き方」は長く効く。
- ✅ 速さを競うF1ではなく、ふだんの運転の感覚でAIに頼むほうが現場では強い。
NewsPicksの番組では、書籍『AIを使って考えるための全技術』の著者である石井力重氏が、AIの力を引き出すコツを「プロンプト」ではなく「聞き方」として整理しています。いわゆるプロンプトエンジニアリングの小技を増やすより、普段の言葉で意図を伝える力を鍛えたほうが、仕事のブレストや企画づくりでは効率が上がる、という立て付けです。
私は、AIにうまくやらせようとして“プロンプトの作り込み”に寄りすぎると、かえって発想が細くなる感覚があります。もちろん精密に指定する技術が役立つ場面もありますが、日々のアイデア出しでは、もっと人間らしい言葉で頼めるほうが強いです。私が伝えたいのは、テクニック集というより、長く使える聞き方の土台です。
― 石井氏
プロンプトエンジニアリングは「精密加工」になりやすい
石井氏は、プロンプトエンジニアリングを「石を削るカッター」のような精密加工にたとえています。狙った形に近づける力はある一方で、発想の場では“きっちり同じ答え”を出させる方向に寄りやすい、という感覚です。アイデアは毎回少しずつ割れ方が違うほうが面白いので、あえて均一化しない判断も重要になります。
私は、プロンプトエンジニアリングって「正確に削る」感覚に近いと思っています。だからこそ、発想の場面で同じ型の答えが返ってくるように作り込みすぎると、もったいないです。アイデアは、少し予想外の割れ方や、毎回違う展開があるほうが“次の一手”につながります。
― 石井氏
モデルが変わると「最適化プロンプト」は古くなる
もう一つの論点が、AIモデルの更新です。特定モデル向けに最適化されたプロンプトは、モデルが賢くなるほど効きが弱くなったり、逆に邪魔になったりして「学び直し」が発生しやすいと説明されます。その一方で、日常言語で意図を伝える「ナチュラルプロンプト」は、一度身につくとモデルが変わっても軸がぶれにくく、むしろモデルの進化分だけ成果が伸びる、という考え方です。
私は、モデルに合わせた最適化プロンプトを増やしすぎると、アップデートのたびに手元の資産が古くなる感覚があるんです。だからこそ、人間の言葉で意図を伝える聞き方を覚えておくほうが、長期的にはラクです。モデルが賢くなれば、その聞き方のままでも成果が良くなる、という方向に乗れます。
― 石井氏
F1ではなく日常運転:長く使える聞き方を選ぶ
石井氏は、プロンプトエンジニアリングを「世界最速を狙うF1」に重ねつつ、多くの仕事は「普通にドライブしたい」用途だと整理します。最速を狙う人だけが必要とするテクニックより、長く使える“運転の基本”としての聞き方が、現場の効率化には効く、という位置づけです。
私は、世界最速を目指す人がF1の技術を磨くのは自然だと思います。でも、多くの人は「毎日ちゃんと運転できればいい」んですよね。だから、細かい最適化よりも、自然な言葉で頼んで、必要な情報を引き出す。そういう基本動作を安定させたほうが、仕事ではずっと役立ちます。
― 石井氏
役割と視点を増やす聞き方
この前提ができると、次は「聞き方の設計」に入れます。具体的には、AIに複数の視点を持たせてブレスト相手を増やす、という使い方です。次のテーマでは、石井氏が紹介する「各種専門家の案」を使い、発想の幅を一気に広げる方法を整理します。
すごい聞き方①「各種専門家の案」:9windowsでブレスト相手を一気に増やす
- ✅ 外部の専門家ブレストは効果が高い一方で、時間とコストが重くなりがち。
- ✅ 「各種専門家の案」は、AIの中に複数の専門家視点を登場させて、多様な切り口をまとめて回収する方法。
- ✅ 魅力・実現可能性・妥当性の3軸で絞ると、アイデアが「使える候補」に変わる。
番組で石井氏が最初に紹介したのが「各種専門家の案」です。外部の専門家を招くブレストは、マンネリを崩して新しい発想を得やすい反面、段取りと予算がかさみます。実際に「2か月・200万円(2M2M)」の感覚が必要になる場面もあると述べています。
私は、外部の人を呼んだブレストが強いのはよく分かっています。だからこそ、現実の制約で呼べないときに、どうやって「同じメンバーの空気」を破るかを考えてきました。そこをAIで代替できると、発想の入口がかなり軽くなります。
― 石井氏
同じチームの発想が細くなる理由
石井氏は、同じ組織のメンバーだけで続けると、良くも悪くも「会社の最適解」に染まり、出てくる案の形が似てしまうと説明します。長く同じ体制で回すほど、ブレストが惰性になりやすいという問題意識が、この聞き方の出発点になっています。
私は、同じメンバーで考え続けると、無意識に「この会社らしい答え」に寄っていくのを何度も見てきました。一度その型ができると、そこから先は急にブレなくなって、本人たちも「ブレストしても意味がない」と感じやすいです。だから、視点の外部注入が必要になります。
― 石井氏
9windowsの並べ方:専門家役を先に指定する
「各種専門家の案」は、AIに対して“複数の専門家として”具体案を出してもらう聞き方です。クリエイティブ、技術、学術、ビジネス、社会科学、ユーザー、ディスラプターなど、視点を複数並べることで、同じテーマでも見え方を変えられます。
私は、最初に「誰の目で考えるか」を増やしてから、案を出してもらうのが効くと思っています。クリエイティブの目、技術の目、ユーザーの目、ディスラプターの目みたいに、同じテーマでも見え方が変わります。あとは「この立場なら具体的にどうするか」を聞くだけで、発想の幅が一段広がります。
― 石井氏
アイデアを候補に変える:魅力・実現可能性・妥当性
視点を増やすと案も増えます。そこで石井氏は、出てきた案を「魅力」「実現可能性(フィジビリティ)」「妥当性」の3軸で見直す考え方に触れます。専門家役を増やしすぎると回答の精度が落ちるため、追加するなら別の役を減らす、というバランス感覚も重要です。
私は、アイデアの評価軸を先に持っておくと、AIの出力が「眺めて終わり」になりにくいと思っています。魅力があるか、実現できるか、元の課題にちゃんと刺さっているか。この3つで見直すだけでも、会議に持っていける候補が残ります。専門家役は増やしすぎないで、欲しい視点に合わせて入れ替えるのがちょうどいいです。
― 石井氏
会議前に磨く工程へつなげる
「各種専門家の案」で広げたあとは、会議に出す前に粗さを落とす工程が必要になります。次のテーマでは、この流れで「ダメだし」を使って精度を上げる聞き方を整理します。
すごい聞き方②「ダメだし」:AIに先に批判させて企画を磨く
- ✅ AIが書いた企画は、そのまま会議に出すのではなく「ダメだし」で磨いてから出す。
- ✅ 人からの指摘は反発が出やすい一方、AIの批判は受け取りやすく、改善が進む。
- ✅ 「AIのせい」にせず、自分の言葉に直して責任を持つと、チームにも通りやすくなる。
石井氏が2つ目に挙げたのが「ダメだし」です。AIが作った企画書や提案文はスピード感が出る一方で、そのまま持ち込むと粗が残りやすく、場の空気も荒れがちです。そこで、会議に出す前にAI自身に批判・指摘をさせ、弱点を先に潰す“下ごしらえ”として使う考え方が紹介されました。
私は、AIが書いたものをそのまま出すと、どこかで痛い目を見ると思っています。だから最初から「粗探しして」と頼んで、弱いところを先に見つけたいです。自分の中で一度受け止めて直しておくと、会議の場がずっとラクになります。
― 石井氏
批判が刺さらない理由は「自己一貫性」にもある
番組では、人には「自己一貫性」があるため、たとえ正しい批判でも、言われ方次第で反発しやすい、という話が出ます。指摘やアドバイスは内容が良くても受け取りづらい場面がある一方で、AIからの批判は比較的スッと入るため、改善の入口として使いやすい、という整理です。
私は、人に言われると、どうしても少しイラッとしてしまう瞬間があるんです。正しい指摘だと分かっていても、心が追いつかないことがあります。でもAIの指摘だと、意外と冷静に読めて、「確かに」と受け止めやすいです。その差をうまく使うと、改善のスピードが上がると思います。
― 石井氏
ダメだしは会議前のリハーサルとして使う
いきなり人に見せて傷つく前に、まずAIにダメだしをさせることで“自分のダメージ”を減らしつつ、企画の精度を上げられます。草案→ダメだし→修正→再ダメだし、という往復を少し回すだけでも、突っ込まれやすい点が減っていきます。
私は、ダメだしは「怖いもの」じゃなくて、会議前のリハーサルだと思っています。穴を指摘してもらって、直して、もう一回見てもらう。その往復を少しやるだけで、言葉の粗さや、突っ込まれやすい点が減っていきます。人に見せる前の準備として、ちょうどいいです。
― 石井氏
最後は自分の言葉に直して出す
石井氏は、AIを使った案に対して「AIなんで」と言い訳できてしまう空気にも触れつつ、できるだけ言い訳をしないほうが良いという姿勢を示します。AIの出力は叩き台として受け取り、最後は自分の言葉で言える形に育ててから持ち込む。その方が議論が前に進みやすくなります。
私は、AIの案をそのまま出すより、一度自分の言葉に直してから出したいです。そうすると、突っ込まれても立て直しやすいですし、議論も「中身」に集中しやすくなります。AIは便利ですが、最後の責任までAIに預けないのが大事だと思います。
― 石井氏
「ダメだし」は、AIを代行者にするのではなく、静かな編集者として使う発想でした。広げる段階で増えたアイデアを、批判で磨いて強度を上げる。この流れができると、次は「どのAIに頼むとやりやすいか」という運用の話に進みます。
Gemini/Claude/Copilot/GPTの“性格差”と、アイデアを流さないメモ習慣
- ✅ AIは「どれが最強か」よりも、目的に合わせて“性格”で使い分けるほうが成果が安定する。
- ✅ クリエイティブさが上がるほど、事実確認や整合性チェックの手間も必要になる。
- ✅ 生成結果が増える時代は、コピー&ペーストでログを残すだけでも生産性が大きく変わる。
石井氏は、聞き方の工夫だけでなく「どのAIに頼むか」「出てきた情報をどう保持するか」までをセットで語っています。ブレストや企画は、出力が増えれば増えるほど管理が難しくなります。だからこそ、AIごとの得意な空気感を理解し、アイデアを逃がさない運用を作ることが、最後の仕上げになります。
私は、AI選びで迷ったら「今欲しいのは、きっちりした答えか、発想の跳ねか、バランスか」を先に決めます。同じ質問でも返ってくる雰囲気が違うので、目的に合う相手を選ぶだけで、やり直しが減るんです。使い分けは難しい技ではなくて、会話の相手を変える感覚に近いです。
― 石井氏
性格で選ぶ:きっちり・倫理観・クリエイティブ・バランス
番組では、Geminiは「きっちり緻密」、Claudeは倫理観が高く少しウィットもある、ChatGPTはクリエイティブに答えやすい一方でハルシネーションのリスクも意識したい、という整理が出ます。Copilotは当初よりも縛りが緩み、バランスが良くなってきた、という見立ても語られていました。
私は、整った説明や条件整理が欲しいときは、きっちりした出力が出やすい相手に頼みたくなります。私は、言葉の角を立てずに議論を進めたいときは、安心感のある書きぶりの相手を選びます。私は、広げたい場面では発想が跳ねる相手が頼りになりますが、その分だけ「本当にそうか」は自分で見直す前提にしています。
― 石井氏
創造性を“使える案”に変えるための前提
石井氏の語りでは、創造性とハルシネーションが近いところにある、という感覚も出てきます。縛りが少ないほど発想は豊かになりますが、同時に誤りや飛躍も混ざりやすくなります。ここまでの「広げる→磨く」の流れは、弱点を運用で吸収する設計でもあります。
私は、クリエイティブな出力は「素材」だと思っています。面白いところだけ拾って、危ないところはダメだしで落とす。そうやって手を入れる前提なら、多少の飛躍があっても怖くないです。逆に、最初から完璧を求めると、AIの良さが出にくい気がします。
― 石井氏
コピー&ペーストで残す:増えすぎる情報に溺れない工夫
石井氏が勧めていたのが、気になった出力をどんどんコピー&ペーストして残す習慣です。AIによって流れてくる情報量が増えるほど、光った一文を後で見失いやすくなります。だから、テキストに控えて線を引くように扱うだけでも、発想の取りこぼしが減ります。
私は、AIの出力が増えたことで「良いと思ったのに後で分からない」が本当に増えました。だから、気になったものは一回メモに貼っておきます。貼った文章に線を引いたり、短く自分の言葉を添えたりすると、あとで見返したときに思考が再起動しやすいです。派手なツールより、まず手元のログが大事だと思っています。
― 石井氏
この章で整理したのは、AIを「賢さ」だけで比べるのではなく、性格と運用で成果を安定させる考え方でした。聞き方で広げ、批判で磨き、相性のいいAIを選び、ログを残す。ここまでを一連の動きにすると、AIは単なる回答装置ではなく、実務のブレスト相手として機能しやすくなります。
出典
本記事は、YouTube番組「「そのプロンプトは時間のムダ」AIの力を極限まで引き出す「すごい聞き方」3選(Gemini/Claude/Copilot/GPT/ブレスト/スティーブ・ジョブズ/効率化/9windows)」(NewsPicks /ニューズピックス)の内容をもとに要約しています。
読後のひと考察──事実と背景から見えてくるもの
生成AIの「聞き方」は何が有効か。国際機関報告・査読論文・標準指針を突き合わせ、発想支援の利点と誤りの混入、モデル更新で揺れる運用課題まで整理し、再現性を上げる手順をまとめます。[1,12]
問題設定/問いの明確化
発想支援に生成AIを使うと、短時間で叩き台を増やしやすくなります。その一方で、出力が増えるほど検証や整理の負担も増え、「速く書ける」ことがそのまま「良く決まる」ことに直結しない場面があります。国際機関のレビューでも、生産性や創造性への効果が期待される一方で、信頼や人間の専門性との関係が課題として挙げられています。[1]
本稿の問いは、①精密に指示を作り込む運用と、②自然言語で意図を伝えて往復する運用のどちらが発想支援に向くのか、さらに③批判・点検工程や④ログ管理を組み合わせたときに、現場の安全性と成果がどう変わり得るか、という点に置きます。[1,12]
定義と前提の整理
ここでいう「精密な指示」とは、出力形式や条件、禁則、評価軸まで細かく固定し、再現性を狙う入力設計を指します。「自然言語での問い」は、目的・背景・制約を平易に共有し、追加質問や修正を前提に成果物を近づける運用です。どちらも有効な場面があり、対立概念というより連続体として捉えるほうが実務的です。[1]
前提として押さえたいのは二点です。第一に、生成AIは平均的に作業を速めたり品質を上げたりし得る一方で、効果の大きさは利用者の技能やタスクの性質によって異なることが示されています。[2,3]第二に、同じサービスや同じ指示でも、時間の経過やモデル切替で挙動が変わり得るため、過去に効いた「定番の書き方」が恒久的に通用するとは限らない点です。[4,6]
エビデンスの検証
生産性は上がり得るが、効果は一様ではない
文章作成タスクの実験では、生成AIの利用が作業時間の短縮や品質改善と関連した結果が報告されています。[2]また、顧客対応の現場研究では、支援ツールの導入で生産性が上がり、特に経験の浅い層で改善が大きい一方、上位層では利得が小さい、あるいは質の面で別の注意が必要になり得ることが示されています。[3]この点は、「誰にとって」「どの仕事で」役立つかを切り分けないと、導入評価がぶれやすいことを示唆します。[1,3]
小さな言い回しで出力が揺れるという報告
プロンプト(入力文)のわずかな違いが出力に大きな差を生む「入力感度」を測る指標が提案されており、言い回しの変更やテンプレート差が結果を揺らし得ることが報告されています。[5]この知見は、精密な指示が常に安定するというより、「安定させるための工夫(例示の付与、評価の入れ方など)」が別途必要になり得ることを示しています。[5]
モデル更新・切替で「同じ指示」が通用しない可能性
同一サービスでも短期間で振る舞いが変化し得ることを示した検証があり、継続利用では定期的なモニタリングが必要だと論じられています。[4]さらに、モデルを切り替えると、別モデル向けに最適化した指示が性能低下を起こし得る現象(モデル間のずれ)を課題として扱う研究もあります。[6]これらから、テンプレートの蓄積は有用である一方、更新や切替に備えて「検証し直す仕組み」も資産の一部として扱う必要があると考えられます。[4,6,12]
発想は豊かになるが、集合として同質化するリスク
生成AIの支援で個々の成果物がより創造的に評価される一方、成果物同士が互いに似通いやすくなり、集合としての新規性(多様性)が下がり得ることが実験で報告されています。[7]また、対話型AIを用いたブレインストーミングで、アイデアの多様性が低下し得るという報告もあります。[8]発想支援で「案が増えた」ことと「探索範囲が広がった」ことは同義ではない、という現実的な補足になります。[7,8]
歴史的に見た「ブレストの落とし穴」との比較
人間同士のブレインストーミングでも、集団が必ずしも生産的でないことは古くから示されてきました。代表的には、発言待ちで思考が止まること(生産阻害)や評価への不安、ただ乗りなどが原因になり得ると整理されています。[9]メタ分析でも、名目集団(個々で出して後で統合)と比べて実集団の生産性が落ちやすいという議論があります。[10]生成AIは「並列に案を出す」点で集団の生産阻害を迂回し得ますが、別の形で同質化が起こり得るため、歴史的な失敗パターンを置き換えただけにならない設計が必要です。[7,9,10]
反証・限界・異説
「批判させる」だけで安心にはならない
同じモデルに自己フィードバックをさせ、反復で品質を上げる枠組みは提案されており、一定の改善が報告されています。[11]ただし、自己点検は万能ではなく、同じ誤前提を共有したまま整合的に書き直してしまう可能性が残ります。したがって、批判工程を置くなら、評価軸を外部化し、第三者資料との照合や別観点でのチェックを組み合わせるほうが堅い運用になります。[1,12]
過信と過小評価のパラドックス
意思決定の場面では、アルゴリズムが誤るのを見た後に人が不合理に敬遠してしまう「アルゴリズム忌避」が示されています。[14]生成AIでも、些細な誤りで全面的に切り捨てる運用は、利用価値を狭めやすい一方、うまくいった経験の積み重ねが過信を生み、検証を省略する危険もあります。標準指針は、リスクの種類(誤情報、説明不能、セキュリティ等)を棚卸しし、用途ごとに管理策を当てる考え方を提示しています。[12]ここには「信じる/信じない」ではなく、「どの条件なら使えるか」を設計する発想が必要だという含意があります。[12,14]
実務・政策・生活への含意
発散と収束を分け、収束側に外部基準を置く
発想支援の運用では、まず「案を増やす段階(発散)」と「選んで磨く段階(収束)」を意図的に分けることが現実的です。発散では、異なる前提や利害を仮置きして複数案を出し、収束では、魅力・実現可能性・妥当性のような評価軸を固定し、根拠の確認へ寄せていきます。多様性が下がり得るという研究結果を踏まえると、発散段階では特に「似た案の重複率」を点検し、探索範囲を広げ直す操作が有効だと考えられます。[7,8]
批判工程は「失敗の先取り」として設計する
会議や公開の前に弱点を洗い出す方法として、計画が失敗したと仮定して原因を列挙するプレモーテムが提案されています。[13]生成AIに批判役を与える場合も、単なる否定ではなく、失敗シナリオ(誤解される、法令・契約に抵触する、現場実装が破綻する等)を先に列挙し、それに照らして修正するほうが、改善が「気分」ではなく「手順」になります。リスク管理の観点とも整合します。[12,13]
ログは「保存」より「再起動」までを設計する
情報が増えるほど、後から探せなくなる問題が起こります。ノート研究では、内容をそのまま書き写すより、自分の言葉で言い換えるほうが概念理解に結びつきやすいという結果が報告されています。[15]生成AIの出力も、貼り付けて保管するだけでなく、採否理由や前提条件、次に試す問いを短く付記すると、後日の再利用が「読み返し」から「意思決定の再開」へつながりやすくなります。[15]
まとめ:何が事実として残るか
第三者研究を総合すると、生成AIは文章作成や対話支援で生産性・品質を押し上げ得る一方、効果は技能やタスクにより一様ではありません。[2,3]また、入力感度やモデル更新・切替によって挙動が揺れ得るため、精密な指示の蓄積だけに依存すると、維持コストや再検証の負担が顕在化し得ます。[4,5,6]
さらに、個々の創造性が上がっても集合として同質化が進む可能性が示されており、発想支援では「量」だけでなく「多様性の管理」が課題になります。[7,8]歴史的にも、ブレインストーミングは方法を誤ると生産性が下がることが示されてきました。[9,10]
したがって、自然言語で意図を共有しつつ、発散と収束を分け、批判工程を失敗の先取りとして制度化し、ログを「再起動できる形」で残す運用が、成果の安定に近づくと考えられます。標準指針が示すように、用途ごとのリスク棚卸しと対策の更新を継続する課題が残ります。[12,13]
本記事の事実主張は、本文の[番号]と文末の「出典一覧」を対応させて検証可能としています。
出典一覧
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- Noy, S. / Zhang, W.(2023)『Experimental evidence on the productivity effects of generative artificial intelligence』 Science 公式ページ
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- Chen, L. ほか(2024)『How Is ChatGPT's Behavior Changing Over Time?』 Harvard Data Science Review 公式ページ
- Chatterjee, A. ほか(2024)『POSIX: A Prompt Sensitivity Index For Large Language Models』 Findings of EMNLP 2024(ACL Anthology) 公式ページ
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