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トランプ大統領の“政治革命”と2026年「世界10大リスク」|モンロー主義・国家資本主義の影響

目次

トランプ大統領の「政治革命」が示す米国統治の変質

  • ✅ ユーラシア・グループは、トランプ大統領の政策運営を「政治革命」と位置づけ、米国の行政能力と三権分立の揺らぎを最大リスクとして捉えている。
  • ✅ ベテラン官僚の排除と忠誠人事が進むと、制度の歯止めが弱まり、国内統治だけでなく国際秩序にも空白が生まれやすくなる。
  • ✅ 国連分担金など国際負担を抑える動きは国内支持と結びつく一方、同盟国が「アメリカを頼れない」と感じる要因になる。

池上彰氏と増田ユリヤ氏は、国際政治リスクを分析するユーラシア・グループの「2026年 世界10大リスク」を取り上げ、1位に置かれた「アメリカの政治革命」を起点に、世界の不確実性がどう高まるのかを整理しています。番組では、米国の制度や行政の運用が変質すると、国内の統治だけでなく、同盟・国際機関・市場心理まで連鎖的に揺れやすい点が強調されています。

私がまず気になるのは、行政の土台が削られていく点です。政府の職員を次々に入れ替え、経験のある人を外して、政権に忠誠を示す人を入れていく動きが進むと、行政の力そのものが落ちていきます。政策は掛け声だけでは回らないので、現場の蓄積が消えることが一番怖いです。

― 池上

官僚機構の入れ替えがもたらす統治コスト

番組の説明では、職員の大量入れ替えは「改革」ではなく、組織の熟練や手続きを軽視する方向に働きやすいと整理されています。行政の能力が弱まると、危機対応や合意形成が遅れ、国内の対立が深まったときに摩擦が増幅しやすくなります。

私は、アメリカは制度で歯止めが利く国だと思ってきました。だからこそ、入れ替えが進むほど「いつものアメリカ」とは違う動きに見えてきます。もし制度の運用が変わるなら、世界はアメリカの読み方そのものを変えないといけないのではないか、と考えてしまいます。

― 増田

三権分立が揺らぐと「予測可能性」が下がる

池上氏は、議会や裁判所といったチェック機能を軽視する姿勢が強まると、「本来は三権分立の国」という前提が揺らぎ、統治が個人に集中して見えること自体が大きなリスクになると解説しています。国際社会にとっては、政策の継続性よりも、政権の一存で方針が変わる不安が前面に出やすくなります。

私の理解では、背景には「選挙で選ばれたのだから自分のやり方で進める」という強い意識があります。さらに、過去に自分を追及した人への反発や、前回は本当は勝っていたという思い込みのような感情も重なり、次々と手を打っていく形になっているのだと思います。そうした動機が政策の速度を上げるほど、外からはコントロールが効かないように映ります。

― 池上

国際負担を減らす国内論理と、同盟国の不安

番組では、国際機関から距離を取る動きや、国連分担金などの負担を抑える姿勢が、国内の支持層の感覚と結びついている点も説明されています。「世界のためにお金を使うより国内に」という発想が強まるほど、これまでアメリカを前提に組み立ててきた国々は、支えが薄くなる感覚を持ちやすくなります。

このテーマで示されている要点は、「アメリカの政策が変わる」だけではなく、「アメリカという制度が生む予測可能性が下がる」ことが、世界の安心材料を減らすという点です。次のテーマでは、この“安心材料の減少”が、経済と産業競争の領域でどう表れるのかを、中国の動きから整理していきます。


中国の「電気国家化」とデフレ輸出が引き起こす産業競争

  • ✅ 「電気で全てを動かす」方向へ舵を切る中国は、再生可能エネルギーとEVの供給力を武器に、各国の産業構造へ圧力をかけやすくなる。
  • 太陽光パネルなどの供給が一国に偏ると、エネルギー転換が「技術競争」から「地政学」へ変わりやすくなる。
  • ✅ 不動産不況で国内需要が弱い中、作り過ぎた製品を海外に安く流す「デフレ輸出」が進むと、受け入れ国の企業倒産や社会不安につながる。

池上氏と増田氏は、ユーラシア・グループが2位に挙げた「電気国家 中国」を、エネルギーと産業競争の観点から解説しています。中国は石油・石炭中心の時代から、再生可能エネルギーと電気で動く社会へ移行しようとしており、その伸長が欧米側のリスクとして意識されているという整理です。

私の理解では、「電気国家」というのは、電気自動車を作るだけではなく、再生可能エネルギーを広げて、社会の駆動力そのものを電気へ移していくということです。そうなると、電気で動く世界の基盤を握った国が、産業面でも優位に立ちやすくなります。だからこそ、これがリスクとして語られているのだと思います。

― 池上

21世紀のエネルギーを巡る主導権

番組では、中国が再生可能エネルギーを加速させ、電気自動車を大量に作ることで「21世紀のエネルギー」を重視しているという見立てが示されています。一方で、トランプ大統領は石炭を重視する姿勢だと対比され、エネルギー観の違いがそのまま国力評価に結びつく構図が語られています。

私は、エネルギーの話は環境の話だけでは終わらないと思っています。電気で動く社会が当たり前になるほど、発電や設備、製品の供給力が国の強さになります。そこを中国が押さえていくなら、欧米の産業が負けていく場面が増えるのではないかと感じます。

― 増田

太陽光パネルとEVが示す供給網の偏り

池上氏は、太陽光発電パネルが世界的に中国製へ偏っていることを例に挙げ、再生可能エネルギーの普及そのものが、中国の影響力拡大と結びつきやすい点を説明しています。また、電気自動車の生産力が拡大し、世界の企業が競争で負けていく状況が「電気国家」という言葉に含まれていると整理しています。

私が気になるのは、便利さがそのまま依存につながるところです。太陽光も電気自動車も、安く手に入るのは助かりますが、供給が一国に寄ると、何かあった時に一気に弱くなります。エネルギー転換が進むほど、その不安は大きくなる気がします。

― 増田

不動産不況の反動としての「デフレ輸出」

さらに番組では、中国の不動産バブル崩壊で景気が悪い一方、バブル期に作り過ぎた製品が国内で売れず、海外へ安く流れることで「不景気のデフレを世界に輸出している」と説明されています。電気自動車や鉄などの安売りが広がると、受け入れ国の企業が価格競争に耐えられず倒産し、経済への打撃が大きくなるという論点です。

このテーマで重要なのは、エネルギー転換が「環境政策」だけでなく、「供給網」と「価格競争」を通じて国際関係を揺らす点です。次のテーマでは、米国の優先順位が西半球へ傾くという「モンロー主義」の見立てが、欧州と安全保障にどんな空白を生むのかを整理します。


トランプ版モンロー主義と「放置される欧州」が生む安全保障の空白

  • ✅ トランプ版モンロー主義は「西半球優先」を強め、東半球の関与が薄くなるほど中国・ロシアの伸長リスクが高まる。
  • ✅ 欧州はロシアの軍事的圧力と、米国の関与低下という二方向から揺さぶられ、「頼れない状況」がリスクとして意識される。
  • ✅ 欧州側では徴兵制や予備役の議論が進み、支援疲れと備え直しが同時に進む局面が生まれている。

池上氏と増田氏は、ユーラシア・グループが挙げた「トランプ版モンロー主義」と、それに連なる「放置される欧州」という見立てを、安全保障の“空白”という観点から整理しています。焦点は、米国が優先順位を西半球へ寄せるほど、東半球で抑止の前提が揺らぎ、力を伸ばそうとする国が動きやすくなるという構図です。

私は、モンロー主義のポイントは「アメリカさえ良ければいい」という優先順位の置き方だと思っています。西半球はアメリカのものだという発想が強まると、東半球のことは「勝手にやってよね」になりやすいです。そうなると、中国やロシアが力を伸ばす余地が広がってしまうのではないか、と感じます。

― 池上

「西半球優先」が東半球のリスク感覚を変える

番組では、モンロー主義が「欧州は南北アメリカに口を出さない、欧州にも口を出さない」という線引きとして語られています。これが現代版として強まると、東半球にいる国々は、従来の「米国が最終的に支える」という前提を置きにくくなります。増田氏は、日本も東半球側に位置する以上、遠い話ではないという受け止めを示し、地理の問題が政治の優先順位に直結する点を確認しています。

私は、「東半球はどうでもいい」という言い方が出てくるところに、怖さを感じます。日本にとっては、距離のある理念の話ではなくて、前提が変わる話に見えます。頼りにしてきた枠組みが薄くなるなら、自分たちの読み方も変えないといけないのではないかと思います。

― 増田

欧州が直面する「二方向の圧力」

「放置される欧州」は、欧州がロシアからの圧力にさらされる一方で、米国側からも揺さぶりを受ける状態を指す説明として示されています。池上氏は、欧州で右にロシア、左に米国、中央に欧州指導者が描かれる図を例に、欧州が挟み撃ちにされる象徴として語っています。また、米国が欧州を一枚岩として扱うより、各国を分断して一対一で向き合う方が都合が良いという見方も提示され、欧州側の不安が強まる背景として整理されています。

私は、欧州が「頼れない状況」に追い込まれていくのが一番の問題だと思います。ロシアが圧力を強めるだけでも大変なのに、同時にアメリカがNATOの負担や支援に揺さぶりをかけると、欧州は自力で備えるしかなくなります。結果として、空白が生まれやすくなるのではないかと考えています。

― 池上

「第二の戦線」と備え直しの議論

番組では、ロシアがウクライナへの攻撃を続けながら、支援する欧州諸国にも圧力をかける動きが「第二の戦線」として説明されています。こうしたリスク認識を受け、欧州各国では徴兵制の復活や予備役の整備など、社会全体で備える議論が進んでいると整理されています。

このテーマが示すのは、米国の優先順位の変化が、欧州の防衛負担を増やし、同時に東半球の抑止環境を不安定にするという連鎖です。次のテーマでは、こうした政治環境の変化が経済運営にも入り込み、「国家資本主義」やAI・資源リスクとして人々の生活へどう近づくのかを整理します。


国家資本主義化する米国と「AI・水」が増幅させる生活リスク

  • ✅ 米国が「自由な経済」を掲げつつも、政権の意向で企業を選別する「新しい国家資本主義」へ傾くこと自体がリスク。
  • ✅ 「ユーザーを食いつくすAI」は雇用の置き換えと電力需要の急増を同時に招き、社会の不安定化へつながり得る。
  • ✅ 水資源は、上流国がダムを通じて下流国に圧力をかける「武器化」が起こり得るため、資源が交渉カードになる。

池上氏と増田氏は、「2026年 世界10大リスク」の後半に登場する論点として、政治や軍事だけでなく、経済運営のあり方、技術の普及、資源の偏在が、日常の安心を揺らす要因になると解説しています。番組の流れでは「新しい国家資本主義」「ユーザーを食いつくすAI」「水の武器化」が並び、制度・技術・資源が同時に不安を押し上げる構図が浮かびます。

私は、アメリカは本来「政府が企業に口を出さない」という前提が強い国だと思ってきました。ところが、気に入った経営者の会社は支援し、反対する会社には嫌がらせをして潰す、という方向に見えると、自由な競争の前提が崩れていきます。そういう変化そのものが、世界にとって読みづらいリスクになります。

― 池上

「国の言うことを聞け」が経済のルールを変える

番組では、この状態を「新しい国家資本主義」と呼び、民間の自由な活動が建前として残っていても、政権への距離感で企業の運命が左右される点が問題だと説明されています。池上氏は、中国で「従わない企業が詰められる」構図を引き合いに出し、米国が似た方向へ近づくことがリスクだと整理しています。

私は、経済の話は数字だけではなく、ルールへの信頼で動くと思っています。もし「言うことを聞かなければ不利になる」が当たり前になると、投資も雇用も慎重になります。結局は、政治の揺れが生活の見通しにまで入り込んでくるのだと感じます。

― 増田

「ユーザーを食いつくすAI」が雇用と電力を押し上げる

続いて番組は「ユーザーを食いつくすAI」を取り上げ、AI活用が進むほど、人の仕事が置き換えられ、解雇が増える可能性があると説明しています。さらに、AIの利用には大量の電力が必要で、電力不足が課題になり、原子力発電所の建設といった議論にもつながり得る、という連鎖も示されています。

私は、便利さが広がるほど、戻れなくなる怖さも増えると思っています。AIに頼らざるを得ない状態が続くと、仕事を失う人が増えるかもしれませんし、電力需要の負担も大きくなります。暮らしの中に入り込んだ技術ほど、社会全体の弱点も一緒に抱え込みます。

― 増田

水資源が「取引の道具」になる現実

番組の最後には「水の武器化」が示されます。国境をまたぐ川で、上流国がダムを造り、下流へ水を流さない、あるいは「流してほしければ条件をのめ」と取引する形が起こり得るという説明です。水が不足する地域では、水そのものが交渉力になり、争いの火種になるという現実がリスクとして語られています。

このテーマが示すのは、政治の方針転換が経済ルールを揺らし、技術の普及が雇用とインフラ負担を変え、資源の偏在が交渉や対立を生むという連鎖です。番組は「国家の振る舞い」だけではなく、「暮らしの前提」が揺れる局面を可視化し、世界10大リスクを生活感覚へ引き寄せて整理しています。


出典

本記事は、YouTube番組「トランプ大統領の“政治革命”で世界が揺れる?モンロー主義や国家資本主義がもたらす影響は?2026年『世界10大リスク』を分かりやすく解説!」(公式 池上彰増田ユリヤYouTube学園/2026年1月18日頃公開)の内容をもとに要約しています。

読後のひと考察──事実と背景から見えてくるもの

近年の国際情勢をめぐる議論では、政治体制の運用変化、産業競争の激化、安全保障の負担配分、そしてAIや資源制約が生活リスクへ転化する、という連鎖が強調されがちです。ただし、これらは「同時に起きているように見える」こと自体が不安の源になりやすく、前提の置き方次第で結論が大きく変わります。そこで本稿では、制度・経済・技術・資源をそれぞれ独立に点検し、どこまでがデータで裏づけられ、どこからが推測なのかを切り分けます。

問題設定/問いの明確化

第一の問いは、「統治の予測可能性」がどの要因で下がり得るのか、です。比較政治の研究では、選挙の有無だけでなく、立法・司法・監査などの抑制機能が弱まる過程が、民主主義の質を左右すると整理されます[1]。第二の問いは、脱炭素や電化が進むほど、特定国への依存が本当に高まり、経済的圧力に弱くなるのか、です。第三の問いは、同盟の負担配分が変わるとき、空白は必ず生まれるのか、それとも自助努力で埋まるのか、です。第四の問いは、産業政策の拡大、AIの電力・水需要、越境水資源の政治化が、家計や雇用の不安へどう接続するのか、です。

定義と前提の整理

「統治能力」は、理念ではなく運用の問題です。制度があっても、専門人材・手続き・監督機関が機能しなければ、危機対応の遅れや、政策の継続性低下として表れます。公務員制度について米国では、政策に影響する職の区分を見直し得るという論点が、議会調査局の整理でも示されています[2]。ただし、ここで直ちに「能力が落ちる」と断定するより、何が能力を支えるのか(採用・評価・解任のルール、政治的中立、専門知の蓄積)を確認する必要があります。

この点で参考になるのが、政治任用の拡大と「えこひいき」を抑えるためのメリット(能力)原則です。米国のメリット制度は歴史的に、猟官的な人事慣行を抑える改革として位置づけられてきました[3]。近年の規則文書でも、メリット原則が民主的統治の土台の一つである旨が明記されています[4]。つまり、議論の核心は「改革か否か」ではなく、メリット原則と説明責任のどちらを、どんな設計で両立させるかにあります。

産業競争についても、「電化=一国優位」とは限りません。確かに供給網の集中は観測されますが、それが直ちに恒久的な支配力になるかは、代替供給の立ち上げ速度、貿易ルール、技術の標準化、資金調達環境によって変わります。したがって、集中度の事実と、地政学リスクへの転換条件を分けて考えるのが妥当です。

エビデンスの検証

統治の予測可能性に関して、V-Demの報告は、世界的に「執政権の肥大化」と抑制機能の弱体化が広がっている点を定量指標で示しています[1]。個別国に当てはめる際は慎重さが必要ですが、少なくとも「制度があるから自動的に歯止めが利く」という楽観は置きにくい、という含意は残ります。

供給網の偏りは、データで比較的はっきりしています。国際エネルギー機関(IEA)は太陽光発電の製造工程の多くで、単一国が80%を超えるシェアを占める段階があると整理しています[6]。また、IEAはクリーン技術の製造能力が特定国に集中しやすい構造を指摘し、供給途絶や価格変動が他国の移行計画を揺らし得ると述べています[7]。電池材料でも、特定国に製造能力が大きく偏っているという推計が示されています[8]。ここから言えるのは、「安価な普及」と「レジリエンス」がしばしばトレードオフになる、という現実です。

一方、価格競争が受け止められ方として「輸出を通じた物価下押し圧力」になりやすい局面は、過剰能力と国内需要の弱さが重なったときに起きやすいと考えられます。IMFの国別審査では、需要の弱さを背景にインフレ率が低位にとどまり、景気下振れでディスインフレ圧力が強まり得る点が述べられています[9]。特定産業に限れば、OECDの鉄鋼見通しは、過剰能力が輸出増を通じて国際市場を攪乱し得ることを具体的に示しています[10]。ただし、これをもって「常に輸出で不況が伝播する」と一般化するのは行き過ぎで、受け入れ国の関税・補助金・競争政策、為替、需要局面も結果を左右します。

安全保障の負担配分については、支出データが手がかりになります。NATOは加盟国の国防支出を継続的に公表しており、GDP比目標に近づく国が増えてきたことが読み取れます[11]。欧州側の視点では、欧州議会の分析が、EU加盟国(かつNATO加盟国)の国防費がGDP比で2%近辺に接近し、なお増勢にあると整理しています[12]。さらにSIPRIは、欧州の軍事支出が近年大きく伸びたことを示しています[13]。これらは「空白が必ず拡大する」という単線的な見立てに対し、「少なくとも財政面では埋めようとする動きが強まっている」という反対材料になります。

経済運営の「国家の関与」については、近年の産業政策の再拡大が統計的に確認されています。IMFの研究は、近年の産業政策が補助金中心で増えていることをデータセットに基づき示しています[14]。同時にIMFは、産業政策には市場の失敗を補う可能性がある一方、非効率や国際摩擦を招くリスクがあるとして、設計と出口戦略の重要性を強調しています[15]。つまり、「自由市場か国家介入か」という二択ではなく、透明性・期限・評価の条件が結果を分ける、というのがエビデンスに沿った整理です。

AIが生活リスクを増幅し得る点では、電力と水の制約が現実味を帯びています。IEAはデータセンターの電力消費が今後大きく伸び、AIが主要因になり得ると見通しています[16]。一方で、推計には幅があり、推計方法の違いが結果を左右する点も指摘されています[17,18]。水については、データセンターの運用(冷却など)で水使用効率の改善が全体影響を大きく変えることが、査読研究でも示されています[19]。雇用面では、ILOが職務タスク単位で生成AIの影響を評価し、完全自動化より「置き換えと補完の混在」になりやすいことを示しています[20]。OECDも、現時点で大規模な雇用減少の確証は限定的だと述べつつ、賃金・仕事の質・格差の論点を挙げています[21]。したがって「雇用が一気に消える」とも「問題は起きない」とも言い切らず、影響が集中しやすい層と政策対応を具体化する必要があります。

水資源については、越境の湖・河川流域が地表のほぼ半分を覆い、越境帯水層も多数存在するという整理が示されています[22]。共有資源である以上、運用上の協定の有無が重要になりますが、SDG指標の報告では、越境水域を覆う「運用可能な協力取り決め」が十分でない国が多いことも示されています[23]。国連の世界水報告も、水ストレスが高まるほど緊張が増し得る点を述べています[24]。研究面では、気候変動と需要増により水不足が越境的な対立リスクを高め得るという推計が提示されています[25]。紛争を避ける制度としては、国際司法裁判所が越境水利用の紛争を扱った事例もあり、国際法的枠組みが「最後の止まり木」になり得ることが分かります[26]。

反証・限界・異説

統治の変質に関する議論では、「政治任用を増やせば、選挙で選ばれた政策が速く実行され、官僚制の硬直を減らす」という反論もあります。これは説明責任の観点では一理ありますが、メリット原則の弱体化が専門知の流出や監督機能の萎縮につながる可能性も、制度史と規則文書が示唆しています[3,4]。結局、速度と熟議、政治の統制と行政の中立性の緊張関係をどう設計で緩和するかが争点になります。

供給網の偏りも、「集中しているから必ず脅威になる」とは限りません。集中は価格低下を通じて普及を加速し、世界全体の移行コストを下げた面もあります[6]。他方で、IEAが示すように集中は途絶リスクを高め得るため、調達先分散・在庫戦略・規格の相互運用性といった対策が重要になります[7]。つまり、地政学は運命ではなく、サプライチェーン設計の結果として表れる部分が大きいと考えられます。

安全保障では、負担移転が起きても「必ず空白が広がる」と決めつけるのは早計です。防衛費の増額は実際に進んでおり[11,12,13]、ただし支出が能力に変換されるまでには調達・訓練・産業基盤の制約があり、短期のギャップが残り得ます。ここには「財政のコミット」と「即応力」の時間差という、見落とされやすい問題が残ります。

AIについても、雇用破壊だけを強調すると、置き換えを受ける層への支援設計が「恐怖の共有」にとどまり、実務的な再訓練・配置転換の議論が薄くなる懸念があります。ILOOECDが示すように、影響は職種・タスク・技能により偏りが大きいことが前提になります[20,21]。電力・水の制約も、技術改善や規制設計で変動し得るため、単一の数字に依存した予言は避けるのが妥当です[16,17,18,19]。

実務・政策・生活への含意

政策面では、第一に、メリット原則と説明責任を両立する人事・監督の設計が重要です。政治主導を掲げる場合でも、採用・評価・異議申立て・公益通報の経路が機能しなければ、行政能力の毀損が中長期のコストになり得ます[2,4,5]。第二に、産業政策は「やる/やらない」より、透明性・期限・効果測定・国際ルールとの整合が鍵です[14,15]。第三に、同盟の負担配分は支出目標だけでなく、共同調達や生産能力、相互運用性まで含めた実装が問われます[11,12,13]。

企業・家計に近い観点では、供給網の分散、電力・水の使用制約を織り込んだ立地や契約、技能更新への投資が、リスクを「政治ニュース」から「経営・家計の設計問題」へ翻訳する手段になります[6,7,8,16,17,18,19]。越境水リスクは遠い話に見えますが、食料・エネルギー・物流を通じて価格や安定供給に波及し得るため、調達先の水ストレスや協定状況をチェックする実務も意味を持ちます[22,23,24,25]。

まとめ:何が事実として残るか

エビデンスから残るのは、①統治の質は制度の有無だけでなく抑制機能と行政能力に左右されること[1,2,3,4,5]、②電化・脱炭素の供給網は特定国に偏りやすく、安価な普及とレジリエンスが衝突し得ること[6,7,8]、③安全保障は負担増が進んでも能力化には時間差があること[11,12,13]、④産業政策の拡大とAIの電力・水制約、越境水のガバナンス不足が生活リスクに接続し得ること[14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25]、の四点です。これらを踏まえると、将来の不確実性は「大事件」だけで決まるのではなく、制度設計・供給網・インフラ制約といった積み重ねの結果として増幅も抑制もされる、という含意が残ります。今後も、数字で確かめられる部分と、仮説として扱うべき部分を分けて検討する姿勢が求められます。

本記事の事実主張は、本文の[番号]と文末の「出典一覧」を対応させて検証可能としています。

出典一覧

  1. V-Dem Institute(2025)『V-Dem Democracy Report 2025: 25 Years of Autocratization』V-Dem Report 公式ページ
  2. Congressional Research Service(2025)『A New Civil Service “Policy/Career” Schedule: Issues for Congress』CRS Legal Sidebar 公式ページ
  3. National Archives(2022)『Pendleton Act (1883)』Milestone Documents 公式ページ
  4. Federal Register(2024)『Upholding Civil Service Protections and Merit System Principles』Federal Register 公式ページ
  5. OECD(2021)『Civil service capacities in the SDG era』OECD Working Paper 公式ページ
  6. International Energy Agency(2022)『Solar PV Global Supply Chains: Executive summary』IEA Report 公式ページ
  7. International Energy Agency(2023)『Energy Technology Perspectives 2023: Clean energy supply chains vulnerabilities』IEA Report 公式ページ
  8. International Energy Agency(2024)『Global EV Outlook 2024: Trends in electric vehicle batteries』IEA Report 公式ページ
  9. International Monetary Fund(2024)『People’s Republic of China: 2024 Article IV Consultation—Press Release; Staff Report (Country Report No. 24/258)』IMF Staff Country Reports 公式ページ
  10. OECD(2025)『OECD Steel Outlook 2025』OECD Report 公式ページ
  11. NATO(2024)『Defence Expenditure of NATO Countries (2014-2024)』NATO Report 公式ページ
  12. European Parliament Research Service(2025)『EU Member States' defence budgets』EPRS Briefing 公式ページ
  13. SIPRI(2025)『Trends in World Military Expenditure, 2024』SIPRI Fact Sheet 公式ページ
  14. Evenett, S.(2024)『The Return of Industrial Policy in Data』IMF Working Paper 公式ページ
  15. Kim, J. et al.(2025)『Industrial Policies: Handle with Care』IMF Staff Discussion Note 公式ページ
  16. International Energy Agency(2025)『Energy and AI』IEA Special Report 公式ページ
  17. Nature(2024)『Fixing AI's energy crisis』Nature 公式ページ
  18. de Vries, A.(2023)『The growing energy footprint of artificial intelligence』Joule 公式ページ
  19. Xiao, T. et al.(2025)『Environmental impact and net-zero pathways for AI data centres』Nature Sustainability 公式ページ
  20. International Labour Organization(2025)『Generative AI and Jobs: A Refined Global Index of Occupational Exposure』ILO Publication 公式ページ
  21. OECD(2023)『OECD Employment Outlook 2023: Artificial intelligence and jobs』OECD Report 公式ページ
  22. UN-Water(2018)『TRANSBOUNDARY WATERS』Water Facts(PDF) 公式ページ
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  24. UNESCO(2024)『The United Nations World Water Development Report 2024: Water for Prosperity and Peace』UN-Water/UNESCO Report 公式ページ
  25. Jiang, R. et al.(2025)『Transboundary conflict from surface water scarcity under climate change』Nature Communications 公式ページ
  26. International Court of Justice(1997)『Gabčíkovo-Nagymaros Project (Hungary/Slovakia), Judgment of 25 September 1997』ICJ Judgments 公式ページ