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障害者就労の闇はなぜ生まれるのか?補助金制度が抱える根本的な問題とは【ひろゆき】

障害者就労の現状と制度的な歪み

番組では、まず日本の障害者就労を取り巻く現状について、データをもとに実態が整理された。日本国内にはおよそ1100万人の障害者が存在し、これは全人口の約9.2%にあたる。そのうち、就労年齢層に該当するのは約356万人と推計されている。

障害者の働き方は大きく二つの領域に分かれており、一つは一般企業で働く「一般就労」(約68万人)、もう一つは福祉的支援のもとで働く「福祉的就労」(約48万人)である。この福祉的就労には、就労継続支援A型とB型という二つの仕組みが存在し、それぞれ目的や報酬体系が異なっている。

A型とB型の違い

A型は、障害者と事業者の間で雇用契約を結び、法定最低賃金以上を支払う形態である。一方、B型は雇用契約を結ばず、最低賃金を下回る水準でも運営が可能とされる制度で、社会参加の促進を主目的としている。B型では「賃金」ではなく「工賃」と呼ばれる形で報酬が支払われる。

しかし、この制度が現実に機能しているとは言い難い。厚生労働省の調査によると、B型の平均工賃は月2万3053円に過ぎず、実質的に自立できる水準には達していない。一方で、事業者には障害者一人当たり月15万円から18万円の「支援費」が国から支払われており、障害者に対する還元率はきわめて低いのが現状である。

税金8000億円の行方

障害者の福祉的就労には年間およそ8000億円もの税金が投入されているにもかかわらず、その多くが事業運営費や人件費に消えている。現場で働く障害者の手元に残る金額はごくわずかであり、「支援費の構造的な偏り」が制度全体の大きな問題とされている。

出演した日本財団の竹村としみち氏は、「本来は障害者の福祉的就労で高い工賃を上げるために投下されている税金だが、結果として障害者に還元されていない」と指摘した。また、慶應義塾大学の中島貴信教授も「制度の設計段階から費用対効果の視点が欠けており、成果が曖昧なまま補助金が流れている」と問題を提起した。

制度の目的と現実の乖離

障害者雇用の促進を目的に設計されたA型・B型制度は、当初こそ社会参加を支援する仕組みとして期待された。しかし、制度運用が進むにつれ、国の補助金が「企業の収益源」として利用される側面が強まり、障害者本人が労働の成果を正当に得られないという構造的な歪みが生まれた。

ひろゆき氏も「障害者を名目にした補助金ビジネス化が進んでいる」と指摘し、実際の現場では「働いても生活が変わらない」状況が続いていると述べた。こうした背景から、障害者就労制度は今、支援の理念と現実の運用との間に大きな乖離を抱えている。

関連記事:〖ひろゆき〗制度はなぜ機能しない?ひろゆきの視点で見る日本社会4つの構造問題

ピンハネ構造と障害者ビジネスの拡大

番組の中盤では、障害者就労支援の名を借りた「ピンハネ構造」や「障害者ビジネス」の実態が取り上げられた。日本財団の竹村としみち氏は、SNS上で「給付金の9割が不労所得になる」「障害者に2万円渡せば儲かる」といった広告が出回っている現状を紹介し、こうした事業モデルが全国的に蔓延していると警鐘を鳴らした。

補助金が生むゆがんだインセンティブ

障害者1人あたりに対して国から支給される支援費は月15万〜18万円に及ぶ。これは本来、障害者の働く環境を整備するための資金であり、職員の人件費や施設運営費に使われる想定である。しかし実際には、障害者本人に支払われる工賃は平均2万円ほどにとどまり、事業者の手元に大半の資金が残る構造が常態化している。

ひろゆき氏は、「障害者を名目に登録すれば、国から毎月15万円もらえて、当人には2万円だけ支払えばよい。10人抱えれば月130万円の利益になる」と皮肉を交えながら指摘した。これに対し竹村氏は、「確かに一部でそうした悪徳業者が存在するが、正規の事業者も構造的に似た問題を抱えている」と認めた。

A型制度の崩壊とB型への逃避

問題はA型から始まった。A型では雇用契約のもとで最低賃金を保証することが求められていたが、事業者の中には「2時間だけ働かせて最低賃金分だけ払う」など形式的な就労実績を作り、残りの給付金を不正に流用する例が多発した。これが「悪しきA型問題」として大きな社会問題となり、厚生労働省が取り締まりを強化した結果、多くのA型事業者がB型に移行した。

B型では雇用契約が不要であり、最低賃金を下回る報酬でも運営が可能なため、事業者にとっては参入障壁が低い。結果的に、障害者の生産性や就労実績にかかわらず、補助金を安定的に得られる構造が残ってしまった。竹村氏は「本来は社会参加のための支援であるはずが、いつの間にかビジネスとして定着してしまった」と語っている。

囲い込みによる搾取構造

さらに深刻なのは、事業者が「一般就労できる障害者をあえて囲い込む」ケースである。一般企業に就職されてしまうと、事業者は国からの支援費を失うため、能力のある利用者を手放さない構造的誘因が働く。中島貴信教授は、「高い工賃を出すほど事業者の報酬が増える制度設計が、結果的に障害者を囲い込む方向に働いている」と制度上の矛盾を指摘した。

ひろゆき氏も、「一般就労が可能な人を施設側が引き留めれば、結果的に自立の機会を奪うことになる」と述べ、補助金制度そのものが“依存を生む構造”になっていると分析した。障害者の自立支援を目的とした制度が、逆に「障害者を手放さない仕組み」として機能してしまっている現状が浮き彫りになった。

「悪意のない搾取」という現実

番組内では、こうした問題の多くが「悪意によるものではない」とも語られている。多くの事業者は、障害者の居場所や生活支援を真剣に考えて事業を行っている。しかし、補助金に依存した制度のもとでは、結果的に障害者を低賃金のまま囲い込む「悪意のない搾取」が生まれてしまう。竹村氏は「本当の意味での支援とは、本人の能力を社会に還元する仕組みを作ること」と強調した。

障害者支援という名のもとに行われる「善意の構造的搾取」。その背景には、制度の甘さと経済的誘因が絡み合った、深い闇が存在している。

B型から一般雇用へ挑む現場の改革 ― 白石圭太郎氏の事例

番組の後半では、社会福祉法人チャレンジドライフ理事長の白石圭太郎氏が、自身の施設で実施した「B型から一般雇用への転換」事例を紹介した。白石氏は長年、障害者の就労支援に携わり、「働ける障害者は働くべき」という信念のもと、既存の福祉モデルに改革のメスを入れてきた。

平均工賃2万円の壁

かつて白石氏の運営するB型事業所では、地域のビニールハウスで野菜栽培を行っていた。利用者はおよそ20人で、1人あたりの平均工賃は月2万円ほどにとどまっていた。収益源は地元の販売会などでの売上だったが、生産効率が低く、障害者本人の努力が十分に報われない構造に直面していたという。

白石氏は「働ける人がいるのに、福祉的就労の枠組みの中に閉じ込められている」と違和感を抱いた。中には、一般企業でも十分に力を発揮できる人がいるにもかかわらず、制度上の制約によって低賃金のまま据え置かれていたからである。

日本財団との連携による改革

転機となったのは、日本財団との出会いだった。日本財団は、既存のB型事業から脱却し、一般雇用を目指す取り組みを支援するプロジェクトを立ち上げていた。白石氏の構想に共鳴した日本財団は、約2億6,800万円の資金を提供し、新たな「植物工場」建設を後押しした。

この植物工場では、温度や湿度を自動制御するシステムを導入し、安定した生産と品質を確保。従来のB型では不可能だった規模の売上を実現できる環境を整備した。結果として、従来の20人中11人が新しい職場で「一般雇用」として働けるようになり、B型時代に月2万円だった給与は約10万円へと増加した。

「タックスイーター」から「タックスペイヤー」へ

白石氏の事業転換により、施設が国から受け取っていた年間約3600万円の支援費はゼロになった。代わりに、植物工場の売上によって賃金と経費を賄う完全な自立型モデルへと移行した。竹村としみち氏はこの成果を「障害者がタックスイーター(税金の受益者)からタックスペイヤー(納税者)へと変わる画期的な例」と高く評価している。

白石氏は、「税金に頼らない障害者雇用のモデルを作ることが、支援の本来の形」と語り、これまで“保護される存在”とされてきた障害者を、“経済活動の担い手”として社会に送り出すことの意義を強調した。

国と社会に与える経済効果

このモデルが広がれば、国の財政負担にも大きな効果が見込まれる。竹村氏によると、障害者就労B型に支出される国費は年間約6000億円に達する。そのうちわずか5%でも同様の自立型事業に転換すれば、莫大な税金の節約につながると試算されている。つまり、初期投資型の支援へシフトすることで、長期的には財政的にも持続可能な仕組みを構築できる可能性がある。

残された課題と現場の葛藤

一方で、課題も少なくない。新たな植物工場では、働ける利用者11人が一般雇用に移行したが、残る9人は他のB型事業所に移らざるを得なかった。つまり、重度の障害を持つ人々は、なお既存制度の中で支援を受け続けるしかない状況である。白石氏は「全員を移行させるのは理想だが、現実には支援の厚みと企業側の理解が必要」と述べている。

それでも、今回の事例は障害者雇用の未来に一石を投じたといえる。福祉の枠内にとどまらず、「働く力を経済の中で生かす」という新しい選択肢を示した白石氏の取り組みは、今後の就労支援の方向性を示す重要な試金石となっている。

厚労省の制度設計と今後の改革課題

番組の終盤では、障害者就労をめぐる制度の根幹的な課題に議論が及んだ。慶應義塾大学の中島貴信教授は、「すべての問題の原因は厚生労働省の制度設計にある」と明言し、現行の補助金制度が事業者の囲い込みを誘発していると指摘した。

報酬構造が抱える“逆インセンティブ

厚労省は、B型事業所の報酬を「工賃の高さ」に応じて増やす仕組みを導入している。本来は障害者の所得向上を促す狙いだが、実際には「生産性の高い利用者を囲い込む」動機を事業者に与えてしまう結果となった。つまり、一般就労に送り出すと収入が減るため、事業者が意図せず障害者を引き留める構造が生まれている。

中島教授は「報酬を成果連動にする制度は、一見合理的に見えるが、福祉の分野では“排除される人”を生みやすい」と解説し、行政が作るインセンティブ設計そのものを見直す必要があると強調した。

就労義務化と補助金依存のはざまで

一方、厚労省の労働部門は企業に対し、障害者雇用率の引き上げを義務付けている。これにより、企業と福祉施設の間で「障害者の取り合い」が起きるという副作用も生じている。障害者本人の希望や適性よりも、「制度上の数字」を満たすことが優先され、就労支援が形式化しているという指摘も多い。

中島教授は「障害者は“公正”でも“労働”でもなく、あくまで“個人”として支援すべき存在」とし、本人の幸福や成長を軸にした制度設計への転換を求めた。現状では、行政の縦割り構造によって、福祉と労働の政策が分断され、結果として現場が混乱していると分析している。

新しい支援モデルへの転換

竹村としみち氏は、現行制度の改善策として「初期投資型支援」への転換を提案した。従来のように月々の給付金を事業者に支払うのではなく、初期段階で事業構築のための資金を投入し、自立型モデルを育てる方式である。日本財団が白石圭太郎氏の植物工場プロジェクトを支援したように、成功すれば長期的な税金負担を大幅に削減できる。

竹村氏は「全国のB型利用者約40万人のうち、4割は一般就労への移行が可能」と述べ、支援の方向性を“保護から自立へ”と変えるべき時期に来ていると語った。ひろゆき氏も、「完全な一般企業での就労は難しくとも、段階的に社会と関わる仕組みなら現実的」と評価し、社会全体で支える形の就労支援が必要だと強調した。

「依存」から「共生」へ

議論の結論として浮かび上がったのは、障害者支援の本質が“保護”ではなく“共生”にあるという点である。障害者を福祉の枠に閉じ込めず、働くことで社会とつながる環境を作ることが、真の意味での支援になる。中島教授は「制度は人を支えるためにあるのであって、人が制度に合わせるべきではない」と締めくくった。

障害者雇用の現場は、今なお多くの課題を抱えるが、白石圭太郎氏や竹村としみち氏のような実践が広がれば、補助金依存から脱却し、共に働く社会への第一歩が見えてくるのではないかと番組はまとめている。

出典

本記事は、YouTube番組「【ひろゆきvs障害者就労】障害者就労の闇…跋扈する悪徳業者と障害者ビジネスの実態とは…?」(ReHacQ 高橋弘樹/2024年公開)の内容をもとに要約しています。

読後のひと考察──事実と背景から見えてくるもの

障害者の就労をめぐる議論は、感情的な側面が強調されやすい一方で、統計の定義や制度設計の前提が混在しやすい領域です。本稿では、番組や個人発言に依拠せず、政府統計・国際機関・主要経済紙のデータをもとに、日本の就労継続支援A型・B型制度の構造、課題、そして国際的な位置づけを検証します(内閣府 障害者白書2023)。

統計の前提条件と定義の整理

障害者数や就労関連人口を論じる際には、推計の定義と時点を明確にする必要があります。内閣府「障害者白書2023」では、身体・知的・精神の各障害を合算して約1100万人と推計され、全人口の約9%を占めますが、この値は「障害者手帳所持者」をベースにした推計であり、診断基準や届出率により変動します。

また、厚生労働省の「社会福祉施設等調査」(令和5年調査)によると、2023年9月時点での就労継続支援B型事業所の「実利用人員」は約46万人でした。これは届出定員や延べ利用数とは異なる概念であり、報道などで単純比較する際には注意が必要です。

工賃と公費の関係――制度設計の誤解を正す

厚労省の最新調査(令和5年度 工賃実績)によると、B型事業所の平均工賃は月額2万3,053円でした。これは前年までの算定方法(16,000円台)から変更されており、単純比較はできません。この数値が示すのは低所得構造の実態ですが、「支援費=賃金」ではない点を誤解してはなりません。

財務省関東財務局の予算執行調査2024年報告)によれば、就労継続支援A・B型の自立支援給付は、支援人員や運営費に充てるものであり、賃金・工賃の直接支払いに用いてはならないと明記されています。したがって、「補助金が障害者本人に渡っていない」という表現は制度構造上の誤解であり、公費と工賃収入は異なる財源で運用されています。

報酬体系が生むインセンティブの課題

B型の報酬体系は、平均工賃月額・人員配置・生産活動実績などに応じて段階的に決まります。2024年度の報酬改定では、「平均工賃が高い事業所をより評価する仕組み」への転換が進み、さらに「就労選択支援」という新たな中間支援サービスも創設されました(厚労省 報酬改定資料)。

この設計は本来、工賃向上と一般就労移行の促進を目的としていますが、同時に「生産性の高い利用者を囲い込む」動機が生まれる副作用もあります。制度の目的と現場の行動インセンティブが乖離しないよう、「成果の質(定着率・能力伸長・職務多様性)」を評価に組み込むことが求められます。

一般就労への移行と雇用の質

厚労省の統計によると、2023年度(令和5年度)の福祉的就労から一般就労への移行者数は約2万7,000人で、前年より増加しました(就労支援施策資料)。この伸びは評価されますが、移行後の職場定着や職務の内容を含めた「雇用の質」指標はまだ整備途上です。

企業側の環境整備という観点では、法定雇用率が令和6年に2.5%、令和8年7月以降には2.7%に引き上げられる予定です(厚労省 雇用率リーフ)。しかし、主要紙(Financial Times, 2025年4月)も報じるように、多くの企業が形式的な配置で雇用率を充足しており、障害者本人の職務選択や成長機会が制限されるケースも指摘されています。

公費支出の実態と費用対効果

障害福祉分野の歳出は増加傾向にあります。厚労省の2024年度予算概要によると、障害保健福祉部関係経費は約3兆円規模で、その中で就労系サービス関連はおよそ4,000〜5,000億円と推計されます(厚労省 予算概要)。ただし、報酬単価・人件費・施設整備補助などが混在するため、「就労支援に直接投じられた金額」を単一数値で断定するのは適切ではありません。

費用対効果を論じる際には、工賃の単月水準だけでなく、長期的な自立度向上・医療費削減・税収増など社会的リターンを含めて評価する必要があります。OECDの分析(OECD 2023)も、日本における包摂型成長の評価枠として「持続的な社会的投資」を提唱しています。

国際的視点と制度的パラドックス

日本の障害者雇用政策は、法定雇用率と納付金制度を基軸とする「数量的規制モデル」です。一方、欧米諸国では「合理的配慮」や「差別禁止」を基礎にした「機会均等モデル」が主流です。研究(Social Science Japan Journal, 2007)は、日本の制度が雇用者数を押し上げる一方で、職務の限定化や形式的雇用を生みやすいと指摘しています。

OECD報告書(2022)では、加盟国全体で障害のある人の雇用率が非障害者より平均27ポイント低い「雇用ギャップ」が続いており、特にスキル開発・職場適応支援・テクノロジー導入が鍵とされています。日本も同様の構造的課題を抱えており、単なる雇用率達成から「雇用の質・職場での包摂」へ政策転換が求められます。

まとめ――保護から共生へ、検証可能な支援モデルへ

本稿の検証を通じ、いくつかの重要な視点が明確になりました。第一に、B型工賃の低水準は確かな事実ですが、その背景には「給付費と賃金の財源分離」という制度的制約があります。第二に、報酬改定は意図として工賃向上を促すものでありながら、設計次第では選別的な運用を招く可能性があります。第三に、企業の法定雇用率達成は進んでも、就労の「質」や「成長機会」の確保が次の課題です。

OECDが提唱する「Inclusive Growth(包摂的成長)」の概念に照らせば、障害者雇用政策の本質は「保護」から「共生」への移行にあります。制度の目的が「雇用率」ではなく「社会参加の質」にあることを明示し、検証可能な成果指標をもって支援を進化させることが、今後の政策の核心となるでしょう。