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若者はなぜ母親と過ごすのか?恋愛・仕事・家族観から読み解くZ世代のリアル

若者の「〇〇離れ」は本当なのか

「恋愛離れ」は幻想、価値観が変化しただけ

白報道生活総合研究所の坂井孝氏によると、若者の「恋愛離れ」は実態として起きていないという。国立社会保障・人口問題研究所が1987年から5年ごとに実施している調査を分析した結果、恋人がいる若者の割合はこの30年以上ほとんど変化していない。1987年の男性22%に対し、2021年も21%。女性も30%から27%と微減にとどまっており、恋人を持たない人の割合は常に7〜8割に達していた。

坂井氏は「恋愛離れとは、実際には“無理に恋愛をしなくなった”という変化に過ぎない」と語っている。1980年代から90年代にかけての日本では、雑誌やテレビが恋愛を中心としたライフスタイルを理想化し、「恋人がいないと恥ずかしい」という同調圧力が存在した。例えば、クリスマスに恋人がいないことを嘆く「クリぼっち」という言葉が象徴的である。しかし、現代の若者は恋愛を義務的に追い求める価値観から解放され、推し活や趣味、友人関係の中で幸福を見出す傾向が強まっている。

母親との関係が「恋愛に代わる親密さ」を生む

坂井氏は、恋愛に代わって増加しているのが「母親との親密な関係」であると指摘する。自分を一番理解してくれている相手として母親を挙げる若者は、30年前の3割から現在は5割近くにまで上昇。特に「本当の自分を見せられる相手」としても母親が最多となり、恋人を大きく上回る結果が示された。

こうした背景には、価値観の“消齢化”がある。かつては「世代が違えば価値観も違う」と考えられていたが、現代では親子間の意識差が極めて小さくなっている。坂井氏は「60代でも『今を楽しむ方が大事』と考える人が増えており、若者と考え方が近づいている」と分析している。親子が同じカルチャーを共有し、共にアニメや音楽を楽しむことが、世代間の心理的距離を縮めている。

ベンチャー志向離れ」は親世代の影響

若者が安定志向に傾いているという「ベンチャー離れ」も、実は社会的背景の変化によるものだ。1994年当時はIPOブームの影響で、60%以上の若者がベンチャー企業を志望していたが、2024年の調査では大企業志向が63%に上昇した。坂井氏は「就職氷河期を経験した親世代の影響が大きい」と述べる。教育費の高騰や終身雇用の喪失など、厳しい経済環境を見てきた親の現実主義が、子どもの職業選択にも反映されている。

さらに「知られていない大企業よりも、知名度のある中小企業に就職したい」と考える親も多いという。坂井氏は「安定と安心を重視する一方で、共感できるブランドに惹かれる傾向が強い」と指摘する。若者の企業選びは、もはや規模ではなく“共感性”の時代に移行している。

人間関係・社交の「距離感」が変わった

「社員旅行に行きたくない」と答える若者が増えたことも、単なる“人付き合い離れ”ではない。調査によると、若者の6割、上の世代でも同様の割合が「参加したくない」と回答しており、世代を超えた変化として定着している。坂井氏は「家庭や私生活を大切にする人が増え、仕事仲間と過ごす時間を優先しない価値観が広がっている」と説明する。

ファッション・音楽・美容などへの関心は依然として高く、むしろ時代を問わず若者文化の中心にあることが確認された。坂井氏は「興味関心の軸は変わっていない。変わったのは“義務感からの解放”」と総括している。

母親と過ごす若者たち ― 「Z家族」という新しい家族像

「Z家族」という新概念の誕生

白報道生活総合研究所の坂井孝氏は、近年の家族構造を象徴する言葉として「Z家族」という概念を提唱している。Z家族とは、1990年代半ばから2010年頃に生まれたZ世代と、その親世代が密接な関係を築く新しい家族形態を指す。この関係性は、単なる親子の絆を超え、価値観・消費行動・コミュニケーションスタイルまでが連動する点に特徴がある。

坂井氏によると、Z世代の親は「団塊ジュニア世代」にあたり、かつてファミコンやカラオケ、ストリートカルチャーを楽しんできた世代である。そのため、子どもたちが接する文化やデジタル環境にも理解が深く、共通の話題が多いという。こうした背景により、世代間の価値観の断絶が薄れ、親子がフラットな関係でつながる傾向が強まっている。

親子の“消齢化現象”が進む

坂井氏は、世代間の価値観の差が縮まる現象を「消齢化現象」と呼ぶ。年齢差による考え方の違いが消え、世代を超えて似たような価値観を持つ傾向が顕著になっている。たとえば、「将来のために備えるよりも今を楽しむ」と答える人の割合は、若年層と60代以上でほとんど差がなくなっている。このように、ライフスタイル志向が世代を超えて一致しつつある。

坂井氏は「Z世代の親たちは若い頃からゲームや音楽、アニメなどのカルチャーを共有しており、子どもと感覚的な断絶が少ない」と分析する。実際、親子が一緒にアニメや映画を楽しむケースが増加しており、「親子で推し活」も一般化している。これにより、家庭内の会話量が増え、対立や衝突の少ない関係が生まれている。

ケンカをしない親子、対立が消えた背景

かつては「親とケンカして一人前」とも言われたが、Z家族の間ではそのような構図が薄れている。坂井氏はその理由を「親子間の進学・教育経験の共有」にあると指摘する。大学進学率の上昇により、親自身が受験や学業のプレッシャーを経験しており、子どもの気持ちを理解できるようになっている。親は「勉強も大事だが、部活も頑張りたい」という子どもの主張を頭ごなしに否定せず、共感的に受け止める傾向がある。

また、共働き家庭の増加により、家庭内での会話が「叱る」から「共有する」へと変化している。坂井氏は「Z家族では親子が上下関係ではなく、対話を通じて価値観を共有する関係性が形成されている」と述べている。親の側も、子どもと同じSNSやゲームを楽しみながら、自然に交流を続けていることが特徴的である。

「マザコン」はもはや否定的な言葉ではない

Z家族の象徴的な特徴が「母親との親密な関係」である。坂井氏の調査によると、Z世代の若者が「自分を一番理解してくれる相手」として母親を挙げる割合は、30年前の約3割から現在は5割近くにまで上昇している。恋人や友人を上回る数値であり、母親が心理的な支えとなっていることが分かる。

近年では、母親と息子がSNSやメッセージアプリで日常的に会話を交わすことも珍しくない。動画内では、息子が母親に「唇が荒れた」と相談し、母親が冗談交じりに返すチャット例が紹介された。かつてであれば「マザコン」と揶揄されたやり取りも、現在では自然な親子コミュニケーションとして受け止められている。坂井氏は「現代のマザコンは依存ではなく、信頼と共感の関係に基づく“新しい親密さ”」だと説明している。

母親が「最大の理解者」になった理由

母親の存在感が増した背景には、教育と就業環境の変化がある。女性の大学進学率が上昇し、仕事や社会経験を持つ母親が増えたことで、子どもとの価値観共有が進んだ。坂井氏は「共働き化や育児の平等化が進んだことで、母親が家庭内の“相談相手”としての地位を確立した」と分析している。

一方で、父親との関係は依然として課題が残る。調査では「共通の趣味を持つ」と答えた割合が、母親との関係では5割を超えるのに対し、父親とは4割前後にとどまる。ただし、男性の育休取得率上昇や家庭参加の増加により、今後は父親との関係性も改善していくと坂井氏は見通している。

関連記事:ジョーダン・ピーターソンが語る恋愛・結婚・家族の持続可能な設計図

職場・社会におけるZ世代の意識変化

「働く目的」が変わったZ世代

白報道生活総合研究所の坂井孝氏によると、Z世代は「働く意味」そのものを上の世代とは異なる視点で捉えている。かつての若者が「生きがいを見つけるために働く」と答える傾向が強かったのに対し、現在のZ世代では「お金を得るために働く」と回答する割合が上昇している。坂井氏は「仕事を人生の中心に据えるのではなく、生活の一部として位置づけている」と説明している。

この変化の背景には、長期的な経済停滞や雇用の不安定化がある。就職氷河期を生き抜いた親世代の姿を見て育ったZ世代は、現実的な安定志向を身につけた。一方で、坂井氏は「仕事に熱中しないというより、仕事とプライベートの境界を明確にしている」と指摘する。仕事を通じて過剰な承認を求めず、自分らしいペースで成果を出すことを重視する姿勢が特徴的だという。

「用意書き文化」の終焉と本音コミュニケーションの時代

番組の司会を務めた西川則隆氏は、上司と部下の関係性が大きく変化している点に注目した。かつては、上司の前で部下が本音を語る機会は少なく、いわゆる「用意書き文化」が職場の空気を支配していた。坂井氏は「上司は部下の本音を知る必要がなく、部下も上司を持ち上げることで関係を保っていた」と振り返っている。

しかし、Z世代はそのような関係を好まない。むしろ「率直に意見を伝え合える上司」を理想とする傾向が強い。坂井氏は「本音で話せる関係を築くことが、Z世代の職場定着に不可欠」と強調している。上司にとっても“部下の本音”を理解する姿勢が求められる時代に変化しており、従来の年功序列的な指導法は通用しにくくなっている。

「Z家族的」な上司部下関係の台頭

Z世代の職場意識を読み解く上で注目されるのが、家庭内の人間関係の影響である。坂井氏は「Z世代は親と対話を重ねて育った世代であり、職場でも“対話による信頼関係”を重視する」と述べる。家庭ではフラットな関係性を前提に育ったため、職場でも権威的な指示よりも共感的なコミュニケーションを求める傾向がある。

この特性は、Z世代が求める職場環境にも反映されている。命令よりも共感、評価よりもフィードバック、上下よりも並列。坂井氏はこれを「Z家族的職場関係」と呼び、上司が“父親的”リーダーではなく“共に考えるパートナー”として機能することが重要だと指摘している。

幸福度の高さが示す「小さな満足社会」

坂井氏は、Z世代が高い幸福度を示している点にも注目している。経済的には決して豊かとは言えないものの、人生に満足している若者が多いという調査結果がある。その理由を坂井氏は「人間関係の安定」にあると説明する。親子間の対立が減少し、SNSやオンラインゲームを通じて幼少期の友人とつながり続けることが可能になった。これにより、孤独を感じにくい社会的ネットワークが形成されている。

西川氏も「大きな夢や目標がなくても、今の生活に幸福を感じている若者が多い」と述べ、Z世代特有の“満足の仕方”に理解を示している。坂井氏は「目標を持たないことが必ずしも消極的ではない。安定した関係性と推し活などの小さな喜びが幸福を支えている」と結論づけている。

企業に求められる「親世代への共感マーケティング

職場だけでなく、企業の採用やマーケティングにも「Z家族」的視点が不可欠になりつつある。坂井氏は「Z世代の消費や就職行動は、しばしば親世代と連動している」と語る。就職活動において親が情報収集や相談役として関与する「親就活」という現象もその一例である。企業は若者本人だけでなく、親世代に対しても安心感を与えるコミュニケーションを設計する必要がある。

坂井氏は「これからの採用やブランド構築は、“親と子を一緒に動かす”発想が鍵になる」と指摘し、Z世代の行動を支える家庭環境全体を理解することの重要性を強調している。

出典

本記事は、YouTube番組「【母親と過ごす若者はなぜ急増した?】若者の「〇〇離れ」のウソ/現代のマザコンはマザコンではない/父親より母親の真理/ケンカをしないZ家族/消齢化現象/推し活による恋愛離れ」(PIVOT LIFE/公開日:2024年)の内容をもとに要約しています。

読後のひと考察──事実と背景から見えてくるもの

「若者の〇〇離れ」という表現は目を引く一方で、その中身は定義や測定指標の違いによって大きく結論が変わる複雑なテーマです。交際率、生活時間、家族観、就業意識など、どの側面を取り上げるかで「離れ」の意味は異なります。公的統計や国際比較データを丁寧に読み解くと、単純な“離脱”ではなく、関係性・時間・リスクへの再配分が進んでいることが見えてきます。

「離れ」を測る前提条件―定義・指標・文脈の明示

交際や結婚をめぐる議論では、「交際中の比率」や「交際経験の有無」、「結婚意向」などがしばしば混在して扱われます。たとえば国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査(第16回・2021年)によると、未婚者の「いずれ結婚するつもりがある」割合は8割を超え、過去30年間で大きな変化はありません。一方で、「結婚したくない」と答える人の割合も微増しており、義務から選択へという価値観の変化が浮かび上がります。

また、総務省「社会生活基本調査」によると、2016年から2021年にかけて「交際・付き合い」の時間は1日平均7分減少し、「休養・くつろぎ」時間は20分増加しました。ただし2021年調査はCOVID-19期を含むため、感染対策による一時的変動の可能性も指摘されています(要約版)。この点を踏まえると、「恋愛離れ」や「人付き合い離れ」を断定する前に、生活構造そのものの変化を確認する必要があります。

親密性の回路は多元化しつつある

現代では、親密性の中心が恋愛関係に限定されなくなっています。内閣府の孤独・孤立全国調査(2023年)では、「相談できる相手が家族以外にいる」と答えた人が増加しており、SNSやオンラインコミュニティも支えの一部として機能していることが示されました。家族・友人・職場・趣味仲間・オンラインの複数経路が、心理的なつながりを補完しています。

国際的にも、OECDのChild Well-being Dashboardなどでは、物質的・教育的・感情的側面のバランスを重視する多次元的幸福モデルが採用されています。恋愛を唯一の親密性とみなす時代は終わり、リスク分散的な関係性の形成が主流になりつつあるといえるでしょう。

就業志向の変化には環境要因も大きい

ベンチャー志向離れ」「安定志向の高まり」といった見方は、価値観だけでは説明しきれません。リクルート『就職白書2024』によると、学生が重視する条件は「福利厚生」「勤務地」「安定性」が上位を占めていますが、「企業理念への共感」「社会貢献性」など非金銭的要因も増加しています。これは単なる保守化ではなく、安定と共感の両立を求める志向の表れと考えられます。

また、就職環境は景気や物価動向の影響を強く受けます。厚労省の統計では2024年の大学卒業者就職率が98.1%と過去最高水準にあり、求人倍率も回復傾向にあります。こうした外部条件を無視して「価値観の変化」だけで説明するのは不十分であり、制度・市場・家庭背景の複合要因を視野に入れることが不可欠です。

社交・余暇時間の変化と生活設計の再編

交際や付き合いの時間減少は、必ずしも人間関係の希薄化を意味しません。むしろ、個人時間の確保や心身の回復を重視する「私生活優先」の傾向が、世代を超えて広がっています。内閣府「満足度・生活の質に関する調査」(2023)では、ワークライフバランスや休養時間の確保が満足度向上に寄与していることが確認されています。

この傾向は、テレワークや時短勤務の普及、共働き化、介護・育児責務の増大など、社会構造の変化とも連動しています。つまり「社員旅行に行かない」「飲み会に参加しない」といった行動は、個人主義の強まりではなく、時間資源の再配分として理解する方が現実的です。

歴史的文脈と変化の非直線性

1990年代以降の日本は、長期的な経済停滞、人口減少、非正規雇用の拡大、ICT普及、そしてパンデミックを経て、社会構造が大きく変化しました。これらは若者の価値観形成に深く影響しています。OECD『Economic Surveys: Japan 2024』でも、人的資本投資・生産性向上・包摂的成長を重視する政策転換が提言されています。若者の行動変化は、こうしたマクロ的変化への適応の一部と捉えることができます。

倫理・価値論的視点:親密さと自律のバランス

関係性の多元化は孤立リスクを減らす一方で、過度の依存や境界の曖昧化といった新たな課題も生じます。家族やオンラインコミュニティが支え合う関係を築くことは重要ですが、同時に自律性と多様な関与レベルを尊重する制度設計が求められます。内閣府の満足度調査や孤独・孤立調査も、この「バランスの設計」を今後の社会課題として位置づけています。

まとめ―仮説を急がず、多軸的に読み解く

「若者の〇〇離れ」は、単一の傾向ではなく、価値観・環境・経済・テクノロジーの複合現象です。交際や社交は減少する局面と拡張する局面を併せ持ち、家族・友人・オンラインが相互補完しています。就業志向も安定と共感を両立させようとする形で進化しています。重要なのは、変化を善悪で評価するのではなく、データと文脈を多軸的に読み解く姿勢を持ち続けることです。