糖質疲労とは何か
食後に強い眠気やだるさを感じる人は少なくありません。山田悟氏は、これを「糖質疲労」と名付け、新しい健康リスクとして警鐘を鳴らしています。糖質疲労は単なる一時的な疲れではなく、血糖値の急上昇と急降下によって引き起こされる体の反応です。この状態を放置すると、将来的に糖尿病や生活習慣病へとつながる可能性があると指摘されています。
1. 食後の眠気やだるさの正体
本来、食事で得たエネルギーは脳や体を活動的にするはずです。しかし糖質を摂りすぎると、食後に血糖値が急激に上がり、その後インスリンが大量に分泌されて急降下を招きます。この乱高下によって脳のエネルギー供給が不安定になり、集中力低下や眠気、さらにはイライラや小腹の空きといった症状が現れます。これこそが糖質疲労の正体です。
2. 血糖値スパイクと健康リスク
糖質疲労の背景には「血糖値スパイク」と呼ばれる急激な変動があります。短期間であっても高血糖の状態は血管の細胞を傷つけ、酸化ストレスを引き起こします。その結果、動脈硬化や高血圧、脂肪肝などのメタボリックシンドロームが進行しやすくなります。また、長期的には認知症やがん、さらには肌の老化まで関与すると考えられています。つまり、食後の眠気は万病への入り口ともいえるのです。
3. 日本人が糖尿病になりやすい理由
欧米人に比べ、日本人はインスリンの分泌能力が低い傾向があります。特に「痩せていても糖尿病になる」ケースが多いのはそのためです。白人や黒人は大量のインスリンを分泌して血糖値を抑え込めますが、日本人は分泌が遅く少ないため、食後の高血糖をコントロールしにくい体質を持っています。その結果、太っていなくても糖尿病や糖質疲労に陥りやすいのです。
4. 生活習慣病や老化への影響
糖質疲労は単なる「疲れ」では終わりません。長年続けば「メタボリックドミノ」と呼ばれる一連の病気の連鎖を引き起こします。最初は食後の高血糖や肥満から始まり、高血圧・脂質異常症へと進行。最終的には心筋梗塞や脳梗塞といった重篤な疾患につながります。さらに糖質による「糖化反応」が進むと、肌のシワやシミといった老化現象も加速します。つまり糖質疲労は健康寿命を縮める要因であり、予防が不可欠です。
関連記事:SNSで広がる「GLP-1ダイエット」の真実──美容医療広告と痩せたい願望の裏側
糖質疲労を防ぐために
食後のだるさを防ぐには、糖質中心の食事を見直す必要があります。特に日本人はパンやご飯といった主食を大量に摂る傾向があるため、タンパク質や脂質を組み合わせて血糖値の急上昇を抑えることが大切です。例えば、白米を減らしてカリフラワーライスを取り入れる、食事にアボカドやオリーブオイルを足すなどの工夫が効果的です。また、血糖測定器を活用して自身の反応を可視化すれば、より効果的な食事法が見つかります。
カロリー制限より重要なこと
食事管理といえば「カロリー計算」が常識とされてきました。しかし山田悟氏と堀江貴文氏は、最新の栄養学に基づき「カロリー制限は無意味である」と強調しています。重要なのはカロリー量ではなく、食後の血糖値をいかに安定させるかという点にあります。つまり、摂取エネルギーの総量ではなく、食材の組み合わせと順序が健康に直結するのです。
関連記事:〖メンタリストDaiGo〗下っ腹の脂肪が落ちない科学的理由──断食で燃やす“最後の砦”とは?
1. サラダチキンより唐揚げが良い理由
一見ヘルシーに見えるサラダチキンですが、欠点は「油が含まれていない」ことです。油が不足すると血糖値の急上昇を抑えられず、糖質疲労を招きやすくなります。対して唐揚げは、タンパク質と油がバランスよく含まれており、血糖値スパイクを防ぐ効果が期待できます。マヨネーズのように油を加えた料理も有効で、油を敵視する従来の食事法は見直すべきだとされています。
2. そばやおにぎりよりラーメンやバーガー
健康食の代表格と思われがちなそばやおにぎりも、糖質過多になりやすい落とし穴があります。例えばトロロそばは、麺と山芋という二重の糖質で「糖質かぶせ食い」になりやすいのです。一方、ラーメンに野菜やチャーシュー、卵を加えれば、油・タンパク質・食物繊維が血糖上昇を抑えてくれます。おにぎりよりもチーズ入りハンバーガーの方が血糖コントロールには有利という逆説的な事実も紹介されています。
3. 朝食フルーツの落とし穴
朝食にフルーツを取り入れることは「健康的」と信じられてきました。しかし朝は最も血糖値が上がりやすい時間帯であり、糖質中心のフルーツだけでは高血糖を招きやすくなります。さらに果糖は「AGE」と呼ばれる糖化産物を作りやすく、老化を加速させる要因ともなります。朝にフルーツを食べるなら、必ず卵やベーコンなどのタンパク質・脂質を一緒に摂取して、血糖上昇にブレーキをかけることが大切です。
4. 和食やカレーに潜む糖質リスク
和食は「ヘルシー」というイメージが定着していますが、実際には油が少なく糖質過多に陥りやすいという欠点があります。特にカレーライスは、ご飯・小麦粉入りルー・じゃがいもという三重の炭水化物で構成されており、典型的な糖質過剰食です。堀江氏も指摘するように、インド人が糖尿病を発症しやすい背景にも、こうした食習慣が影響していると考えられます。和食を健康的に楽しむには、醤油の代わりにごま油を使うなど、意識的に脂質を加える工夫が必要です。
関連記事:〖メンタリストDaiGo〗下っ腹の脂肪が落ちない科学的理由──断食で燃やす“最後の砦”とは?
食べ方を変えれば健康が変わる
山田氏は「カロリー制限ではなく、血糖値を安定させる食べ方が重要」と繰り返し強調しています。糖質を控え、タンパク質と油をしっかり摂取することで、満腹感が持続し無理な我慢を避けられます。結果的に過食やリバウンドを防ぎ、活力ある生活につながるのです。食後にだるさを感じている人は、カロリーではなく食材の組み合わせに注目することが、健康の第一歩になるといえるでしょう。
古い栄養学を疑え
長らく「バランスの良い食事」や「脂質制限」が健康に良いと信じられてきました。しかし山田悟氏と堀江貴文氏は、こうした従来の栄養学は古い常識にすぎず、むしろ多くの日本人を不健康にしてきたと指摘します。最新の研究では、油を控えることに医学的な根拠はなく、むしろ糖質過多こそが生活習慣病や老化の原因であることが明らかになってきました。
1. 「バランスの良い食事」が危険な理由
日本の食事摂取基準では、炭水化物を全体エネルギーの50〜65%にすることが「理想」とされてきました。しかし山田氏は、この基準が誤解に基づいていると強調しています。タンパク質の上限は腎臓への影響を懸念して20%とされてきましたが、最新の論文では35%まで問題ないと報告されています。また油についても、上限を設ける根拠は存在せず、むしろ摂取量が多い人ほど動脈硬化が少ないというデータもあります。結果として「バランス食」とされてきた高糖質食は、多くの日本人にとって危険な食べ方となっているのです。
2. 血糖値の乱高下がもたらす酸化ストレス
血糖値が急激に上下すると、細胞に強い酸化ストレスが加わります。この酸化ストレスはDNAを傷つけ、血管内で炎症を引き起こし、最終的に動脈硬化を進行させます。安定した高血糖よりも「血糖の乱高下」が細胞を死滅させやすいという実験結果も報告されています。つまり食後のだるさや眠気は、単なる不快感ではなく、血管の老化を進める危険信号なのです。
3. バターとマーガリン論争の真実
かつては「バターは体に悪い、マーガリンは健康的」と言われていました。しかしその後、マーガリンに含まれるトランス脂肪酸が健康被害を引き起こすと判明し、逆転現象が起きました。山田氏は「日本のメーカーはすでにトランス脂肪酸を大幅に削減しており、極端に恐れる必要はない」としつつも、味や健康面ではバターの優位性を認めています。こうした歴史は、科学的根拠が不十分なまま流布された栄養神話の典型例といえるでしょう。
4. ベジファーストからオイルファーストへ
「食事の最初に野菜を食べると健康に良い」というベジファーストの考え方も、最新の基準からは削除されました。理由は、根拠となる研究で野菜と一緒に大量のオリーブオイルが使われていたためです。つまり効果を生んでいたのは野菜ではなく油だったのです。山田氏は「油を摂取することで基礎代謝が1日300キロカロリーも増える」と紹介し、ダイエットにも効果的だと強調します。こうした観点から「ベジファースト」ではなく「オイルファースト」こそが現代的な食事法だと位置づけられています。
21世紀型の栄養学へ
20世紀の栄養学は観察研究に依存していたため、因果関係を誤解したまま定説となったケースが少なくありません。例えば「油摂取が多い国ほど心臓病が多い」とされた研究は、後に正しくは無関係であることが判明しました。21世紀の栄養学は無作為比較試験に基づく科学的根拠によって進化しており、その成果が糖質制限や脂質重視の食事法につながっています。堀江氏が語るように「おいしい食事と健康は両立する」時代に移行しているのです。
[出典情報]
このブログは人気YouTube動画を要約・解説することを趣旨としています。本記事では堀江貴文氏のチャンネルに公開された以下の動画を要約したものです。
[出典情報]
このブログは人気YouTube動画を要約・解説することを趣旨としています。本記事では堀江貴文氏のチャンネルに公開された以下の動画を参照しました。
糖質疲労 解説動画 / カロリー制限の誤解 講義 / 栄養学アップデート 解説
読後のひと考察──事実と背景から見えてくるもの
本稿では、「食後の眠気=血糖」「血糖スパイクの危険性」「脂質の善悪」「食べる順番(ベジファースト)」「“カロリーより血糖”」といった広く流通する見解を、第三者の信頼できる資料に基づいて点検します。各テーマは栄養学・疫学・ガイドラインでの位置づけが異なるため、前提条件、適用範囲、限界を分けて検討し、実装上の現実解を整理します。
食後の眠気は血糖だけでは説明できない
食後の眠気(postprandial somnolence)は、糖質量だけで決まる単一因子現象ではありません。食事全体の量や脂質・タンパク質の配分、消化管ホルモンと自律神経、概日リズム、睡眠不足など複合要因が関与します(Frontiers in Nutrition, 2022;Current Opinion in Endocrine and Metabolic Research, 2021)。したがって「眠気=糖質過多」と短絡せず、摂取量・時間帯・前夜の睡眠・全体の食事質を含めた多因子で理解する方が妥当です。
血糖値スパイクと酸化ストレスの関連
急峻な血糖変動(血糖スパイク)は、酸化ストレスや内皮機能障害を介して心血管疾患リスクと関連する可能性が報告されています(JAMA, 2006;Diabetes Care, 2009)。ただし、これらは観察研究が中心であり、因果関係の確定には限界があります。個々人のリスクは血圧・脂質・喫煙・運動など複数要因で規定されるため、血糖変動のみを唯一の健康指標とするのは過度です。
東アジア人における糖尿病リスクの特徴
東アジア人は同じBMIでも体脂肪率や内臓脂肪が高く、発症初期からβ細胞機能低下(インスリン分泌不足)の寄与が大きい傾向が示されています(Annals of the NY Academy of Sciences, 2013;Current Diabetes Reports, 2015)。「痩せていても糖尿病になりやすい」という現象の背景として、早期スクリーニングと身体活動の確保の重要性が強調されています。
ベジファースト(食べる順番)の位置づけ
食物繊維やタンパク質・脂質を先に摂り、炭水化物を後に摂取する食事順序は、短期的に食後血糖・インスリン応答を抑制し得る小規模試験があります(Diabetes Care, 2015;Nutrients, 2020)。しかし、日本の公的基準(厚生労働省, 2025)は栄養素・食品群ベースの設計であり、「食べ順」を一般原則として推奨しているわけではありません。血糖対策の一手段として活用しつつ、総エネルギー・食品選択・運動との併用が現実的です。
脂質摂取の焦点は「量」より「質」
WHOは、総脂質≦30%、飽和脂肪酸(SFA)<10%、工業的トランス脂肪酸(TFA)は1%未満を推奨しています(WHO, 2023)。飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸(PUFA)へ置き換えると、心血管イベントが減少する可能性が報告されています(Circulation, 2017;Cochrane Review, 2020)。ただし、脂質は高エネルギー密度で過食を助長しやすいため、量と置換先の両方に注意が必要です。
揚げ物や高塩食品の健康影響
脂質やタンパク質を含む料理は食後血糖を緩やかにすることがありますが、揚げ物を週4回以上摂取する群では2型糖尿病および心血管疾患リスク上昇が報告されています(観察研究)(AJCN, 2014;Heart, 2021)。また、高食塩食は血圧上昇・心血管リスクの要因であり、WHOは1日5g未満を推奨しています(WHO, 2025)。加工肉の常食は大腸がんリスク増と評価されています(IARC, 2015)。
果糖・自由糖・果物の違い
自由糖(添加糖など)は総エネルギーの10%未満、できれば5%未満に抑えることが推奨されています(WHO, 2015;CDC, 2024)。一方、果物そのものの摂取は2型糖尿病リスク低下と関連し、果汁では逆の関連が見られます(BMJ, 2013)。糖の「種類」「形態(食物繊維含有)」に注目し、総糖量だけで評価しない視点が重要です。
カロリーと血糖は両輪で考える
体脂肪減少には、持続的な負のエネルギー収支が必要という立場が確認されています(AJCN, 2022)。低脂肪食と低糖質食を比較した12か月のRCTでは体重減少に有意差はなく、どちらも食事の質改善とエネルギー制限を通じて減量しています(JAMA, 2018)。つまり、食後血糖の安定化は有効な補助軸でありつつ、エネルギー管理を軽視することはできません。
「油で代謝が上がる」説の再検討
食事誘発性熱産生(TEF)はおおむね、タンパク質20–30%、炭水化物5–10%、脂質0–3%とされています(Nutrition & Metabolism, 2004;NASEM, 2023)。脂質摂取で代謝が数百kcal単位で恒常的に上昇するという一般化は、生理学的に根拠が薄いと考えられます。むしろ、脂質の高エネルギー密度による過食リスクに留意すべきです。
和食・主食の再設計と血糖管理
白米など高GI主食は品種・調理・食物繊維・タンパク質の組み合わせで血糖変動を抑制し得ます(AJCN, 2021)。ただし、食品選択はGI/GLだけでなく、塩分(WHO, 2025)や加工肉(IARC, 2015)などの要素も考慮が必要です。厚生労働省の指針(2025年版)も総合的な最適化を前提にしています。
単一指標への偏重が生むリスク
血糖スパイク抑制のみを絶対視すると、脂質・塩分・体重・がんリスク・QOL・文化的背景を無視した過度な食排除を招くおそれがあります。国際・国内の指針は栄養素バランス・食品群・生活習慣の総合最適を基礎としており(WHO, 2023;厚生労働省, 2025)、個別の工夫(食べ順・低GI・運動など)はこの枠組みの中で整合的に使うことが望まれます。
まとめ:何を優先し、何を置き換えるか
自由糖の抑制、飽和脂肪酸のPUFAへの置換、主食・食物繊維・タンパク質の組み合わせ、塩分と加工肉の制限、そして総エネルギーと身体活動の両立が、科学的に裏付けられた中核原則です。短期の血糖応答よりも、長期アウトカムと文化的実装を両立する方向で、各自が継続可能な最適解を探ることが重要と考えられます。