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日本のホラーが世界で注目される理由とは?荒井氏×堀江氏が語るホラービジネスの最前線

ホラービジネスの新潮流

荒井ジョースケ氏は、ホラーを単なる娯楽ではなくビジネスとして真剣に捉えています。同氏が率いる「株式会社闇」は、独自の発想と体験設計によって、これまでにないホラーコンテンツを次々に生み出してきました。その背景には、恐怖をエンターテインメントとして昇華させると同時に、社会的なコミュニケーションやマーケティングの武器に変えるという明確なビジョンがあります。

1. 株式会社闇とユニークな事業展開

株式会社闇は、その社名からして異彩を放っています。公式サイトは「一人では見られない」と評されるほど恐怖演出が徹底され、コーポレートブランディングの一環として話題を集めています。同社が手がける事業は大きく分けて二つあります。ひとつは自社IPのプロデュースで、映像作品やゲーム、展覧会といったオリジナルコンテンツを制作・展開することです。もうひとつはクライアント向けのPR支援で、ここでは従来の広告手法を超える独自のマーケティングアプローチが導入されています。

荒井氏が提唱する「ビジネスホラー」という概念は、ホラーを経済活動に結びつける姿勢を象徴しています。単に恐怖を与えるのではなく、恐怖体験を通して人々の心に残る価値を生み出す点に重きが置かれているのです。

2. トラウママーケティングの発想

同社の代名詞ともいえるのが「トラウママーケティング」という手法です。これは、恐怖体験と広告を結びつけ、強烈な印象を残すことでブランド認知を高めるものです。例えば「絶叫する喉にも流角さん」というプロモーションでは、来場者がお化けに驚いて悲鳴をあげた直後に喉飴を配布する仕掛けが導入されました。単純に街中で配るよりも、体験と結びついた方が記憶に残るという狙いです。

恐怖は本能に訴えかける感情であり、他の広告表現に比べて強い残存効果を持ちます。荒井氏はこれをマーケティングに応用し、単なる消費活動にとどまらず、人々の心に長く刻まれる「体験型PR」を実現させています。

3. 体験型展覧会「行方不明展」とその反響

同社の代表的な取り組みのひとつが、東京・日本橋で開催された「行方不明展」です。この展覧会は従来のお化け屋敷のように驚かせる仕組みを用いるのではなく、来場者の想像力を刺激することで恐怖を生み出しました。展示物や写真、キャプションを追っていくうちに、気づけば「行方不明」という不穏なキーワードが浮かび上がり、体験者それぞれの解釈によって異なる恐怖が立ち現れる仕組みになっています。

このユニークな演出はSNSで話題を呼び、最終的に7万人を動員しました。来場者が「何が起きたのか分からない」という感覚を共有し合うことで、口コミが自然発生的に広がっていったのです。荒井氏はこれを「脳がバグる体験」と呼び、恐怖を再現するのではなく、むしろ人間の脳の思い込みや錯覚を利用して想像を暴走させることに面白さがあると語っています。

この考え方は「恐怖は想像力の産物である」という日本的ホラーの本質とも重なります。あえて答えを与えず、観客に解釈を委ねることで、より深い没入感と恐怖体験を提供しているのです。

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日本文化が生んだJホラーの魅力

ホラーは世界各地に存在しますが、日本のホラーは独特の進化を遂げてきました。荒井氏と堀江氏の対談では、その背景にある日本文化の特性と、海外で高く評価される理由が浮き彫りになっています。恐怖の表現方法が暴力や流血に依存する西洋型と異なり、日本型は想像力に訴える点に強みがあるとされています。

1. 妖怪文化とホラーの関係

日本のホラーを語る上で欠かせないのが妖怪文化です。古来より日本人は、自然現象や日常の不具合を「妖怪」として擬人化し、物語化してきました。例えば病気や災害といった説明の難しい出来事も、妖怪の仕業と捉えることで理解しようとしたのです。この「擬人化」の文化は、恐怖をキャラクター化して身近に感じる素地をつくり出しました。

現代のアニメやゲームにおけるキャラクタービジネスにも、この系譜が色濃く反映されています。妖怪ウォッチのように大衆化した作品もあれば、ホラー要素を前面に出すものまで、多様な展開が可能となっているのです。

2. 想像力に訴える恐怖の仕組み

日本型ホラーの特徴は、観客の想像力を利用する点にあります。リングのような代表作に見られるのは、血や暴力ではなく「呪い」や「念」といった目に見えないものを恐怖の源泉とする手法です。直接的な脅威を描かず、静かな演出の中でじわじわと恐怖を感じさせる構成は、見る者の脳に強烈な印象を残します。

荒井氏も、恐怖とは「脳がバグる体験」だと説明しています。人間の脳は実際に見ていないものを補完して映像を作り出すため、幻覚のように幽霊を「本当に見た」と信じてしまうのです。つまり、恐怖体験は外部から与えられるものではなく、観客自身の想像によって増幅されていく仕組みだと言えます。

3. 海外から高く評価される理由

西洋ホラーが「血しぶき」や「怪物の襲撃」を前提とするのに対し、日本のホラーは「何も起きない時間」さえも恐怖に変える力を持っています。この差異こそが、海外市場でJホラーが注目される理由です。リングや呪怨がハリウッドでリメイクされ、桁違いの興行収入を生んだことはその象徴です。

堀江氏は、日本のホラーが持つ文化的独自性を「かわいい文化以上に輸出可能な要素」と位置づけています。妖怪や怪談といった伝統的モチーフに基づく物語は、他国には存在しない世界観を提示できるため、グローバル展開において強力な競争力を持つと考えられるのです。

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漫画・ゲームから広がるホラーIPの可能性

ホラーの魅力は映画や展覧会にとどまりません。漫画やゲームといったメディアも、恐怖を表現する強力な手段として注目されています。荒井氏と堀江氏は、日本のクリエイターの多くが漫画に集中している現状を指摘しつつ、ホラー分野に優秀な人材を呼び込むことで新たな展開が可能になると語っています。

1. 漫画に集中するクリエイターの存在

日本の優秀なクリエイターの多くが漫画に流れる理由は、一人でも制作が可能な環境にあります。デジタルツールやAIによる背景生成が普及し、アシスタントを必要とせずに作品を完成させられるようになったため、若い才能が自然と漫画に集まっているのです。結果として、映像やホラーに挑戦する人材が不足しがちであり、ドラマの原作が漫画に偏る現状を生んでいます。

堀江氏は、この構造を逆手にとり、漫画で活躍するクリエイターをホラーに誘致することが重要だと指摘します。恐怖を描くこと自体が創作上の楽しさを伴うため、適切な環境を整えればホラーは次の成長分野になり得るという考えです。

2. ゲームが生む新しいホラー表現

ホラーゲームもまた、新しいIPを生み出す可能性を秘めています。バイオハザードサイレントヒルといった大規模タイトルは世界的に成功しましたが、近年はインディーゲームの台頭が顕著です。少人数で開発された作品が映画化され、国際映画祭に出品されるケースも増えています。

荒井氏は、個人規模で制作できるインディーゲームがホラーと相性が良いと見ています。体験型でありながら低予算でも制作可能で、さらに世界中に配信できるため、漫画や映画に並ぶ新たなIP創出の場として期待されています。ゲーム原作のホラー作品が、次世代のリングや呪怨のような存在になる可能性も十分にあるのです。

3. 世界市場を意識したIP戦略

今後のホラービジネスにおいて重要なのは、国内市場にとどまらず、初めから海外展開を視野に入れることです。荒井氏は、映画や漫画、ゲームのレーベルを立ち上げ、総合的にIPをプロデュースする計画を語っています。単なる一作品で終わらせず、キャラクターや物語を拡張し、グッズやイベントへと展開していくことが目標とされています。

堀江氏もまた、世界配信を前提とした予算設計の必要性を強調しました。現在のハリウッド市場では、日本のホラーがリメイクされて巨額の収益を生んでいますが、これは裏を返せば日本が自らチャンスを逃していることを意味します。漫画やゲームを起点にしつつ、自国発のIPを世界へ直接届ける仕組みを築くことが、次なる課題だと言えるでしょう。

お化け屋敷からイマーシブ体験へ

お化け屋敷は日本の夏の風物詩として親しまれてきましたが、ビジネスとしてみると収益性に課題があると指摘されています。荒井氏と堀江氏は、この伝統的なホラー体験をアップデートし、世界市場に通じる「イマーシブ体験」として再構築する可能性について議論しています。

1. お化け屋敷が抱える収益構造の課題

従来のお化け屋敷は入場料1000円程度が主流で、体験時間も10分前後と短いのが一般的です。そのため、多くの観客を動員しても収益は限定的で、大規模な投資を回収しづらい構造になっています。日本国内では会場面積も小規模にとどまることが多く、ひと夏限定のイベントとして終わってしまうケースも少なくありません。

荒井氏は、これを単なる「お祭り的アトラクション」にとどめている点が問題だと見ています。映画が2時間で2000円を取れるのに比べ、お化け屋敷が低価格に固定されているのは、文化的な価値が十分に認められていないからだという指摘です。

2. 世界一怖いイマーシブ体験の構想

対談では、単なるお化け屋敷ではなく「イマーシブ恐怖体験」として発展させる構想が語られました。イマーシブとは観客が物語世界に没入し、自ら登場人物として体験できる形式を指します。この形式は海外で人気を博しており、ホラーと組み合わせることで最も強力な体験型コンテンツになると見られています。

堀江氏も「世界一怖いお化け屋敷」をつくればインバウンド需要を呼び込めると期待を示しました。京都や忍者村のような観光資源と組み合わせれば、日本文化と恐怖体験を融合させた新しい観光コンテンツとして成立する可能性があります。さらにVRやAR技術を導入すれば、より革新的な恐怖体験を提供できる余地も広がります。

3. 地方創生とホラー観光の可能性

ホラー体験は地方創生の観点からも注目されています。日本各地には心霊スポットや怪談にまつわる土地が存在し、それを観光資源として活用できる余地が大きいのです。水木しげるロードや松江のラフカディオ・ハーンに代表されるように、ホラー文化を観光の柱に据える事例も既にあります。

荒井氏は、エンターテインメントとしての立場を保ちながらも、地域の伝承や怪談と結びつけることで強力な観光資源になると考えています。例えば犬鳴峠を題材にした映画「犬鳴村」が話題になったように、フィクションとしてのホラーが地域への関心を高める効果を持つのです。地元と連携しながら物語を設計すれば、日本独自の「ホラー観光」が成立する可能性は十分にあるといえます。

ホラーは不気味さや恐怖だけでなく、人々を引き寄せる強い吸引力を持っています。これを日本ならではの観光やエンターテインメントに昇華させることができれば、世界に誇る新しいカルチャーとして発展するのではないでしょうか。

[出典情報]

このブログは人気YouTube動画を要約・解説することを趣旨としています。本記事では荒井氏×堀江氏による「お化け屋敷は儲からない?ホラーのビジネスを考える」を要約したものです。

読後のひと考察──事実と背景から見えてくるもの

本稿で取り上げる「ホラー表現をビジネスに応用する」という視点は、近年の創造産業の拡大と密接に関係しています。国連貿易開発会議(UNCTAD)の報告によると、文化・クリエイティブ産業は世界GDPの約3.1%を占め、雇用と輸出の両面で存在感を高めています(UNCTAD 2022)。ユネスコの政策レポートも、創造経済が各国の成長戦略に統合されつつある現状を報告しています(UNESCO 2022)。

日本でも、経済産業省が2025年に発表した資料において、エンタメ・クリエイティブ分野は成長の柱として位置づけられています(経済産業省 2025)。こうしたマクロ的な潮流の中で、ホラーはその一分野に過ぎないものの、「強い情動を引き出す」という特性から、広告・観光・体験型エンタメなど複数領域に応用可能な要素を持ち合わせています。

恐怖訴求と記憶定着:心理学的メカニズムと限界

恐怖が記憶の定着を強化するという主張には、神経科学的な裏づけがあります。情動記憶の形成には扁桃体と海馬の協働が重要であり、恐怖刺激が記憶符号化を強化するという実験的知見が報告されています(LaBar & Cabeza, 2006)。

しかし、マーケティング領域では「恐怖の強度」だけでは効果が持続しないことも示されています。メタ分析では、脅威を提示する際に「行動可能な解決策」や「自己効力感」を同時に伝えることが説得力を高める条件だと整理されています(Tannenbaum et al., 2015)。同様に、Extended Parallel Process Model(EPPM)に基づく研究では、脅威だけを強調すると防衛的回避反応が生じることが確認されています(Witte, 1992)。したがって、恐怖を「記憶のトリガー」として活用する場合も、効力感の設計が伴って初めて安定した効果を発揮します。

日本発ホラーの様式──曖昧性と文化的文脈

日本のホラー作品では、露骨な暴力表現よりも「見えないもの」や「暗示」が恐怖を生む構造が特徴とされます。この様式については、曖昧性と民俗的モチーフ(妖怪・幽霊譚)を通じて現代社会の不安を表現する手法が国際的な受容を得たとする分析が示されています(Sarkar, 2023)。

ただし、こうした文化的暗示の強い表現は、他地域では意味が変容する可能性があります。ローカライズの研究でも、言語だけでなく演出・UI・禁忌の扱いなど多層的な調整が求められると報告されています(早稲田大学 研究論文)。国際展開を視野に入れる場合、文化差を尊重しながら「普遍的な不安」への接続を模索することが課題となります。

体験型コンテンツの経済設計──演出強度よりも運営モデル

ホラーを含む体験型エンタメの収益構造を見ると、短期・低単価型では投資回収が難しいという課題が指摘されています。Themed Entertainment Association(TEA)とAECOMの共同調査によると、主要テーマパークでは動的価格制やデジタル予約などを組み合わせ、滞在時間と客単価の最適化を図る傾向が強まっています(TEA/AECOM 2023)。

また、VRやARを活用したロケーションベース体験市場は今後も拡大が見込まれ、PwCなどの調査でも企業投資の増加が予測されています(PwC 2024)。ただし、MarketsandMarketsなどの民間推計値は予測幅が大きいため、複数ソースを突き合わせて判断することが望ましいでしょう。

観光・地域活性と倫理──恐怖を「資源」とする際の境界

観光庁とJNTOのデータによれば、2025年の訪日外国人旅行者数は四半期ベースで過去最高を記録しています(JNTO 2025)。しかし、都市部での混雑やマナー問題など、オーバーツーリズムの課題も顕在化しています(Financial Times 2025)。

こうした状況下で、恐怖や不安を活用した観光プロモーションを行う際は、倫理基準の遵守が不可欠です。英国の広告基準局(ASA)は「不当な恐怖訴求」を禁止し、年少者や脆弱層への配慮を求めています(ASA CAP Code 4章)。地域社会と協働して体験設計を行う場合には、住民合意・苦情対応・SNS拡散ルールなどを含む「ソーシャル・ライセンス」を確保することが前提となります。

おわりに──「強い体験」を社会に実装するために

恐怖は人間の注意と記憶を引きつける強力な要素であり、創造産業のなかでも独特のポテンシャルを持ちます。とはいえ、その活用は「脅威 × 効力感」の設計、価格と回遊性の運営モデル、地域社会への配慮という三層のバランスの上に成り立ちます。ホラー表現を単なる刺激として消費するのではなく、文化的・倫理的責任を伴う「体験の設計」として位置づける視点が、今後の創造経済に求められていくでしょう。恐怖をどこまで「想像に委ね」、どこからを「説明責任」として社会に提示するのか――その線引きこそ、今後の検討課題として残ります。

出典一覧