ひろゆきが示す幸せの条件
1. お金で幸せを追い求める限界
ひろゆき氏は新刊『貧しい金持ち豊かな貧乏人』の中で、「お金がなければ幸せになれない」という前提そのものを疑うべきだと強調しています。彼によれば、日本では物価上昇と実質賃金の低下が長期的に続いており、多くの人にとって収入の改善は見込みづらい状況です。この前提を無視して「お金が増えれば幸せになれる」と考え続ける限り、むしろ不幸が拡大すると指摘しています。
さらに、お金で満たされる幸せは限界があるとも語られています。高級車やタワーマンションといった「欲望の象徴」は確かに魅力的ですが、それを手に入れたからといって持続的な幸福感が保証されるわけではありません。むしろ「持たないことで失わない幸せ」が存在することを見落としてはいけないと論じています。
2. 過処分所得が減り続ける現実
議論の背景にあるのは、日本人の家計が置かれている厳しい現実です。実質賃金は40カ月近く下落を続け、物価上昇が賃金増加を上回っているため、可処分所得は確実に目減りしています。ひろゆき氏はこれを「雨が降っているのに文句を言っても仕方がない状況」に例え、個人の努力では覆せない環境変化であると説明しました。
そのため、「もっと稼ごう」「投資で増やそう」といったアプローチは一部の人にとって有効でも、多数派の生活を救う解決策にはなり得ません。現実として、多くの人が資産形成に失敗し、損失を抱えるリスクが大きいからです。ここにおいて氏は、投資を「多数の庶民にとって無意味」と切り捨て、むしろ生活全体の設計を変える必要性を強調しました。
3. 投資では救えない多数派の暮らし
投資は本来、余裕資金を持つ人がリスクを取って行うものです。しかし平均的な収入層では、余剰資金を確保するだけでも難しいのが現実です。ひろゆき氏は「金のない人が投資をしても無意味」と述べ、投資神話に惑わされない姿勢を求めています。むしろ投資に希望を託すことで、かえって生活が不安定化する危険性があるのです。
一方で、同氏は「お金を持たなくても幸せに暮らす方法」に焦点を当てています。これは単なる精神論ではなく、消費の仕方や人間関係の選び方など、実践可能な生活設計によって導き出されるものです。彼の主張の核心は、幸せの源泉を「お金の多寡」から「生活の工夫」へと移すことにあります。
こうした視点は、多くの人が「もっと稼がなければ」と焦る現代社会において、大きな価値を持つのではないでしょうか。お金を増やすことではなく、使い方と向き合うことこそが、幸せに直結する選択肢であると示されています。
持ち家と賃貸、どちらが得か
1. 多数派は「買わない方が得」になる理由
ひろゆき氏は、一般的な庶民にとっては持ち家を買わない方が経済的に得だと明言しています。都内でマンションを購入しようとすれば軽く1億円を超えますが、その価格帯に手が届く人はごく少数です。結果として多くの人は、埼玉や千葉の郊外に住宅を購入することになります。しかし、そうした地域は長期的に地価が下落していく傾向が強く、数十年後には大きな資産価値の減少が避けられません。
例えば4,000万円で購入した物件が、30〜40年後には半分以下の価値に下がる可能性も高いといいます。このように地価が下がる地域で持ち家を購入するのは「資産形成」ではなく「資産減少」に直結するリスクがあると指摘されています。
2. 賃貸生活で資産を守る方法
一方で賃貸の場合、同じ広さ・条件の住宅なら持ち家に比べて毎月のコストを低く抑えられる傾向があります。ひろゆき氏は「賃貸の方がむしろお金を貯められる」と述べ、住宅ローンに縛られることなく現金を手元に残す方が得策だと説明しました。
老後の不安についても、氏は「現金を持っていれば高齢になってから地方で家を買えばいい」と解決策を提示しています。つまり、働き盛りのうちは高騰する都心の不動産を無理に購入するのではなく、流動性を確保することこそが合理的だという考え方です。
また、賃貸でお金が貯まらないと感じる人については「本来の収入に見合わない物件に住んでいるだけ」と指摘しました。家賃に収入の半分近くを投じてしまえば、当然ながら貯蓄は難しくなります。大切なのは分相応の暮らしを選ぶことです。
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3. ローンが人生を縛るリスク
持ち家を購入する最大の問題は、住宅ローンが人生を縛る点にあります。ローンを背負った途端、働き方や住む場所の自由度が大きく制限されます。例えば、東京で働きながら郊外に家を買った場合、転職や地方移住といった選択肢は極めて狭まります。結果として「より高収入でないと返済できない」というプレッシャーに縛られ、人生の柔軟性を失うのです。
さらに比較対象として誤解されやすいのが「ダブルインカム世帯」との違いです。共働きで世帯年収2,000万円あれば都心に家を買えるかもしれませんが、単独の収入で同じことを目指すと無理があります。この点を混同すると、同僚が持ち家を買ったのに自分は買えないという不必要な劣等感につながってしまいます。
総じて、地価が下がる地域の住宅を無理に買うよりも、賃貸で柔軟性を維持しながら資産を守る方が合理的だと結論づけられます。住宅ローンは「安心」ではなく「縛り」であるという視点を持つことが重要です。
人間関係とお金のバランス
1. 飲み会や年賀状をやめるメリット
ひろゆき氏は「嫌われてもいい」と割り切ることで生活コストを大きく下げられると語っています。典型的な例が会社の飲み会や年賀状のやり取りです。本人にとって行きたくもない飲み会に毎月参加し続ければ、数十年単位で大きな支出となります。年賀状やお歳暮といった慣習も同様で、惰性で続ければ出費は積み重なります。
こうした人付き合いのコストを削減することで、自由な時間と資金が生まれます。結果として、自分にとって本当に価値のある活動にリソースを割けるようになるのです。ひろゆき氏は、社交的でない人が無理に「好かれる努力」をする必要はないと指摘しました。
2. 結婚式に潜む「高額な義理」の負担
飲み会以上に家計を圧迫するのが結婚式です。ご祝儀は1回あたり3万円前後が相場で、シーズンが重なると数十万円が出ていくこともあります。さらに年齢を重ねるほど後輩や部下の結婚式が増え、負担は拡大していきます。
ひろゆき氏は「結婚式に行くべきではない派」と述べ、義理や建前で参加することの非合理さを強調しました。確かに、上司や同僚との関係を維持する場として一定の意味はあるものの、それが将来の雇用や安定を保証するわけではありません。むしろ、大企業のリストラなどではどれだけ尽くしても切り捨てられる現実があります。
3. 嫌われても得られる自由と節約
人間関係のコストを減らす最大の障壁は「嫌われたくない」という感情です。しかしひろゆき氏は、そのために払う金額が本当に自分にとって得なのかを問うべきだと指摘しました。自分の感情を整理できれば、無理に付き合う必要はなくなり、その分の費用を節約できます。
重要なのは、人間関係を一切断つことではありません。仲の良い友人や心から祝いたい相手との関わりは続けるべきですが、「行きたくないのに断れない」という状況をなくすことです。嫌われるリスクを受け入れることで、時間とお金の自由度が飛躍的に高まります。
つまり、無駄な義理に縛られず、自分にとって本当に必要な人間関係を選び取ることが、経済的にも精神的にも豊かに生きるための秘訣だといえます。
東京を離れて豊かに暮らす選択肢
1. 地方で得られる経済的メリット
ひろゆき氏は、東京近郊で無理に持ち家を購入するよりも、地方に移住することで生活コストを下げられると指摘しています。地方では土地や家賃が安く、広い住居で子育ても容易です。さらに物価も抑えられているため、同じ収入でも可処分所得を増やせる可能性があります。加えて、近年は人手不足が深刻化しているため、地方では比較的安定した雇用が得やすい状況もあります。
特に家族を持つ人にとって、地方移住は現実的な選択肢になり得ます。広い家で子どもを育てられる環境は、経済的なメリットだけでなく精神的な余裕ももたらすと強調されました。
2. 移住先選びの成功と失敗
もっとも、地方移住には成功と失敗の分かれ道があります。新参者を受け入れる体制が整っている自治体では、同じように移住してきた仲間が多く、都会の感覚を共有できるため、生活はスムーズになります。一方で、伝統的なルールや地域の慣習が強い場所では、消防団や自治会活動などに強制的に参加させられることもあり、息苦しさを感じる人も少なくありません。
ひろゆき氏は「先に移住者が根付いている地域を選ぶべき」と助言しています。パイオニアとして孤立するのではなく、既に受け入れ態勢ができている場所を探すことが、移住成功の鍵になるというわけです。
3. 幸せに死ぬための暮らし方
地方移住の意義は、単なる生活費の削減にとどまりません。ひろゆき氏は「幸せに死ぬ」ことを基準に考えるべきだと語っています。都心で高収入を得ても独身で孤独に老いるより、地方で家族や子どもに囲まれて暮らす方が人生全体の幸福度は高まるというのです。
特に地方では、親世代と同居したり、近隣住民と協力しながら子育てをする環境が整っており、社会的なつながりも強化されます。これは都会の狭い住宅事情では得にくい安心感であり、人生の最期を豊かにする大きな要素だといえます。
こうした視点から、東京に住むことを前提にせず「どこで、どのように暮らすか」を柔軟に選び直すことが、真の豊かさにつながるのではないでしょうか。
変わる世界とお金の価値
1. トランプ政権以降の不安定な時代
ひろゆき氏は、投資で安定的に資産を増やす時代は終わったと指摘しています。その転換点となったのがトランプ政権以降の世界情勢です。ロシアとウクライナの戦争、ガザ地区の紛争、インドとパキスタンの対立など、大国同士の衝突が相次ぎ、国際社会の安定性が大きく揺らいでいます。このような状況では、市場も不安定化し、投資で確実に利益を得るのは難しくなっています。
安定した国際秩序の中でこそ、庶民が投資の恩恵を受けられました。しかし乱世とも呼べる現代では、その仕組みが崩壊しつつあると警告しています。
2. 投資が難しくなるグローバル構造
構造的な変化の背景には、発展途上国の台頭があります。ネットの普及によって、かつては先進国にしかできなかった仕事を途上国の人材が担えるようになり、所得格差の是正が進んでいます。地球全体で見れば富の再分配としてプラスですが、先進国の中間層にとっては仕事や所得の低下につながる現象です。
こうした環境では、「投資すれば報われる」という従来の前提は崩れています。庶民がリスクを取って投資に踏み出しても、むしろ損失を被る確率が高まっているのです。
3. 乱世で生き残るための発想
不安定な時代において、ひろゆき氏は「お金と幸せを切り離す」発想が必要だと訴えています。投資や給与の増加に依存するのではなく、生活コストを抑え、無駄な支出を削り、地方移住や働き方の柔軟性によって幸せを確保することが重要だという立場です。
つまり、世界経済の変動に左右されない「小さな豊かさ」を積み上げることが、乱世を生き抜く術だと強調しています。将来の不安に振り回されるのではなく、今できる選択を合理的に重ねることこそが、確かな幸せにつながるのではないでしょうか。
[出典情報]
このブログは人気YouTube動画を要約・解説することを趣旨としています。本記事ではReHacQ(リハック)チャンネル「【ひろゆきvs投資論】時間vsお金の最適化は?【vs ReHacQ高橋弘樹】」を要約したものです。
読後のひと考察──事実と背景から見えてくるもの
本稿では、「お金と時間の最適化」「投資の是非」「住まいの選択」「人間関係のコスト」「地方移住」といった生活設計に関する一般的な主張を、第三者の統計や研究成果に基づいて検証します。数値を踏まえて確認すると、一見単純に見える結論にも修正が必要な場合があることが分かります。(OECD Employment Outlook 2025)
「お金と幸せ」の関係──単純化を避ける視点
お金が幸福に与える影響については、研究によって異なる知見が示されています。2010年の研究では、高所得は人生全体の評価を押し上げるが、日常的な感情的幸福は一定水準で頭打ちになるとされました(Kahneman & Deaton, 2010)。一方、2021年の大規模調査では、所得が増えるにつれて日常的幸福も対数的に上昇し続けると報告されています(Killingsworth, 2021)。さらに2023年の共同研究では、「最も不幸な層では上昇が鈍化するが、大多数では増加が続く」と折衷的な結論が示されました(Kahneman, Killingsworth & Mellers, 2023)。
つまり「お金では幸せになれない」や「お金さえあれば幸せになれる」といった断定的な言説は、実証研究の全体像を反映していないことが分かります。経済的余裕が安心感や選択肢を広げる効果を持つ一方で、健康や人間関係など金銭で得にくい要素が幸福に強く影響する点も無視できません。
実質賃金と可処分所得──局面ごとの変動を直視
日本の実質賃金は、近年低下が続く局面がありました。2025年6月には前年同月比▲1.3%で6カ月連続の減少が報じられています(Reuters, 2025/8/5)。しかし翌7月には前年比+0.5%と改善が確認されており(Reuters, 2025/9/4)、動きは一方向ではありません。OECDも、2024〜2025年にかけて各国の実質賃金が回復傾向にあるが、依然としてパンデミック前水準を下回る国もあると指摘しています(OECD, 2025)。
したがって「減り続けている」と断定するより、「低下傾向が続く時期もあるが、直近では改善の月も見られる」と表現するのが適切です。厚労省の毎月勤労統計(MHLW)を参照し、名目賃金・物価・実質賃金をあわせて確認することが前提条件の検討に有効です。
「投資は無意味」か──長期リスクプレミアムの存在
「庶民にとって投資は無意味」との主張は、短期の不確実性を強調する立場に基づいています。しかし長期の統計では、株式・債券は現金よりも高いリターンを示し続けてきました。UBSとロンドン・ビジネス・スクールによる年次レポートは、100年以上のデータに基づき株式の超過収益を整理しています(UBS Yearbook 2024)。MSCI Worldのような分散指数も、変動を繰り返しつつ長期では成長してきたことが確認できます(MSCI)。
もっとも、誰にでも投資が適切とは限りません。緊急資金が不足していたり、短期で現金化が必要な場合はリスクが大きくなります。「投資は有効か無意味か」という二分法ではなく、家計の余裕資金や投資期間を踏まえた上で適否を判断することが求められます。
持ち家か賃貸か──地域差とライフステージの影響
住宅の経済性は地域差が大きく影響します。国土交通省の統計では、都市部の地価は回復傾向を示す一方、人口減少地域では下落リスクが強まることが報告されています(MLIT, 2024年度)。IMFの分析でも、人口動態が住宅価格に強く作用し、人口減少地域では資産価値の維持が難しいと指摘されています(IMF, 2020)。
賃貸は流動性と柔軟性を提供する一方、持ち家は安定性と将来的な家賃上昇耐性をもたらします。ただし住宅ローンは家計を金利・所得・資産価格の変動に晒すため、日本銀行も金融システム全体への影響を注視しています(BOJ, 2024)。どちらが合理的かは一律に決められず、地域の人口動態・居住年数・将来の転居可能性を踏まえて判断することが必要です。
人間関係のコスト──金額と価値の二面性
飲み会や儀礼費の削減は節約効果をもたらしますが、交際費は家計全体に占める割合としてはそれほど大きくないこともあります。総務省の家計調査(家計調査 月次)では、消費支出に占める交際費や娯楽費の比率を確認できます。
一方で、人間関係の維持は金銭的支出以上の価値を持ちます。雇用機会や地域の支援ネットワークは、節約では得られない安心をもたらします。削減一辺倒ではなく、どの関係を維持し、どの出費を見直すかを見極めることが、現実的で持続可能な選択といえるでしょう。
地方移住──コストと機会の総合判断
地方移住は、住居費や生活費を下げられる一方、雇用や教育機会の制約が生じる場合もあります。完全失業率や有効求人倍率は全国的に低位安定していますが(直近の求人倍率はおよそ1.2倍、JILPT)、東京圏への転入超過は拡大傾向にあり(人口移動報告 2024)、大都市の魅力は根強いです。
ただし、地域間価格差指数(総務省)を見ると、地方の物価は都市より低い傾向があり、可処分所得の実感を高めやすい点は事実です。したがって地方移住の評価は、住居費の安さだけでなく、収入水準・移動コスト・医療や教育環境・地域社会との適合性を含めた総合的判断が必要です。
不確実性の時代と家計戦略──分散と持続可能性
地政学リスクや金利変動は市場の不安定要因となりますが、長期データは分散投資と時間分散によってリスク調整後リターンを得られることを示しています(UBS Yearbook 2024/Annual Review 2024)。
家計にとって最も重要なのは「破綻を避ける」ことです。緊急資金や保険を整えた上で、余裕資金を投資に回すという順序は揺るぎません。お金を道具として生かしつつ、お金に依存しない生活設計を組み合わせることが、持続的な豊かさにつながると考えられます。
出典一覧
- OECD Employment Outlook 2025: Country Notes – Japan
- Kahneman & Deaton (2010), PNAS
- Killingsworth (2021), PNAS
- Kahneman, Killingsworth & Mellers (2023), PNAS
- Reuters (2025/08/05): Japan’s real wages fall for 6th month
- Reuters (2025/09/04): Real wages & consumption improve
- OECD Employment Outlook 2025 – Full Report (Component 5)
- MHLW: Monthly Labour Survey (English)
- UBS Global Investment Returns Yearbook 2024
- MSCI World Index – Fact Sheet
- MLIT (2024年度): 地価動向関連資料(PDF)
- IMF (2020): Demographics and the Housing Market—Japan’s Disappearing Cities
- Bank of Japan (2024): Financial System Report
- Statistics Bureau of Japan: Family Income and Expenditure Survey (Monthly)
- JILPT: Employment Ref. Statistics (Unemployment rate & job openings)
- 総務省 統計局: 人口移動報告 2024(要約)
- e-Stat: Regional Difference Indexes of Consumer Prices
- Annual Review of Financial Economics (2024)