EVブームは日本車潰しだった?ホリエモンが読み解くトヨタの戦略と電動化の真実
電気自動車(EV)化の波が世界を席巻するなか、なぜ日本の自動車産業は苦境に立たされつつあるのでしょうか。トヨタ、ホンダ、日産──かつて“自動車大国”と呼ばれた日本が、なぜこの変化に追い込まれているのか?
ホリエモンこと堀江貴文氏はこの動画で、「EV化は政治的な“日本車潰し”だ」と明言し、トヨタの企業文化やEV転換の構造的問題を鋭く分析しています。
トヨタ・ホンダ・日産──それぞれの企業文化の違い
ホリエモンはまず、トヨタ・ホンダ・日産という日本の代表的自動車メーカーの「企業DNAの違い」から切り込んでいます。
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ホンダ: 技術主導型。ホンダ総一郎の時代から「自分たちで全部作る」ベンチャー精神が根強く、バイクからスーパーカブ、レース(マン島TT)まで、“技術で勝負”を貫いてきた。
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日産: もともと“日産コンツェルン”という持株会社的な起源を持つコングロマリット企業。買収や統合を繰り返し、ゴーン時代のような混乱も内包する。
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トヨタ: 極めて堅実。企業文化としては「徳川的」、つまり堅実かつ保守的で、激しい技術革新よりも改善と統制を重んじる。
特にトヨタについては、「トヨタ家は株をほとんど持っていないのに、創業家の人間が社長に就く不思議な構造」にも触れられており、「資本主義的に見ると不思議だが、それが文化」という言葉に象徴されるように、空気や信頼による支配構造が企業統治の根底にあります。
EV化は“技術革新”ではなく“政治戦略”だった
一見、環境意識の高まりと技術革新の文脈で語られるEVブーム。しかしホリエモンは「これは日本車潰しだ」と断言します。
なぜなら、ガソリン車の心臓部であるエンジンは極めて高度で参入障壁の高い技術であり、これこそが日本車の優位性だったからです。
エンジンの開発は、気象予測と同様に流体力学的な要素が絡み、スーパーコンピューターでも正確なシミュレーションが難しい領域。だからこそ、実験と試作を繰り返して得られる“暗黙知”が日本の自動車産業を支えてきたのです。
EVは“計算できる世界”──参入障壁の破壊
これに対して、EVの中核は「バッテリーとモーター」という完全に理論的に解析できるパーツで構成されています。
つまり、誰でも部品を買い集めれば車が作れる時代が到来しているのです。これは家電と同じモデルであり、中国や欧米が次々と新興EVメーカーを立ち上げる背景に他なりません。
ガソリン車の“複雑な機構”はもういらない
ホリエモンは、EV化によって不要になる部品・技術についても詳細に解説しています。
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ギアボックス: 回転数とトルクの変換装置だが、モーターなら不要
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ドライブシャフト: 動力伝達軸も不要(インホイールモーターで完結)
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ディファレンシャルギア: カーブ時の左右輪速度差を吸収する装置も不要
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エンジン周辺部品: 点火プラグ、クランクシャフト、吸排気系なども不要
これらの部品を支えていた中小の部品メーカーは、丸ごと産業構造から排除される危機に直面しているのです。
EV化がもたらす“静かな革命”──自動車業界の再編
EV化によって起こるのは、単なるエンジンの置き換えではありません。部品点数は激減し、組み立ての難易度も下がり、自動車メーカーの“中核的技術”が分散化します。
これにより、最終的には以下のような構造になる可能性があります。
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モーター: 日本電産や海外メーカーが支配
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バッテリー: 中国や韓国勢が台頭
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OS・制御ソフトウェア: 米国のIT企業が優位
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車体のデザイン・統合: 最終組み立て工場としての存在感しか残らない
この流れはまるで、パソコンが「CPU・OS・筐体」のモジュールで構成されたのと同様です。EVはすでに「パーツの集合体」になりつつあり、かつての“トヨタ方式”が通用しなくなる日が迫っているのです。
スイス燃料は希望なのか?トヨタの孤軍奮闘
トヨタの豊田章男社長は、EV偏重の流れに対し、水素や合成燃料(スイス燃料)などの選択肢も模索し続けています。ホリエモンはこれを「正論」だと認めつつも、「政治には正論が通用しない」と言い切ります。
たとえば、スイス燃料は既存のガソリン車のエンジンをほとんど改造なしに利用でき、カーボンニュートラルを達成できる技術として注目されています。にもかかわらず、国際的な潮流はEV一択に向かっているのが現実です。
これは環境問題の科学的根拠に基づくものではなく、政治・経済のパワーゲームによって方向が決まっている──ホリエモンの視点はこの点にあります。
EV化は“日本車潰し”──政治の戦場に置かれた自動車産業
ホリエモンは、EV化の背後には「日本車潰し」があると指摘します。
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日本はガソリン車分野で世界最高レベルの技術を持つ
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EV化によってその蓄積が無意味になる
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これにより、中国・欧州・米国が政治的優位を得る
つまり、環境政策の美名のもとに、日本の得意分野を潰す設計がなされている。これはまさに**「ゲームのルールを変えて勝ちに行く」**典型例なのです。
ホリエモンはこう述べます。
「政治ってのはパワーゲームなんですよ。だから負けると思います」
この発言は、もはや技術での優位性だけでは市場が守れない現実を突きつけています。
部品点数の激減と産業構造の再編
ホリエモンは、EV化によって失われる構成部品の多さを「怖い」と形容しています。
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ギアボックス
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ドライブシャフト
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ディファレンシャルギア
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ガソリンエンジン本体
これらに関わる一次・二次・三次下請けまで含めると、自動車産業が裾野として支えていた多層構造が、まるごと消滅することになります。
部品点数が激減することで、「人の手による組立・熟練の知恵」が必要なくなり、車は“スマホのように”なる。結果として、自動車産業の再編だけでなく、地域経済や雇用構造にも激震が走ることは避けられません。
自動車業界の“OS戦争”へ──GAFAが車産業を飲み込む?
さらにEV化は、自動車の“中身”をソフトウェア中心に変えるという別の波ももたらします。
これは、かつてWindowsがパソコンの主役を奪い、Appleがスマホを再定義した歴史と同じ道を自動車がたどることを意味します。
つまり、ハード(車体)を作るトヨタが主役だった時代は終わり、ソフトウェアを支配する企業が自動車産業の覇権を握る可能性が高まっているのです。
ウーブン・シティとトヨタの未来
トヨタは反撃の一手として「ウーブン・シティ」構想を発表しました。これは静岡県裾野市に建設予定の“スマートシティ”であり、EVやAI、IoTといった次世代技術の社会実装実験場です。
ホリエモンはこの取り組みを明確には評価していませんが、文脈としては、「トヨタが従来の車体製造企業から脱却し、プラットフォーマーになろうとする試み」と読み取れます。
ただし、そこには巨大な壁もあります。前述のとおり、政治的にルールが変えられる領域では、後追いの技術者集団は勝ちにくいからです。
おわりに:なぜ日本はEV化に負けつつあるのか
ホリエモンの論は明快です。日本車が苦しんでいるのは、単に技術力や努力が足りなかったからではありません。むしろ、優れた技術が「政治のルール変更」によって無効化された結果なのです。
EV化の本質とは、
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“計算できる世界”への移行
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“大量生産より柔軟性”の優位
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“燃焼から制御ソフト”への主役交代
です。そして日本の自動車産業は、長年培ってきたアナログの蓄積とモノづくりの強さが、デジタルの文法に変わった瞬間に置き去りにされたのです。
出典情報
本記事は、ホリエモンチャンネルの以下の動画をもとに構成しています:
📺「EVブームは日本車潰し!?トヨタのEV化の裏をホリエモンが分析【TOYOTA解説②】」
▶︎ YouTubeリンクはこちら
読後のひと考察──なぜ日本車はEV化に後れを取っているのか?
日本車がEV化の主流に乗り遅れている背景には、いくつかの複合的要因が絡んでいます。その主な要点を以下に整理します。
まず、日本市場におけるプラグインEV(PHEV/BEV)の普及率は低迷しており、その背後には「ハイブリッド(HEV)」や「燃料電池車(FCV)」を目指す日本独自の政策方針がありました。政府とメーカーが両技術を戦略的に推進してきた結果、EVへの本格的なシフトが遅れています[1][0]。
また、製造面では、「系列(ケイレツ)」を中心としたサプライチェーン構造が根強く残っており、EVへの移行は部品構成そのものを大きく変えるため、多くの下請け企業にとって圧倒的な負担となっています。特に、部品点数の少ないEVは「水平分業型」への転換を迫り、日本の垂直統合的な供給体制との相性が悪いとされています[2]
その上、インフラ面でも課題は深刻です。日本の都市部では戸建て住宅が少なく、個人による自宅充電が困難な環境が多く、これがEVへの実需を抑制しているという声もあります[3]
国際的にも、日本車メーカーはEV対応に慎重でした。トヨタはEV一辺倒ではなく、ハイブリッドや水素など複数の選択肢を組み合わせる“多様な技術戦略”を維持しています。これは長期戦略として合理的ですが、今のグローバルなEV推進のスピードには追いついていないとも指摘されます[4]
さらに、EV化の進む国際市場では、特に中国企業が大量生産とコスト競争力、政府の手厚い支援によって急成長しています。中国はEV技術とサプライチェーンのグローバルな支配力を築き、日本の対抗軸となりつつあります[5]
このように、日本車がEV化で苦しむ背景には、政策・産業構造・インフラ・国際競争という複数の要因が重なっています。読者の皆さんには、「技術だけでなく制度や市場インフラも含めた視点」で現代の自動車産業の潮流を問い直すきっかけになれば幸いです。
出典一覧
[1] “Japanese automakers reluctance to fully commit to battery electric vehicles; focus on hybrids and fuel-cell vehicles”, 2024年, Mirage News — https://www.miragenews.com/why-japan-falling-behind-in-electric-vehicle-1349099/
[2] “Disruptive effects on Japanese keiretsu supply chains from BEV transition; job risks”, 2024年, Wikipedia (Battery electric vehicle 日本項) — https://en.wikipedia.org/wiki/Battery_electric_vehicle
[3] “Home charging impractical in Japanese apartments/Housing”, 10 months ago, Reddit discussion — https://www.reddit.com/r/electricvehicles/comments/1fu752r/why_dont_japanese_automakers_prioritize_evs/
[4] “Toyota’s multi-path technology strategy, slow EV commitment vs hybrids and hydrogen”, 2024年, Wikipedia (Toyota 技術項) — https://en.wikipedia.org/wiki/Toyota
[5] “China’s EV technology and export dominance, surpassing Japan”, 2025年, Wikipedia (Automotive industry in China) — https://en.wikipedia.org/wiki/Automotive_industry_in_China