日本の未来を読み解く：人口減少社会で求められる視点と行動
日本社会は今、急速に進行する人口減少という未曾有の課題に直面しています。特に注目すべきは、「労働力の消失」という観点からの構造的な変化です。実業家・堀江貴文氏は、自身のチャンネルにおいて、こうした社会変化の実態と、その中で私たちがどのように生きるべきかについて、鋭い分析と具体的な提言を行っています。
堀江氏によれば、現在の日本では、職種ごとに人手不足の度合いが大きく異なっています。特に、建設や測量といった理系の現場系職種では深刻な人材不足が続いており、一方で、事務職などのホワイトカラー職種では逆に人材が余り始めているという実態があります。建設業においては、台湾有事のリスクや半導体不足を背景に、日本国内で半導体工場の新設ラッシュが進んでおり、TSMCによる熊本工場の建設や、ラピダスによる北海道への進出などが代表的な動きとなっています。
こうした新規プロジェクトにより、現場作業に従事する人材の需要は急増し、地域によっては時給3000円から4000円に達するなど、賃金水準の上昇が顕著になっています。熊本県菊陽町では、建設関連の求人が殺到し、周辺の企業が人手不足に陥っているという報告もあります。
一方、オフィスワークに代表されるホワイトカラー職種では、AIの進化によって状況が一変しています。ChatGPTをはじめとする生成AI、さらにはMicrosoft 365のCopilotなど、オフィス業務の多くが自動化されるツールの普及により、従来必要とされていた人数が大幅に削減されています。その結果、事務系職種では人材が過剰気味になっており、賃金の伸び悩みが発生しています。ここに、社会的な需要と職業選択の間で深刻なミスマッチが起きている現実があるのです。
再注目されるサプライチェーンと半導体産業の国内回帰
堀江氏がもう一つ強調しているのが、「サプライチェーンの重要性」です。私たちが日常的に使用している自動車や家電製品、スマートフォンなどは、膨大かつ複雑な供給網によって支えられています。このサプライチェーンが一部でも断たれれば、製品の製造そのものが困難になる場合があります。
その典型例として、ウクライナ情勢によるネオンガスの供給問題が挙げられます。ネオンは半導体の製造過程で欠かせない希ガスであり、その約7〜8割がウクライナで生産されていたため、戦争による供給停止が世界中の半導体産業に深刻な影響を及ぼしました。技術的には他国でも生産可能な素材ではあるものの、収益性の低さから日本国内では生産を断念する企業が多かったという事情もあります。
このような事態を受けて、日本政府および民間企業は、サプライチェーンの強靭化に向けて国内回帰の動きを強めています。特に半導体分野では、スマートフォンや自動車に用いられるチップの製造を再び国内で行うべく、大規模な工場建設が相次いで進められています。1980年代における円高の影響で海外移転を余儀なくされた製造業が、再び国内回帰するこの動きは、雇用創出や地方活性化にも大きな影響を与えています。
人口構造の変化と労働力の未来
堀江氏は、日本の人口構造の変化についても詳細に言及しています。特に、「団塊の世代」と呼ばれる1947年から1949年に生まれた世代が、すでに後期高齢者（75歳以上）に達しており、今後20年以内にはその子供世代である「団塊ジュニア」も高齢化のピークを迎えるとされています。こうした構造的な変化により、日本では数百万人単位での労働人口の減少が確実視されています。
この影響は、地方のインフラ維持や災害復興にも及んでいます。例えば、能登半島地震の被災地では、道路や橋などのインフラ再建が思うように進まない背景として、深刻な人手不足が挙げられています。地方の過疎地域では、若年層の流出が続いており、インフラの維持すら困難な状態が現実のものとなりつつあります。
こうした状況を受け、近年では「コンパクトシティ化」という都市政策が再び注目を集めています。これは、高齢者が山間部の過疎集落から、医療機関や生活インフラが整った平地へと移住する動きを促すものです。既に各地でこのような動きが進んでおり、従来の「定住至上主義」とは異なる視点から、持続可能な地域社会の再構築が模索されています。
グローバルな視点で見る日本の位置づけと可能性
堀江氏は、日本国内だけを見ていては本質が見えにくくなると指摘し、グローバルな視点の必要性を強調しています。特に、東南アジア諸国の都市部における活況は顕著であり、バンコク、ハノイ、ホーチミン、シンガポールといった地域では、人々が活力にあふれ、経済的にも豊かになりつつある様子が確認されています。
一方で、日本国内は経済的にも精神的にも閉塞感が漂い始めており、コストパフォーマンスを最優先する消費行動や、過剰なクレーム文化が目立つようになっています。堀江氏は、こうした傾向が「国の貧しさ」を象徴していると語り、日本人が外の世界に出て、自国の立ち位置を客観的に見つめ直すことの重要性を訴えています。
その一例として、日本人のタレントやAV女優が海外へ進出し、現地で高額な報酬を得ている現象が挙げられました。日本国内では評価されにくい分野であっても、世界市場では高い価値を持つケースが多々あることを示しています。このことは、才能やスキルを国内に限定せず、国際市場に向けて展開することで、経済的に豊かになる可能性が大きく広がるというメッセージでもあります。
大学教育の限界と「頭の良さ」の再定義
教育に関する話題では、日本の大学教育の実態にも言及されました。堀江氏は、大学とは本来「頭の良い人たちが集まって議論し、新たな発見をする場」であるべきだと定義しています。かつては情報へのアクセスが限られていたため、大学という場の存在意義が強かったものの、現在ではインターネットによって高品質な学術情報が容易に手に入るようになっています。
そのため、一定以上の思考力と自己学習能力を持つ人にとって、大学に通う意義は薄れていると堀江氏は主張します。代わりに、SlackやGitHub、LINEグループなどのオンラインツールを活用して、専門的な知見を持つ人々と議論しながら学ぶスタイルがより有効であるとされます。
逆に、大学に頼らなければ学習が進まないという人にとっては、大学進学はあまり効果的でないとも述べられており、高額な学費を支払ってまで通う意味が再考されるべきとされています。また、日本の大学の多くが、実は一部の特権階級による税制優遇の温床となっているとの見解も示され、大学進学が「教育投資」ではなく「制度の養分」となっている可能性についても問題提起がなされました。
職業選択に必要な現実的視点
これからの時代において、どのようなスキルや職業が求められるのかについても、堀江氏は具体的なアドバイスを行っています。まず、現代社会では「手に職」が大きな価値を持つようになってきており、建設業や測量、建築設計といった分野における技能職が非常に高く評価されています。これらの職種は、AIによって代替しにくい上に、少子高齢化によって慢性的な人材不足に陥っているため、収入面でも安定性が高く、将来的にも需要が見込まれます。
一方で、ホワイトカラー職種の多くは、前述のようにAI技術によって置き換えられつつあり、特に「作業系」「事務処理系」の職務は、その価値が急速に下落している現状があります。堀江氏は、「東京のオフィスでパソコンをカチャカチャ打つ仕事」ばかりに人気が集中している現状こそが、日本社会における人材のミスマッチを象徴しているとしています。
職業選択においては、「人気職種かどうか」ではなく、「社会的に必要とされているかどうか」に目を向けることが極めて重要です。特に若年層にとっては、こうした視点を持つことで、キャリア形成における無駄を避けることができ、より確実に自分の市場価値を高める道を選ぶことが可能になります。
外から見えてくる日本の強み
堀江氏は、日本の良さを再認識するためにも、「一度外に出て世界を見てみること」を強く勧めています。現地で異文化に触れ、自国との違いを実感することで、日本の魅力や潜在力に改めて気づくことができるという考えです。たとえば、SNSを通じて日本文化への関心が世界中で高まっており、日本に対するポジティブなイメージが広がっています。
このような状況は、今後の移民政策やインバウンド政策においても重要な意味を持ちます。外国人労働者や観光客の受け入れを促進することで、人口減少に伴う労働力不足や経済縮小への対策として活用することが期待されています。堀江氏は、日本の魅力がしっかりと伝われば、500万人から1000万人規模の移住者がやってくる可能性も十分にあると述べています。
また、観光分野においても、年間3000万人規模の訪日外国人が、今後さらに倍増する可能性を秘めており、日本が「観光立国」として経済的な起爆剤を持つことも示唆されています。
最後に：個人の判断が未来を左右する時代へ
講演の締めくくりとして、堀江氏は「自分の見た目や能力は、他者に評価されて初めて意味を持つ」と語り、主観的な価値観に頼るのではなく、客観的な視点で自己を見つめることの重要性を強調しています。日本国内に閉じこもっているだけでは、その機会が極端に限られてしまうため、より多くの若者が海外に目を向け、異なる価値観に触れることが、自身のポテンシャルを引き出す手段となるはずです。
少子高齢化、産業構造の変化、教育制度の形骸化といったさまざまな課題に直面する中で、何を学び、どう働き、どこで生きるのかという選択は、従来以上に個人の判断と行動に委ねられています。現実から目を逸らさず、地に足のついた視点で未来を見据えることが、これからの日本人にとって不可欠な姿勢であるといえるでしょう。
出典：
YouTube「ホリエモンチャンネル」
「人口が減っていく日本で何をするか？台湾有事・サプライチェーン・人材の偏り…ホリエモンが若者に伝えたいこと」
https://youtu.be/H-s4r4ik8q8
