ドリームキラーとは何者か?
「ドリームキラー」という言葉をご存じでしょうか?
苫米地英人氏はこれを、夢を叶えようとする人の“ゴール”や“コンフォートゾーン”を引きずり下ろそうとする存在と定義します。その多くは意外にも、親や教師、友人など、私たちの身近にいる「善意の第三者」です。
「良かれと思って“やめとけ”“現実を見ろ”という──これが一番やっかいなドリームキラー」
ドリームキラーの怖さは、相手が無自覚であること、そしてその言葉が脳に恐怖や自己否定を埋め込むことにあります。
なぜ人は他人の夢を否定するのか?
人がドリームキラーになる理由は、「あなたの夢がその人の“無意識”を刺激するから」です。たとえば、
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親は、子が自分より成功すると無意識が不安定になる
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教師は、生徒が常識外れの道を選ぶと自分の教育が否定されたように感じる
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上司は、部下が独立しようとすると自分の立場が危うくなる
こうした無意識の不安や居心地の悪さが、「お前には無理だ」「やめとけ」「普通にしろ」といった言葉となって表れるのです。
悪意なき攻撃が最も危険
ドリームキラーには大きく分けて2種類存在します。
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無意識型ドリームキラー(善意の仮面)
→ 家族、教師、友人など
→ 「君のためを思って」と口にしながら足を引っ張る -
意図的なドリームキラー(自己防衛型)
→ 上司、組織、人事、社会的権威
→ 「評価が下がる」「辞めると損する」と脅す
特に後者は、自分の都合のために相手のゴールを潰そうと“恐怖”を用いることがあります。苫米地氏は、かつて公安警察関係者から直接「日本で公安と喧嘩して生きてる人はいません」と脅された経験を語り、実社会での“ドリームクラッシャーの圧力”のリアルさを明らかにしています。
恐怖が人をコントロールする
苫米地氏が強調するのは、ドリームキラーの最終兵器が「恐怖による支配」であるということです。誰かが夢を叶えようとした瞬間、周囲の誰かがその動きを止めようと“死の恐怖”をトリガーに使ってくる。
その例として次のような実話が挙げられます。
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松下幸之助が政党を立ち上げようとした際、「そんなことをしたら死ぬよ」と脅されたという周辺証言
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トランプ元大統領が命を狙われたとされるような“攻撃的ドリームクラッシャー”
このように、夢が大きければ大きいほど、その実現に伴う影響力が大きくなるほど、恐怖による妨害が起こりやすくなるのです。
恐怖が引き起こす脳の反応
では、なぜ人間は脅しや恐怖に負けてしまうのでしょうか? それは脳の情報処理メカニズムに深く関係しています。
恐怖 → パニック → 思考停止のメカニズム
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銀色に光る尖ったものを見る
→ 情動中枢(扁桃体)が反応 -
恐怖信号が前頭前野(理性)を遮断
→ 論理的思考ができなくなる -
身体は自律神経系を通じて「逃げるか戦うか(Fight or Flight)」へ
→ パニック反応へ移行
この一連の流れは、野生動物の生存本能と同じです。例えば、ナイフを突きつけられたとき、後ろ向きに逃げると却って危険なのに、脳が恐怖に支配されるとそうした冷静な判断ができなくなるのです。
“弱そうに見える人”が狙われる理由
苫米地氏は、パニック反応が相手に伝わることで「狙われやすくなる」とも指摘します。襲撃者は本能的に「その場で一番弱そうな人」に向かっていきます。
この“弱さ”とは、情報過多によって判断不能になっている状態を指します。過去の記憶、文化的な恐怖、死のイメージ、社会的洗脳などが脳内で一気に再生され、**IQが著しく低下した状態(テンパってる状態)**が、相手にとって“格好の獲物”になるのです。
恐怖のトリガーは“文化”がつくる
ドリームキラーは、ただ「言葉」で夢を否定してくるだけではありません。文化や宗教を通じて“死のイメージ”を植え付けることもあります。
たとえば:
こうした文化的アンカーが脳に埋め込まれていると、夢を語ることそのものが“恐怖”のスイッチになるのです。つまり、「夢を持つ=生存のリスクを負う」と脳が判断してしまうのです。
恐怖とアンカーの心理的メカニズム
苫米地氏は、「アンカー(Anchoring)」という概念でこの仕組みを説明します。
アンカーとは、過去の強い感情とある刺激が結びつくこと。たとえば、過去に「挑戦して失敗し、笑われた」経験がある人は、それ以降、
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新しいことに挑戦 → 不安
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夢を語る → 否定される恐怖
といった条件反射的な恐怖を抱くようになります。これが、ドリームキラーの言葉と結びつくことで、自分の中から夢そのものが消えてしまうという現象につながるのです。
恐怖を解除するための脳の使い方
では、どうすればこうした“恐怖アンカー”を解除できるのでしょうか?苫米地英人氏は、以下のような手法を紹介しています。
1. 情報空間の再定義
人間は、「臨場感のあるほうを現実とみなす」脳の構造を持っています。つまり、過去の記憶や他人の声よりも、強い臨場感を持って夢を描くことができれば、脳はそちらを「リアル」と判断します。
「過去ベースの現実を信じるのではなく、未来ベースのビジョンに臨場感を持てばいい」
2. ゴール設定と自己イメージの書き換え
現状の延長線上ではなく、「自分が本当にやりたいこと」をゴールに設定し、それをすでに実現している自分をイメージすること。それが**ドリームキラーに影響されない“自我の構築”**に直結します。
「誰にも触れられない情報空間に、自分だけのゴールを置くこと。それが最強の防御です」
苫米地式コーチングにおける「ドリームキラー対策」
苫米地氏のコーチング理論では、ドリームキラーを乗り越えるプロセスは極めて戦略的です。
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他人の評価を“情報”として捉える
→ 真に受けるのではなく、背景・意図を解析する -
コンフォートゾーンの外に“夢の世界”をつくる
→ 現実とは違う“認識の空間”にゴールを構築 -
自分の臨場感を何よりも信じる
→ 他者の臨場感に巻き込まれず、自分の世界観を強化 -
“恐怖”をラベリングして認知的に処理する
→ 怖い=悪ではなく、「ああ、脳が過去のパターンで反応している」と理解する
これらを実践することで、ドリームキラーの言葉を“外部のノイズ”として処理する力が育まれていきます。
ドリームキラーは内面にも存在する
もっとも厄介なドリームキラーは、実は自分自身の中にいると苫米地氏は言います。
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「自分なんかにできるわけがない」
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「どうせ無理だろう」
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「バカにされたくない」
これらの声は、過去の他者からの言葉が内在化した“内なるドリームキラー”です。苫米地氏はこれを、「自己評価の低いエフィカシーが、自分の未来を殺している状態」と説明します。
最強の対抗策は「自由な情報空間」
では、最終的に夢を守るために必要なものは何か?それは、「自由な情報空間の確保」です。
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物理的にも心理的にも、干渉されない空間
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他者の臨場感が入ってこない思考の場
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ゴールを自分の内側に構築できるメンタル設計力
このような空間を意識的につくることで、ドリームキラーの存在は“ただのノイズ”として処理可能になります。
「夢を叶えるとは、恐怖から自由になること。情報空間の主導権を取り戻すことです」
おわりに──夢を語る勇気こそが、人間の自由を守る
苫米地英人氏の講義は、単に「ネガティブな人に流されるな」というメッセージではありません。それは**脳科学・認知心理・文化批評・哲学を融合した“夢の科学”**のような内容です。
「ドリームキラーはいつでも、あなたのすぐ近くにいる。だが、最大の敵は“自分の中にいる恐怖”である」
その恐怖に気づき、臨場感とゴールを用いて脳を再設計していく──これこそが苫米地メソッドにおける「夢の守り方」であり、真に自由な生き方への第一歩なのです。
出典:YouTube「夢の実現を妨げる存在を見極めよ!『ドリームキラー』撃退法」苫米地英人
https://youtu.be/nnpB8ZiCY6E