はじめに──レールの終着駅に立つ若者たちへ
「皆さん、これまでの“レールの上”の人生は今日で終わりです」。
堀江貴文さんが2023年、近畿大学の卒業式で語りかけたこの一言は、これから社会に飛び出す若者たちの不安と希望を象徴的に捉えていました。
彼が伝えたのは単なる「エール」ではありません。そこには、情報と行動、変化と挑戦をめぐる厳しくも実践的なサバイバル哲学が込められています。本記事ではこのスピーチの内容を詳しく分析しながら、現代社会を生き抜くためのヒントを読み解いていきます。
「レールなき世界」に挑む覚悟
◉レールはもはや存在しない
堀江氏は、これまでの「学校→就職→定年退職→老後」という一本道の人生設計が、もはや幻想になりつつあると喝破します。かつてはこのレールに乗っていれば安泰とされていましたが、現代は違う。
「皆さんが一生勤め上げられると思っている会社は、多分どっかで潰れたり、どっかの会社に吸収合併されたりすると思います」
時代の変化は、安定を前提とした社会モデルそのものを崩壊させているのです。
情報格差が「生存格差」に変わる時代
◉スマホ=世界への窓口
「スマートフォンでゲームしてるだけかもしれないけど、世界のすごい人たちはそれで社会を変えている」。
彼は、情報へのアクセスの差がそのまま人生の選択肢の差になる時代だと強調します。
情報収集の方法として彼が挙げるのは:
つまり、「先生に教わる」時代から「自分で探す」時代へと転換しているのです。
◉ただ受け取るな、発信せよ
情報を集めるだけでは足りないと堀江氏は言います。
「情報を自分の頭で考えて、発信して、頭の中を整理する癖をつけていかなければいけない」
ブログでもSNSでも、思考の「出力」を通して、自分の判断力を育てることが大切だと繰り返します。
これは言い換えれば、情報の「読者」から「編集者」になること。与えられたものを信じるのではなく、自分で問いを立て、文脈を編み直す力が問われているのです。
権威は崩れ、「自分で判断する」しかない
マスメディア、会社の上司、大学の教授――
かつて信頼されていた「権威」は、いまや確実性を失っています。
「そんな時代はもう、とうに終わりに近づいております」
インターネットとグローバル化によって、価値基準が多様化し、正解が一つではない時代に突入しています。そのなかで、自分で情報を集め、自分で信じるべき「判断軸」を持つことの重要性が増しているのです。
東南アジアの台頭と日本の相対的没落
堀江氏は、自身が体験したタイと日本のマッサージ料金の比較を通して、「日本の物価優位」はすでに幻想であることを示します。
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札幌:90分で5000円(割引込み)
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バンコク:90分で約2500円(チップ込み)
この「物価差の縮小」は、東南アジアの経済発展と日本の相対的停滞を象徴しています。
「タイの高給取りの人たちは、完全に日本人のホワイトカラーの年収を上回っている」
今や「安いアジア」「貧しい新興国」という認識は時代遅れ。若者はこうした世界の変化に鈍感なまま、国内の常識に甘んじている――そのことこそが堀江氏の危機感です。
グローバル化の衝撃:「道なき競争」へ
世界中の誰もが、英語を通じて最先端の知にアクセスできる時代。スマホひとつで、アフリカの奥地にいる青年も、MITの授業に触れることができる。
「皆さんはその人たちと同じ土俵に立ってこれから生きていくことになります」
つまり、日本の若者も、世界のトップレベルの頭脳や行動力と“同じルール”で競わされることになるということ。これまで日本国内の中だけで完結していた“就活”や“安定志向”の価値観は、もはや通用しない時代です。
常識・道徳・倫理は「書き換わる」
堀江氏は、価値観が固定的なものではないことを強く主張します。
「常識とか道徳とか倫理とか、こういったものというのは5年10年単位で簡単に書き換わります」
かつて当たり前だった男女観、家族観、職業観は、すでに多くが更新されてきました。そしてこの「変化のスピード」は、インターネットとグローバル化によって加速し続けています。
つまり、「今の常識」に従って生きることは、それ自体がリスクになりうるということです。
チャレンジと失敗の哲学
◉「失敗」は、挑戦の裏側にあるもの
「チャレンジしなければ失敗はないかもしれない。でも成功することもありえない」
堀江氏は、自らの波乱万丈な人生をもとに、「失敗を恐れるな」と語ります。そして失敗には必ず「処方箋」があると説きます。
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再発防止策を考える
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反省はすぐに終える
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忘れて次に進む
特に印象的なのは、「酒でも飲んで騒いで忘れる」「次の日にはすっぱり忘れる」という実践的なリセット方法です。これは「失敗」をネガティブに抱え込みすぎない、心理的なサバイバル術ともいえるでしょう。
◉「うまくいく」と信じ込む力
堀江氏は「自己暗示」のように、成功を信じ込むことの効力も語ります。
「自分たちがチャレンジしていくことは、必ずうまくいくと思い込むこと」
この言葉には、成功の鍵が自己の思考パターンにあるというメッセージが込められています。不安よりも「仮想的成功」に心を馴染ませておくことで、行動へのブレーキが外れていくのです。
未来は「予測」するものではない、「創る」ものだ
「老後のことは老後になったら考えましょう。いくら準備してたって50年後のことなんか分かりっこないですよ」
堀江氏は、未来に対して「予測しすぎない」「準備しすぎない」ことを勧めます。実際、彼は以下のような問いを投げかけます:
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10年前にスマホ社会が予測できたか?
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50年前のSFは、今見て笑えるものではないか?
つまり、変化が激しい時代において、「長期の安定や計画」にこだわること自体がナンセンスであるという警鐘です。
「今を生きる」という能力
「なぜ私が、たくさんの人に裏切られながらも、こうやって楽しく生きられてるかっていうのは、今を生きてるからです」
堀江氏のメッセージの核心は、まさにこの一言に凝縮されています。
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未来を恐れすぎず
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過去を悔やまず
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「今」に集中する
この「今に集中する」という姿勢は、スティーブ・ジョブズの「Stay hungry, stay foolish.」にも通じます。長期の安全や保障ではなく、目の前のことに没頭する力こそが、激動の時代を生き抜く武器なのです。
最後のメッセージ:「未来を恐れず、過去に執着せず、今を生きろ」
堀江氏は最後に、こう語りかけてスピーチを締めくくります。
「未来を恐れず
過去に執着せず
今を生きろ」
これは、単なる勇気づけの言葉ではなく、「変化の時代を生き抜くための行動原則」です。
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未来は予測できない
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過去は変えられない
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だからこそ「今」が最重要
この言葉は、変化を受け入れ、失敗を許容し、自分で選び取る人生を歩んでいくすべての人に向けたメッセージです。
まとめ:堀江式・情報社会の生き方10ヶ条
最後に、堀江貴文氏のスピーチから読み取れる「現代を生き抜く10の行動原則」をまとめておきます。
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レールのない社会で、自分の道を切り開け
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情報は自ら集めるべし
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考え、発信し、思考力を鍛えよ
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権威に依存せず、自分の判断軸を持て
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グローバルな競争を前提にせよ
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常識は変わる。疑い続けよ
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チャレンジを恐れず、失敗から学べ
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準備よりも、行動の集中力を持て
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未来は創るもの、予測ではない
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今を全力で生きよ
出典
本記事は、堀江貴文氏の近畿大学卒業式スピーチ「情報を集めて行動せよ」(YouTubeリンク)をもとに構成されています。