なぜ「いきなり!ステーキ」と「鳥貴族」は長続きしないのか?──ホリエモンが語る“吉野家との決定的な違い”
店舗数を拡大し続けた飲食チェーンが、いま業績悪化の波に直面しています。とりわけ「いきなり!ステーキ」と「鳥貴族」は、かつての勢いから一転、営業利益率の低迷がニュースとなりました。
この現象について、ホリエモンこと堀江貴文氏がNewsPicksの対談動画で明快に語ったのが、「安売りビジネスの限界」と「ブランドの本質」でした。対照的に語られるのが「吉野家」の強さです。
本記事では、動画の発言内容をもとに、ホリエモンが見抜いた「続くビジネスと終わるビジネス」の違いを丁寧に読み解きます。
「安いだけ」のビジネスは持続しない──いきなりステーキと鳥貴族の現実
ホリエモンがまず指摘したのは、「いきなり!ステーキ」と「鳥貴族」が共通して“安売りモデル”で成長してきたという点です。
確かに、両社ともに「安くてそこそこ美味しい」「入りやすい価格帯」で若者やサラリーマン層の支持を集め、急速に店舗展開を進めてきました。しかしその結果、既存店売上の減少や営業利益率の悪化が目立つようになります。
とくに取り上げられたのは、「鳥貴族の利益率が2%程度にまで落ち込んでいる」という点。いきなりステーキも同様に2~3%程度の水準にとどまり、「これで利益が出ていると言えるのか?」とホリエモンは疑問を投げかけました。
安さの裏にある“人件費”という壁
低価格路線の背景には当然、原価や人件費の圧縮があります。しかし、ホリエモンはここにも大きな落とし穴があるといいます。
鳥貴族で働くスタッフの時給は非常に安く、これが**「働き手が集まらない」**という根本的な課題につながっているのです。将来的にさらに人手不足が深刻化すれば、店舗運営そのものが成立しなくなるリスクすらあると指摘します。
つまり、「安くすること」で顧客の支持を得ても、「人件費を削って無理に成立させている」構造は、どこかで破綻する。これは単なるビジネス上の失策ではなく、モデルそのものの脆弱性を示しているのです。
対照的な吉野家──「安さ」ではなく「好きだから行く」ブランド力
では、なぜ吉野家は違うのでしょうか?
ホリエモンは「吉野家は吉野家の牛丼が“好き”な人たちが行く」と明言します。つまり、価格の安さよりも**「吉野家の味・価値」**を理由に来店する顧客が多い。これは「安さしかない店」との決定的な違いです。
牛丼チェーンで比較すると、吉野家が特別安いわけではありません。スキヤや松屋のほうが安いメニューもあります。それでも吉野家を選ぶ人たちがいるのは、「吉野家じゃないとダメ」というブランド価値が根付いているからです。
この“ファンベース”があるからこそ、多少の値上げをしても顧客離れが起きにくい。これは飲食ビジネスにおいて極めて重要な「値付けの自由度」を意味します。
利益率の違いが示す、持続可能性の違い
動画中で触れられたように、鳥貴族やいきなりステーキは、店舗拡大と引き換えに利益率を著しく低下させてきました。営業利益率が2~3%という水準では、原材料の価格上昇や人手不足などの外的要因にすぐさま影響を受けてしまいます。
一方、吉野家は商品単価の引き上げが比較的容易であるため、利益構造の安定性が高いのです。この違いは、「同じように全国展開しているチェーン店」という表層的な比較だけでは見えてこない、根本的な事業戦略の差です。
ブランドを持つ店と、持たない店の「運命の分かれ道」
ホリエモンは、こうしたブランド力の有無を「永遠にできないもの」と明言します。つまり、吉野家のようなブランド力は、意識して作っても簡単には生まれないということです。
安くてそれなりに満足できるステーキや焼き鳥を提供するだけでは、「その店に行きたい」「あそこでしか食べられない」という指名買いは生まれません。
この視点から見ると、「いきなり!ステーキ」や「鳥貴族」が今後どれほど業態を改善しようとも、ブランドの根幹が形成されていない限り、「長くないビジネス」と評価されるのは避けられないでしょう。
「また行きたい」を作れるか──串カツ田中の魅力と仕掛け
ホリエモンは、「いきなりステーキ」や「鳥貴族」とは違って「また行きたい」と思わせる店舗の一例として、「串カツ田中」を挙げました。
この店の特徴は、安価であるだけでなく、独自の体験価値が設計されていることです。たとえば、
といった要素が、「ただの飲食」にとどまらない**“楽しさ”や“演出”**を提供しています。これは、単なる価格競争とは別の軸で競争していることを意味します。
ホリエモンは、「安いだけで勝負している店は、物価上昇や人手不足に耐えられない」と語る一方、「安くても楽しさがあるならまた行きたくなる」と指摘しました。
楽しさ・体験・文脈のある店だけが生き残る時代
この議論の本質は、「価格以外の価値をいかに提供できるか」という問いに集約されます。飲食業界における価格競争は、仕入れや人件費の上昇という外的変動に対して非常に脆弱です。
だからこそ、ユーザーにとって“安さ”が唯一の動機でない店こそが、変動に強く、長期的に愛される。これがホリエモンの示す一貫した視点です。
串カツ田中のような演出型の店は、たとえ値段が多少上がっても、「また行きたい」「人に紹介したい」「家族や友人と楽しみたい」と思える体験があるため、ブランドの種が育ちやすいのです。
ホリエモンが描く「これからの飲食ビジネス」
ホリエモンが語る飲食ビジネスの本質は、単なる売上や利益率ではありません。むしろ彼が注目しているのは、その背後にある「なぜその店を選ぶのか」という心理的な動機の強さです。
たとえば、
これらは価格が多少上がっても客が離れにくく、収益構造も柔軟に変化できます。逆に、「安いから」「手軽だから」といった弱い動機しかない店は、わずかな外的要因で経営が傾いてしまう。
つまり、飲食店にとって本当の意味での“資本”は、価格ではなく、体験と信頼なのです。
安売りの時代は終わった──個性なきチェーンの淘汰が始まる
まとめとして、ホリエモンの言葉から明らかになるのは、「安売りで店舗数を拡大する時代」は終わりを迎えているという現実です。安さに依存する業態は、景気変動・原材料高・人件費高騰という三重苦に太刀打ちできません。
これからの飲食ビジネスに求められるのは、
-
味・体験・雰囲気といった“理由ある選ばれ方”
-
ブランドへの信頼とファンの存在
-
社会的・経済的変動に耐えうる利益構造
です。
ホリエモンの語りは、一見ただの鋭い批判に見えますが、その背景には「続くための仕組みをどう作るか」という深い問いかけが潜んでいます。
結語:飲食ビジネスの本質は「また行きたい理由」をつくること
「鳥貴族もいきなりステーキも、永遠にブランドにはなれない」と断じるホリエモンの視点は、冷徹でありながら本質的です。単なる安売り戦略では、顧客の心をつかむことはできず、少しの変化で支持を失います。
だからこそ、飲食店が本当に目指すべきは、「また行きたいと思ってもらえる体験」をいかに提供するかです。価格を超えた価値、体験、記憶、そして信頼。それこそが、今後の外食産業を生き残らせる唯一の道なのかもしれません。
出典情報
本記事は、ホリエモン出演の動画
「いきなり!ステーキ」と「鳥貴族」は長くないビジネス…!?堀江が語る「吉野家」との違いとは【NewsPicksコラボ】
(YouTubeリンクはこちら)をもとに構成しています。