GAFAが描く新世界秩序:合法的な支配と民主主義の終焉
はじめに:現代における“世界征服”はすでに始まっている
岡田斗司夫氏は、かつて「世界征服は可能か?」という本を執筆しました。その中で「世界を征服するにはどんな条件が必要か?」という理屈を積み上げ、結論として「不可能ではないが、極めて困難」と論じていました。
しかし21世紀現在、もはや「悪の組織による世界征服」は絵空事ではなく、すでに静かに、合法的に進行していると岡田氏は語ります。その担い手こそ、GAFA(Google・Amazon・Facebook・Apple)という現代の“4騎士”です。
ヨハネの黙示録に見るGAFAの隠喩構造
スコット・ギャロウェイ著『四騎士が創り変えた世界』をもとに、岡田氏はGAFAを「ヨハネの黙示録に登場する四騎士」になぞらえます。
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第1の騎士(支配):勝利の上の勝利を得る存在。
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第2の騎士(戦争):人々を互いに争わせる。
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第3の騎士(飢餓):食料や富の分配を制限する。
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第4の騎士(死):病と死を司る。
この比喩を借りれば、GAFAは人類の生活を「快適」にしてくれると同時に、静かに精神と社会構造を支配していく存在です。
企業による“支配”の構造転換:豊田市からGAFAへ
岡田氏は、かつてトヨタやパナソニックのような企業が地域を“支配”していた時代と、GAFAの支配を明確に区別します。
従来の支配:
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地元に雇用を生み出す
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雇った人々の生活を支える
GAFAの支配:
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雇用を生み出さず
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利益のほとんどを社員や地域に還元しない
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課税も最小限に抑える
例としてFacebookは2万人未満の社員数で、GMの100倍に相当する1人あたり2050万ドルの時価総額を記録。経済規模は国家級でありながら、分配の構造がまったく異なるのです。
漫画『青の6号』に見る予言的構造
1967年の少年サンデーに掲載された漫画『青の6号』では、マックスという悪の首領が「我が方は国家の100分の1の人口で世界の80分の1の通貨を動かす」と演説します。
この構図は、GAFAのモデルに極めて近いと岡田氏は指摘します。少人数のエリートが、莫大な経済力を背景に地球規模の影響力を行使するという点で、実質的な「世界征服」をすでに実現しているとすら言えます。
GAFAの特徴:スマートな“非分配型”資本主義
GAFAの支配構造には、次のような特徴があります。
例:Amazonのベーシックインカム構想
ジェフ・ベゾスは、ベーシックインカム(最低所得保障)を導入すべきだと発言しました。一見、弱者の味方に見えますが、岡田氏はこれを「Amazonが自社で雇用しない代わりに、国が給付金を出せ」というエゴイズムと指摘します。
この仕組みの本質は「自分は払わないが、他人の税金で自社の売上を保証せよ」という、制度外から国家を乗っ取る構造です。
小売業の進化とGAFAの最終形
アメリカの小売業は、以下のような進化の段階を経てきました。
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街の商店:地域コミュニティと一体化
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デパート:知識と高級感で差別化
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ショッピングモール:娯楽施設と融合し匿名性が増す
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専門店(無印良品など):独自性と価値の提示
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eコマース(Amazon):店舗すら要らない、物理的限界を超える
GAFAの最も危険な点は、この進化の果てに「人間を介在させずに経済を動かす」ことにあります。
例:Amazonの躍進によって、アメリカでは年間7万6千人が小売業から失業しており、これは全労働者の0.1%に相当。国家がどんな雇用対策を講じても、この“失業製造機”には太刀打ちできないのです。
“快適”と“豊かさ”のトレードオフ
GAFAは、以下のものを私たちに提供してくれます。
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快適さ
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便利さ
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楽しさ
しかし、彼らは決して私たちを「豊かに」も「幸せに」もしない。
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地域経済の破壊
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伝統産業の衰退(例:定食屋や漁業の後継者不足)
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深く考える力の退化
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欲望への即応・衝動買いの促進
我々が享受している「安くてうまい」生活の裏では、生産者が買いたたかれ、職業の価値が失われているのです。
岡田氏の視点:GAFAと民主主義の対立
興味深いのは、GAFAが民主主義の代替装置として支持されている側面です。
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国家は非効率・無能
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税金は無駄に使われる
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ならばGAFAが研究開発に金を使ってくれた方がマシ
このように考える人々(例:ホリエモン、田端慎太郎氏など)は、民主主義に絶望したエリート層です。
岡田氏は、「もはやGAFAは民主主義を超えた存在として扱われている」と語ります。そしてそれは、私たち自身が望んだ未来でもあるのです。
結論:GAFAが創る“中世的未来社会”
GAFAによる新世界の姿は、ある種の中世的な貴族社会に近いと岡田氏は比喩します。
もはや我々はこの“デジタル王国”の住人であり、そこに住むことを選んでいるのです。
GAFAという宗教、そして中世への回帰:私たちはすでに“入信”している
Apple・Facebook・Googleの「現代的役割」
動画後半では、Amazonに続くGAFAの残り3社について、それぞれの機能と象徴性が分析されていきます。著者スコット・ギャロウェイの視点を借りながら、岡田斗司夫氏はそれぞれの企業の“支配の仕組み”を次のように位置づけています。
1. Apple──ステータスの象徴、「質が悪くても高価格で売れる力」
Appleは、商品そのものの機能性やコストパフォーマンスではなく、「ブランド力」と「デザイン」で価値を創出している企業です。著者はこの点を皮肉を込めて、「質の悪い製品を高値で売る」ことに成功した、と述べています。
Appleは、貴族の衣装のような役割を果たしています。
2. Facebook──あなた自身よりも、あなたを理解している企業
Facebookは、ユーザーの「家族やパートナー以上に、あなたの好みや趣味を理解している」とされています。
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「いいね!」の履歴、閲覧時間、クリック傾向、交友関係のネットワークなどから、驚くほど正確に人間の傾向を推測できる
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広告の精度向上、感情操作、政治キャンペーンへの利用など、「信頼」を超えた“掌握”が進行している
Facebookは、現代における“社交界”です。そこでは、真の人格よりも、SNS上の「演じられた自己」が重視されます。
3. Google──私たちはすでに“信者”である
Googleの支配の構造は、宗教に最も近いと岡田氏は語ります。
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私たちは日々、自分の願望、関心、困りごとを「Google様」に告白している
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「どうすれば痩せられるか」「◯◯の意味とは?」など、かつて神父に問うていた問いを、検索バーに打ち込む
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しかも、その答えを全面的に信頼している
これはまさに、中世のキリスト教的信仰構造そのものであり、我々はすでにGoogleという宗教に“入信”しているのです。
GAFAの最終的な役割:国家の代替装置
動画の締めくくりとして、岡田氏はGAFAを「国家の代替物」と位置づけています。
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国家は、税金を徴収して、再分配とインフラの維持を担っていた
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しかしGAFAは、再分配を拒否しながら、インフラとしての役割(物流、検索、通信、エンタメ)をほぼすべて担う
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国家の“代用品”として振る舞いながら、その実、国家の役割を不要化しつつある
これは、新しい封建制度とも言えます。GAFAという巨大な“デジタル領主”のもとで、私たちは家来のように生き、利用料としてのサブスクリプションや個人情報を提供し続けているのです。
北斗の拳との比較:崩壊後の秩序と支配構造
動画の最後に岡田氏が用いた印象的なたとえが、「GAFAが支配する世界は、まるで北斗の拳の世界だ」というものです。
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北斗の拳では、国家が崩壊し、暴力と恐怖によって“拠点”ごとに支配者が存在する
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それぞれの支配者は、自身の秩序とルールを定めて生き延びた者たちを守る
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まさにApple、Amazon、Facebook、Googleという拠点に人々が身を寄せ、支配されている現代社会と酷似している
つまり、国家的統治が不完全になりつつある今、GAFAは“各地の覇者”として新たな秩序を作りつつあるのです。
結論:快適さの裏にある“支配の構造”を見抜け
GAFAの台頭によって、私たちの暮らしは便利になりました。
しかしその裏で、我々の労働・消費・思考・人間関係は、すべてGAFAの設計する“構造”に組み込まれています。
この構造は、国家を超え、制度を超え、宗教をも代替しうる力を持ち始めています。そしてそれは、民主主義に代わる新しい支配の形を静かに提示し続けているのです。
出典元
この要約は、以下のYouTube動画をもとに作成されています。
【UG】21世紀の世界を支配している“GAFA”の正体⧸Big Four tech companies conquers the world