無意識とは何か?苫米地式の定義
「無意識」という言葉を、わたしたちは曖昧なまま使ってしまいがちです。苫米地英人氏は、その「定義の不明確さ」こそが混乱の元だとし、こう明言します。
「気がついている部分が意識、気がついていない部分が無意識。それだけでいい」
たとえば、私たちは誰かの話を聞くときに自然と相手の顔を見ます。しかし「今、私はこの人の顔を見ている」と意識的に考えることはあまりありません。これが無意識です。
また、椅子に座っているときも、自分のお尻の感触はちゃんと感じているはずですが、それを言われるまで意識には上がっていない。つまり無意識の中で処理されているということです。
無意識のすごさ①「やった気がしない」のに成果が出る
苫米地氏は、無意識を「自分の代わりに勝手に問題を解決してくれる装置」と捉えています。しかも、それは「やった感覚がないほど楽」なのです。
たとえば、翌朝提出の宿題があったとしましょう。前夜に「あとで考えよう」と先送りしたら、朝起きたときにふと解決方法が思いついたという経験、ありませんか?
「寝てたらできちゃった。そんな楽な話はないよね」
これは、無意識が寝ている間も問題を処理してくれていた結果です。無意識を上手に使うと、努力のような苦しさを感じずに、成果だけが手元に残るようになるのです。
無意識のすごさ② 並列処理ができる
さらに無意識のすごさは、「複数の問題を同時に処理できる」ことにあります。私たちの体は、意識していなくても心臓を動かし、肺で呼吸をし、バランスを保ってくれています。これはすべて無意識の働きです。
苫米地氏は、自身がテレビ番組に週一で記事を紹介する際、どの話題を取り上げるかを一週間前から無意識に「選ばせている」と言います。
「俺は火曜水曜にニュースを見るけど、実は先週の金曜から無意識は探してる。自然に“これだ”って思うんだよ」
つまり無意識は、表面では何もしていないように見えて、水面下で常に複数の課題に取り組んでくれているのです。
無意識のすごさ③ 超クリエイティブに働く
無意識はただの便利な装置ではありません。とてつもなくクリエイティブでもあるのです。
たとえば、上司に「この仕事やっといて」と命じられた部下がいたとしましょう。部下がそれを「やりたくない」と感じた瞬間、脳は「やらなくて済む理由」を猛烈に創造し始めます。これを**クリエイティブアボイダンス(創造的回避)**と呼びます。
しかしこれは裏を返せば、やりたいこと(want to)に対しても、無意識は同じように超創造的に“どうやれば達成できるか”を発明するということです。
苫米地氏の師であるルー・タイスは、これを次のように表現しました:
「Invent on the way(やりながら発明せよ)」
この無意識の創造性を活かせば、現状の延長では決して見つからない方法論でも、無意識が勝手に「新しい道」を見つけてくれるのです。
現状の外に“ゴール”を設定せよ
ここで苫米地氏のコーチング理論と「無意識」は完全に結びつきます。
無意識を活かす最大の鍵は、「現状の外側」に本気のゴールを設定すること。
なぜなら、達成方法が見えている目標は、すでに意識レベルの延長でしかないからです。
「見えないものをどうやってやるんですか? 脳が勝手にやってくれるんです。だから達成方法はわからなくていい」
“無意識が勝手に道を創る”からこそ、思い切って高く、遠く、今の自分には届かないような目標を掲げることが推奨されるのです。
ゲシュタルトを壊すと無意識が動き出す
苫米地氏は、ゴール設定によって無意識が働き出すプロセスを、**「ゲシュタルトの破壊と再構成」**という形で説明しています。
ゲシュタルトとは、バラバラな情報を統合した認識のまとまり(構造)のこと。今の自分の世界観や価値観も、ひとつのゲシュタルトに過ぎません。
しかし、現状の延長上の目標ではこの構造に変化はありません。けれども、「現状とまったく異なる世界」をゴールとして設定したとき、ゲシュタルトが崩れ、高い目標に向かって再構成が始まるのです。
「思いっきり高いビルを建てようとすると、ゲシュタルトがボロっと壊れて、高い方にスーッと集まろうとする」
この“再構成”を無意識が勝手にやってくれるのです。
無意識を活性化させる“意識状態”とは?
前編で述べたように、無意識は「努力を感じさせない成果製造装置」であり、「並列処理が可能で、しかも超クリエイティブに働く存在」です。
では、どうすればその無意識を最大限に使えるのか? 苫米地氏は、「意識状態の調整」が鍵だと語ります。
「無意識が最も働くのは、脳波がシータ波〜ローアルファ波(3〜10Hz)にあるときです」
この状態は、瞑想中や入眠直前に近い状態。通常の活動時の脳波(ベータ波)よりもはるかに低く、深くリラックスしながらも覚醒しているという特殊な意識状態です。
この状態に自分を誘導できれば、創造的なひらめきや問題解決能力が自然と活性化されるのです。
苫米地氏自身の「脳波マネジメント法」
苫米地氏自身は、研究者時代からこの状態を意識的に活用してきたと述べています。
当時、ATR(国際電気通信基礎技術研究所)に所属していた氏は、給料を受け取っていない立場だったため、時間の使い方に自由がありました。その立場を活かして、京都や奈良の寺社仏閣、温泉などに出かけては、意識的に脳波をアルファ~シータ波に落とす活動をしていたといいます。
「俺は今からクリエイティブになる。ATRに歴史を残す論文を書く。だから今から温泉行ってくる」
これは単なるサボりではなく、「脳を創造的に働かせるための前提条件を整える行為」だったのです。驚くべきは、彼の論文が実際に世界的な評価を受けているという事実です。
音源によって誰でも脳波を変えられる
とはいえ、温泉や寺に頻繁に通える人は多くありません。そこで苫米地氏が開発したのが「音源(機能音声)」です。
この音源は、聞いているだけで脳波をシータ波~ローアルファ波の領域に誘導するよう設計されています。苫米地氏によれば、プロの瞑想指導者でなければ到達しにくいような意識状態を、自然に・安全に・毎日作り出せるのが音源の最大の利点です。
「国家プロジェクトレベルの研究成果を、誰でも体験できるようにした。それが音源なんです」
無意識は“整合性”を求めて動く
無意識は、単に「解決する」だけではありません。より整合的な世界へ向かって、自動的に情報を再構成しようとする性質があります。
物理世界では、秩序は崩れていく(エントロピーが増大する)のが自然の摂理ですが、無意識はその逆。バラバラだった情報を整えて“意味ある形”を作り出す力を持っているのです。
「人間の無意識は、物理世界と逆方向に働く。より整合的に、より高く積み上げようとする」
この原理があるからこそ、意識していない時でも創造的な解決が生まれるのです。
ゴール設定が“建設計画”になる
この無意識の整合性志向は、ゴール設定によって初めて稼働します。苫米地氏は、ゴールを「情報空間に建てる超高層ビル」に喩えます。
高いビルを建てるという明確なイメージがあるからこそ、バラバラだった認知(ゲシュタルト)がそこへ向かって再構成されるのです。しかも、それはお腹が減ることもなく、疲れることもなく、無意識の力で勝手に進んでいきます。
「超高層ビルを建てようとすれば、無意識は勝手に構造を組み直してくれる」
意識状態 × ゴール設定 = 最強の無意識活用法
ここまでをまとめると、無意識を最大限に活用するために必要なのは以下の2点です。
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低周波脳波状態(シータ〜ローアルファ)を作ること
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現状の外側に本気のゴールを設定すること
前者は苫米地氏の音源や瞑想、自然体験によって達成され、後者はコーチングによって支援されます。両方が揃うことで、「努力感ゼロ」で人生が変わる状態が実現されるのです。
無意識を支配すれば、人生の全領域が変わる
苫米地氏は、無意識の並列処理能力に注目し、「人生のあらゆる側面に同時にゴールを設定すべきだ」と語ります。これは「バランスホイール」というコーチングの技法に基づいています。
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職業
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家族・パートナー
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健康
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趣味
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教養・学習
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地域貢献
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財務・資産形成
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社会的活動
これら8〜10領域すべてに、現状の外側のゴールを設定することが、理想的な人生設計であると苫米地氏は説いています。そして、それらすべてを支えるのが、超並列的かつ超創造的な無意識なのです。
終わりに──無意識を味方にする者が、最も遠くへ行く
「努力してる感じはないけど、成果は出る」
そんな都合のいい話が本当にあるのか?苫米地英人氏の答えは明快です。
「あります。それは、あなたの無意識が、正しく設計されていれば、必ず起きます」
苫米地式のコーチングは、「意志の力」ではなく「無意識のデザイン」によって人生を変える手法です。現状の延長ではなく、誰かに強制された目標でもなく、自分の“want to”から始まるゴールを、正しい意識状態で維持する。
そのとき、脳は勝手に道を作り、気づいたときにはもう目的地に近づいているのです。
「ゴールは、見えないままでもいい。脳が勝手に見つけてくれる」
それが、苫米地英人氏が伝える“無意識の使い方”なのです。
出典:YouTube「苫米地メソッド『無意識の使い方』苫米地英人」
https://youtu.be/2xR2Xwn5--M