✔ 「貯金は美徳」は誰が作った価値観?
✔ 戦争と郵便貯金、そして国策ローンの裏側
✔ 借金=悪は本当か?ホリエモンが語るレバレッジの力
はじめに:「貯金するのは当たり前」はいつから始まったのか?
日本人の多くは「貯金は美徳」「貯金は安全」と考えています。ですが、その価値観は果たして普遍的なものなのでしょうか。今回のホリエモンチャンネルでは、堀江貴文氏が「貯金するのはバカ?」という挑発的なテーマで、貯金文化の歴史的な背景と経済の仕組みを解説しています。
このブログ記事では、その内容を構造的に整理しつつ、堀江氏の主張の背後にある経済的・制度的ロジックを読み解いていきます。
1. 貯金文化の起源:それは戦争だった
◆ 明治時代の国家財政と「主税」の重要性
堀江氏はまず、貯金という概念がいつ一般化したのかをたどります。その起点はなんと「太平洋戦争」。それ以前の明治時代、日本政府の主要な財源は「主税(酒税などの物品税)」でした。とくに那田や伏見など、酒蔵の集まる地域から徴収するのが容易だったこともあり、軍事的な圧力で税収を確保していました。堀江氏はここで、「国は合法的なヤクザ」と形容しています。
◆ 外債で戦費を調達していた時代
日清・日露戦争の頃は、戦費を外債(外国からの借金)によって調達することができました。イギリスなどがロシアの脅威を共有していたため、日本に資金を貸してくれたのです。
◆ 太平洋戦争と郵便貯金の誕生
しかし、太平洋戦争の頃には事情が違いました。日本はアメリカやイギリスと敵対しており、外債に頼ることができなかった。そこで国内で資金を集める必要が生じ、政府は国民に対して「貯金は良いこと」というプロパガンダを展開。ここで登場するのが郵便貯金です。
戦時中の「総力戦体制」において、国民の資金を国家に吸い上げる仕組みとして郵便貯金が奨励されたのです。これが、現在も根強く残る「貯金は善」という価値観のルーツです。
2. 貯金=国の資金源?銀行のバランスシートを知る
堀江氏はここで、銀行の「バランスシート(貸借対照表)」の話を持ち出します。
◆ 銀行にとって預金は「借金」である
一般的に人々は「銀行に貯金している」と思っていますが、実際には銀行が私たちからお金を借りているという形になります。バランスシート上では、預金は銀行の「負債」として記録されており、私たちは金利わずか0.01%程度で、銀行にお金を貸していることになります。
◆ では銀行は何をしているのか?
銀行はその預金(負債)を元手に、企業や個人に対して融資(資産)を行い、金利で儲けています。つまり、貯金とは超低利で銀行に資金を提供する行為であり、実は非常に「利回りの悪い投資」なのです。
3. ローン文化と所得倍増計画の裏側
◆ 住宅ローンとマイカーローンは「国策」
さらに堀江氏は、貯金だけでなく、住宅ローンやマイカーローンについても言及します。これらは1960年代の「所得倍増計画」に伴う政策の一環でした。
政府は、家や車といった高額商品をローンで買わせることで建設業界や自動車産業を活性化させ、GDPを一気に押し上げるという戦略をとったのです。
庶民にとっては一生ものの買い物でも、政府にとっては経済成長の手段。結果的に、「住宅を持つことが夢」「車を持つことが当たり前」といった価値観が浸透しました。
◆ 「ローン=悪」ではなかった時代
こうした背景を知らずに「借金は悪」「ローンは危険」と考えるのは、国の思惑に知らず知らずのうちに取り込まれている証拠だと堀江氏は指摘します。
4. 借金は悪か?特製令と現代の自己破産制度
◆ 歴史から見る「借金のリセット」
堀江氏はさらに、「借金は悪」という道徳観も歴史的には操作されてきたものであると主張します。たとえば鎌倉時代には「特製令」が出され、武士たちの借金が帳消しにされたことがありました。
そして現代にも、それに類似する制度が存在します。それが「自己破産」「民事再生法」「会社更生法」などです。
◆ 借金をリセットできる現代社会
現代では、返済不能になった場合でも、一定の条件を満たせば借金をチャラにできる制度があります。もちろんクレジットカードが作れなくなるなどの制限はありますが、人権が失われるわけではなく、再スタートは可能です。
5. 自己資金と借金、どちらが合理的か?──レバレッジの力
◆ 100万円を5年貯めるか、今すぐ1000万借りるか
堀江氏が繰り返し強調するのは、「貯金よりも借金の方が合理的である」という点です。
たとえば、何かビジネスを始めたいと考えたとき、「まずは5年間で1000万円を貯めてから始めよう」と考える人は多いかもしれません。しかし、堀江氏はそれを真っ向から否定します。
「人生は有限なんですから」
という言葉に集約されるように、若く体力も気力もあるうちに挑戦できる環境があるなら、時間を待つより、資金を借りて今すぐ始めた方がいいというのです。
◆ レバレッジ(てこの原理)という発想
堀江氏はここで「レバレッジ(leverage)」という経済用語を紹介します。これは、少ない資本で大きな成果を得るための手法で、ビジネスの世界ではごく基本的な考え方です。
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自己資金:100万円
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融資:900万円(合計1000万円で事業スタート)
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初年度利益:500万円
この場合、元手に対して500%のリターンになります。ところが、銀行に100万円を預けても1年後に101万円にも届かないのが現実です。
つまり、堀江氏の主張はこうです:
「銀行に貸す(貯金する)より、自分の将来に投資しろ」
6. 借金は恐れるものではない:制度としてのセーフティネット
◆ 現代の「特製令」は誰にでもある
前半でも述べたように、日本には自己破産や民事再生といった、借金をチャラにするための法制度が整っています。
一昔前は、借金によって一家離散や人生破滅というイメージが強くありました。しかし現代においては、借金は経済活動における前向きな手段であり、再起のチャンスも制度的に用意されています。
◆ ペナルティはあっても致命傷ではない
自己破産した場合、一定期間クレジットカードが作れない、ローンが組めないといった制限は生じます。しかし、日常生活に致命的な打撃を与えるほどではなく、再スタートは可能です。
むしろ、借金を「絶対に返さなければならない」と考える道徳観こそが、経済成長を妨げていると堀江氏は警鐘を鳴らします。
7. 価値観の再構築:「貯金=夢の準備」という幻想
◆ 「夢のために貯金」は本当に合理的か?
多くの人が「将来の夢のためにお金を貯めよう」と考えます。例えば、海外留学、起業、マイホームなどです。しかし、堀江氏はこの発想に疑問を投げかけます。
「貯金して5年後に夢を叶えるより、今借金して叶えた方が、5年分得でしょ?」
この「時間の価値」に対する感覚が、従来の価値観とは大きく異なる点です。特に20代・30代のような活動的な年代では、数年の差がキャリアや人生に与える影響は計り知れません。
◆ 夢のコストは「現金」ではなく「時間」
人生は有限であり、若いうちにしかできない経験もあります。将来に備えることも重要ですが、「今の自分」に投資する視点が欠けていては、人生の主導権を国や制度に明け渡しているようなものです。
8. 道徳の正体:「貯金しろ」「借金するな」は誰が言い出したのか?
堀江氏が繰り返し示すのは、「常識」は政策によって作られているという事実です。
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「貯金は美徳」→ 戦費調達のための戦時キャンペーン
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「家を持て」→ 建築産業の活性化のための政府誘導
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「借金は悪」→ 国が庶民に消費を促さずに安定収入を得るための道徳づくり
つまり、我々が「当然」と思っている価値観は、すべて社会的・政治的意図を背景に作られた人工的なものなのです。
結論:貯金はバカなのか?
ここまでの堀江氏の主張を整理すると、次のような構造になります:
| テーマ | 伝統的価値観 | 堀江氏の視点 |
|---|---|---|
| 貯金 | 将来の安心 | 国の資金調達手段 |
| 借金 | 恐ろしいもの | 投資と挑戦のための手段 |
| 住宅ローン | 一生に一度の買い物 | 国策に踊らされているだけ |
| 道徳観 | 倫理的な基準 | 政策的に作られたもの |
◆ 経済は「常識」に左右されない
ホリエモンが提示する世界観では、本当の経済的合理性とは、自分の人生を能動的に設計することにあります。銀行や政府の都合に合わせた価値観に従うのではなく、自分自身の視点で「何が合理的か」「何が自分のリスクとリターンに見合っているのか」を考えることが求められます。
おわりに:制度と道徳の分離を意識する
この動画は、単なる「貯金するか否か」の問題にとどまりません。堀江氏が伝えたかったのは、「制度的な背景を知らないまま、道徳的に正しいとされる行為を無批判に受け入れてはいけない」というメッセージです。
「貯金は良いことだ」と信じている人ほど、一度立ち止まってその背景を調べてみると、新たな視点が開けるかもしれません。